日本では現在、少子高齢化による労働力不足の解決策として、女性活躍推進が重要なテーマとされています。しかし、その取り組みに対して「うんざり」と感じる声も少なくありません。2026年4月からは、女性の管理職比率や男女の賃金差異の公表が義務化される予定です。
国もどんどん女性活躍を推進していきたい考えですね。私も福岡県の事業で女性活躍推進の専門家として活動していますがまだまだ課題も多く感じています。
なぜ、こうした取り組みが一部で反発を招くのでしょうか。本記事では、その背景や問題点をわかりやすく解説し、今後の改善策を考察します。
女性活躍推進の現状
そもそも、女性活躍推進法とはどんなものなのでしょうか?
この法律は、女性が職場で活躍できる環境を整えることを目的として、2016年に施行されました。企業には、女性の採用や昇進の促進、育児支援などに関する行動計画を策定し、その進捗を公表する義務があります。さらに、従業員数101人以上の企業では、2026年4月から女性管理職比率や男女賃金差の公表が義務付けられる予定です。これにより、透明性を高め、企業の取り組みを社会全体で評価する仕組みを構築することが狙いとされています。
女性管理職の割合と課題
政府が女性活躍を推進する背景には、単なる人手不足の解消だけではなく、他国と比較して低い女性管理職の割合や男女の賃金格差の是正という課題があります。
日本の女性管理職の割合は12.9%(2024年時点)と、アメリカ(41.0%)やドイツ(28.9%)と比較して大幅に低い水準です。この背景には、男性中心の企業文化や長時間労働の習慣が根強く残っていることが挙げられます。
一方で、ポーラ化成工業のように女性管理職比率が47.8%に達している成功事例もあります。こうした企業では、職場全体の意識改革や働き方の柔軟性を重視した施策が実施されています。
女性活躍推進に「うんざり」する原因
女性活躍推進が一部の人々から「うんざり」と感じられる理由には、形式的な対応や逆差別への懸念が挙げられます。なぜこのような反応が生まれるのか、その背景を探ってみましょう。
取り組みの表面的な印象
多くの企業が女性活躍推進法に基づき行動計画を策定していますが、その内容が現場に浸透していないとの指摘が多くあります。例えば、「研修が表面的で実際の職場環境を改善していない」「目標達成が見えにくい」といった不満が寄せられています。さらに、女性社員の声を十分に反映していない計画が多く、現実とのギャップを感じる社員も少なくありません。
「逆差別」の懸念
女性優遇措置が、男性従業員の間で「逆差別」として捉えられるケースがあります。特に「昇進が性別優遇によるもので実力ではない」と感じる声が強い職場では、こうした措置に対する反発が顕著です。この背景には、評価基準が不透明である場合や、優遇措置の意図が十分に共有されていないことが挙げられます。例えば、「なぜ特定の性別に限定された支援が必要なのか」といった疑問が解消されない場合、従業員全体の納得感が得られず、施策が不公平に映る可能性があります。
女性活躍推進に対する具体的な取り組み事例
女性活躍推進にはさまざまな課題がありますが、成功している企業は具体的にどのような取り組みを行っているのでしょうか?以下にいくつかの事例を紹介します。
ポーラ化成工業株式会社
ポーラ化成工業株式会社では、女性が活躍できる職場環境を整えるため、組織全体での取り組みを強化しています。2023年には女性管理職比率が47.8%に達し、業界内でも注目される成果を上げています。この成功の背景には、女性がリーダーシップを発揮しやすい環境づくりを重視し、職場の多様性を高める努力がありました。結果として、企業全体のパフォーマンス向上にも寄与しています。
キユーピー株式会社
キユーピー株式会社では、育児休業からのスムーズな復帰を支援するために、従業員に制度に関する知識を提供しています。育児と仕事の両立を可能にする環境整備を目指しており、特に育児休業を取得した従業員が安心して職場に戻れるサポート体制を構築しています。これにより、育児中の従業員のキャリア継続を支援しています。
エクシオグループ株式会社
エクシオグループ株式会社では、柔軟な働き方を導入し、仕事と介護の両立を支援しています。特に介護を必要とする家族を持つ従業員にとって、この取り組みは重要なサポートとなっています。従業員のライフスタイルに配慮した職場環境を整えることで、働きやすい環境を実現し、生産性向上にも貢献しています。
課題解決に向けた方向性
これまでに女性活躍推進の課題や成功事例についてお伝えしてきました。では、具体的な施策や成功のためのポイントについて、どのように取り組んでいけばよいのでしょうか?ここでは、企業が直面する課題を乗り越え、信頼を築くための具体的な方法について考えていきます。
信頼を得る施策の設計
企業は、従業員全体が納得感を持てる施策を設計する必要があります。例えば、管理職登用の基準を透明化し、性別に関係なく公平な評価を実現することが重要です。さらに、実績に基づいた評価システムを導入することで、性別による偏見を排除し、従業員全体の信頼を得ることが可能です。また、定期的に従業員からのフィードバックを収集し、施策の改善に反映させることも重要なポイントとなります。
成果が見える仕組み作り
短期的な数字の達成だけでなく、従業員全体のエンゲージメントを高めるような長期的な取り組みが必要です。例えば、育成プログラムやメンター制度の導入は、女性が自信を持ってキャリアを築くための重要な土台となります。また、職場内でのネットワーク構築を支援し、相互に学び合える環境を作ることも有効です。さらに、企業はリーダーシップスキルを高めるための研修やキャリア支援イベントを定期的に開催し、女性社員が自分の将来像を具体的に描けるような支援を行う必要があります。このような取り組みを通じて、女性だけでなく全ての従業員のモチベーションと成果を引き出す職場環境を実現できます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
女性活躍推進が「うんざり」と感じられる原因は、形式的な施策や「逆差別」に対する懸念にあります。多くの企業では、表面的な対応が優先され、現場での効果が実感しにくいことが従業員の不満を引き起こしています。しかし、企業が本質的な課題に向き合い、従業員一人ひとりの声を丁寧に拾い上げ、全員が納得できる仕組みを構築することで、この課題を克服する道筋を描くことができます。成功の鍵は、施策の透明性と公平性、そして従業員全体の信頼を築く姿勢にあります。
女性活躍推進は、ただ制度を設けるだけでなく、現場での実効性を高める具体的な取り組みが求められています。成功事例を参考にし、従業員全体がその価値を実感できる環境を整えることで、企業全体の活力と社会への貢献を同時に実現する道筋を描いていきましょう!