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中小企業も無視できない!春闘2025の賃上げ動向と人事・経営者が取るべき対策とは?

2025年春闘では、中小企業でも賃上げの動きが顕著になってきました。かつては「賃上げは大企業の話」と思われがちでしたが、いまや中小企業もその波に巻き込まれています。

採用コンサルタント:大岩

最近もインフレに危機感を持っている経営者様も多いのではないでしょうか?物価高に対応して手当を支給する会社も多い中、さらに賃上げに向けて中小企業も本腰を入れるタイミングになってきました。

背景には、深刻な人手不足や最低賃金の上昇、そして社会全体で「人への投資」の重要性が高まっているという時代の変化があります。特に採用や定着に悩む企業にとって、賃上げは避けて通れないテーマとなりました。

本記事では、最新データをもとに春闘2025の動向を読み解き、経営者や人事担当者が今取るべき具体的な対応策を解説します。

春闘2025の賃上げ状況:パートも正社員も過去最高水準に

UAゼンセンの発表によると、パートの時給賃上げ額は70.1円と、同団体が発足した2012年以降で最も高い水準となりました。賃上げ率も6.08%と、正社員の5.14%を上回り、10年連続でパートの賃上げ率が正社員を超えたことになります。パート・アルバイトといった非正規雇用の待遇改善が本格化していることを示す象徴的な動きです。

一方で、正社員の賃上げも勢いを増しています。ベースアップ(ベア)は月額1万1394円、ベア率は3.57%、定期昇給を含めた総合的な賃上げ率は5.14%と、物価上昇を上回る形となりました。さらに、約3割の労働組合では、満額回答またはそれ以上の賃上げが実現しています。

新卒初任給の引き上げも顕著です。大卒で24万958円(前年比1万2628円増)、高卒で20万1929円(同1万1123円増)と、大卒・高卒ともに大幅な改善が見られました。

これらの数値は、企業が労働力確保のためにより積極的な姿勢を示していることを意味しており、今後の採用活動や人件費戦略にも大きな影響を与えることが予想されます。 

このように、労働条件の底上げが当たり前になりつつある現状は、すべての企業が無視できない流れです。

中小企業のリアル:人手不足が賃上げを加速させる

日銀の短観によると、雇用人員判断指数(DI)は大企業でマイナス28に対し、中小企業ではマイナス39と、より深刻な人手不足感が明らかになっています。これは、人材の確保がより困難であることを如実に示すデータです。

中小企業では、求人を出しても応募が集まらず、ようやく採用できた人材も短期間で離職してしまうという課題が深刻化しています。その要因の一つが「他社との待遇差」です。大企業だけでなく、他の中小企業でも賃上げが進んでいる中、自社が後れを取れば、自然と人は流れていってしまいます。

例えば、東北地方の製造業の経営者は「賃上げしないと従業員が流出しかねない」と語っており、実際にこの2年間で2割近く賃金を上げた企業もあるとのことです。このように、人手不足への対応として“防衛的な賃上げ”を行う企業が増えているのが現実です。

今後、定着率や採用力を高めるには、給与水準の見直しとともに、社内の魅力づくりにも取り組む必要があります。

賃上げできない企業が抱えるリスクとは?

賃上げに踏み切れない企業は、採用にも定着にも苦戦し、経営の継続自体が危うくなるケースも増えています。

帝国データバンクの調査によると、2024年には従業員の退職や採用難、人件費高騰などを理由に法的整理(倒産)に至った企業が342件に上り、前年比で3割増、2014年と比較すると約5倍という深刻な数字です。

特に中小企業では、最低賃金の上昇が重くのしかかります。売上は横ばい、原材料費も高騰している中で、賃上げに対応できないまま人材が流出すれば、業務そのものが回らなくなるという危機に直面します。

さらに、企業の将来性を見極める若手求職者にとって、待遇改善に取り組まない企業は魅力的に映りません。結果として、採用における競争力も低下し、負のスパイラルに陥る危険性があるのです。

つまり、賃上げを“先送り”することは、一時的なコスト削減にはなっても、長期的には企業の存続を脅かすリスクをはらんでいると言えるでしょう。

私が現場で感じる“賃金設定のリアル”

採用コンサルタントとして日々さまざまな企業の採用活動を支援する中で、最近強く感じるのは「賃金設定の二極化」です。

一方では、今もなお最低賃金水準に近い給与で採用を行っている企業があります。昔からのやり方を変えられず、「この地域ではこのくらいが相場だろう」という前提で、給与設定を据え置いているパターンです。

一方で、相場よりも高い給与を提示して採用競争を勝ち抜こうとする企業も確実に増えています。特に若い経営者ほど、この傾向が強い印象です。価格交渉力を持ち、取引先とも積極的に話し合いながら、人件費を原価にしっかり反映させようという意識があります。

私はかつて「給与を上げるより、仕事の魅力や会社の文化で惹きつけるべき」という立場でした。しかし、最近の人手不足や賃金相場の上昇を目の当たりにする中で、「給与水準を見直さなければ、そもそもスタートラインにも立てない」時代に入ったと実感しています。

特に年配の経営者ほど、過去の慣習や長年の取引関係を崩したくないという想いから、価格転嫁の交渉を避ける傾向があります。その結果、賃上げができず、人が集まらないという悪循環に陥ってしまうケースを数多く見てきました。

賃金を上げることがすべてではありませんが、「上げなければ選ばれない」という時代の空気感は、確実に広がっていると私は感じています。

賃上げのカギは価格転嫁と業務効率化

中小企業庁の調査によれば、コスト増加分の7〜9割を価格転嫁できた企業のうち81.3%が賃上げを実施。一方で、価格転嫁ができなかった企業では賃上げ実施率は68.9%にとどまりました。

このデータからわかるのは、価格転嫁の成否が賃上げの可否に直結しているということです。つまり、仕入れや人件費などのコスト増を自社だけで抱え込まず、取引先や顧客に適切に転嫁できる企業ほど、人材投資に回せる余裕を持てているという現実です。

政府もこの課題に対応するため、下請法の改正によって元請企業との価格協議を義務化する動きを進めています。また、業務の効率化や自動化を進めるための補助金や設備投資支援も強化されており、省力化投資によるコスト削減と賃上げ原資の確保が同時に求められています。

たとえば、業務プロセスの見直しやITツールの活用により、生産性が上がれば、少ない人員でも高い付加価値を出すことが可能になります。こうした体質改善ができる企業ほど、価格競争に巻き込まれず、適正な利益を確保しつつ、従業員への還元も実現できるのです。

つまり、賃上げを可能にするためには、価格交渉力の強化に加え、自社の生産性を高めるための業務改善が不可欠であり、この2軸の取り組みこそが、中長期的な人材確保と企業成長の鍵を握っています。

経営者・人事が今できる対策まとめ

2025年春闘の流れを踏まえて、今後の採用・定着強化のために企業が取るべき具体的対策は以下のとおりです。

経営者や人事担当者は、給与の引き上げそのものに目を向けるだけでなく、それを持続可能にする経営の仕組みづくりにも注力する必要があります。短期的な賃上げにとどまらず、社員の満足度向上と業績への好循環を生むためには、複合的な視点から施策を検討すべきです。

  • 顧客との価格交渉力を高め、コスト増を転嫁できる体制を整える
  • 採用力を高めるため、福利厚生や職場環境を見直す
  • 新卒初任給の見直し(競合他社との比較も重要)
  • パート・契約社員への待遇改善で戦力化を図る
  • 業績に連動した評価制度を整備し、従業員のモチベーションを維持

特に、賃上げは今や「避ける選択肢」ではなく、「やらないと生き残れない」ものへと変わりつつあります。

まとめ:賃上げは“攻め”の経営戦略に変わりつつある

春闘2025のデータは、賃上げが“防衛”ではなく“攻め”の戦略として企業に求められていることを示しています。

これまでは「とりあえず現状維持で乗り切る」という姿勢でも何とか経営できたかもしれませんが、今後は賃上げに取り組めない企業が人材確保の競争から脱落するリスクが一層高まっていきます。

つまり、賃上げは単なるコストではなく、優秀な人材を惹きつけ、定着させ、企業の競争力を高めるための“先行投資”です。中小企業にとっても、価格転嫁の工夫や業務効率化、省力化投資などを組み合わせながら、持続可能な賃上げモデルを構築していくことが重要になります。

“賃上げできる企業体質”を目指すことこそが、これからの採用・経営戦略の要となるでしょう。

よくある質問(Q&A)

Q. 賃上げに踏み切るか迷っていますが、最低賃金との差が開いていなければ問題ないでしょうか?

A. 現在の採用市場では「最低賃金+α」の水準では人が集まらないケースが増えています。競合他社との比較や、職種ごとの相場調査を行い、地域内での自社の立ち位置を把握することが重要です。

Q. 給与を上げずに人材を確保する方法はありますか?

A. 給与だけでなく、働きやすい環境や成長機会、職場の雰囲気といった“非金銭的な魅力”も重要です。ただし、最低限の給与水準が確保されていることが前提です。給与水準が他社と比較して明らかに低い場合、それだけで候補者から選ばれにくくなります。

Q. 価格転嫁が難しい取引先とはどう向き合うべきですか?

A. 長年の関係性や力関係により難しい場合もありますが、まずは原材料費や人件費の上昇について具体的なデータをもとに丁寧に説明することが第一歩です。また、業界団体や商工会議所の支援を活用するのも一つの方法です。

Q. 若手人材の確保において、給与以外に重要視されるポイントは?

A. 柔軟な働き方(シフト・休暇制度)、スキルアップの支援、職場の人間関係、将来性などが挙げられます。新卒採用では初任給とともに「入社後にどう成長できるか」が見られています。

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ABOUT ME
採用人事コンサルタント 大岩貴文
大手メディアの求人広告営業を10年経験した後、経営コンサルタント唯一の国家資格である中小企業診断士の資格を取得。採用人事に強いコンサルタントとして、採用支援、研修講師、経営改善などを中心に活動中。経済産業省認定経営革新等支援機関、福岡県商工会連合会エキスパートバンク登録専門家。

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