初めて面接官を任されると、「何を聞けばよいのか」「どこを見て判断すればよいのか」と迷うものです。社長や現場責任者が面接を兼務する中小企業では、担当者ごとに質問や合否判断が変わることもあります。

面接官に必要なのは、応募者を短時間で見抜く話術ではありません。職務に必要な基準を決め、同じ観点で事実を確認し、応募者が自社を判断できる情報も誠実に伝えることです。

この記事では、面接官の心得、事前準備、当日の流れ、評価方法、聞いてはいけない質問を整理します。次回の面接前に使えるチェックリストとしてもご活用ください。

Contents
  1. 面接官の心得は「公正な見極め」と「相互理解」の両立
  2. 面接官が押さえたい7つの心得
  3. 面接前に準備する5つのこと
  4. 面接当日の基本的な流れ
  5. 面接評価は「基準・質問・記録」をセットにする
  6. 面接官が聞いてはいけない質問
  7. 中小企業の採用支援で実際に重視していること
  8. 面接官が陥りやすい5つの失敗
  9. 面接官向けチェックリスト
  10. よくある質問
  11. まとめ|面接官の心得は、当日ではなく準備から始まる
  12. 採用基準を考える前に、募集する仕事を整理したい方へ
  13. 面接の設計や面接官トレーニングを相談したい方へ

面接官の心得は「公正な見極め」と「相互理解」の両立

面接官の役割は、応募者を一方的に選ぶことだけではありません。仕事に必要な適性・能力を公正に確認すると同時に、応募者が会社や仕事を判断できる材料を提供する役割もあります。

厚生労働省は、公正な採用選考の基本として、応募者の基本的人権を尊重し、本人の適性・能力に基づいて選考することを示しています。面接官の経験や勘だけで合否を決めるのではなく、職務に結びついた基準と質問を用意することが出発点です。

面接を次の二つに分けると、役割が整理しやすくなります。

  • 見極め:仕事に必要な経験、行動、考え方を事実に基づいて確認する
  • 相互理解:仕事内容、期待する役割、働く環境を伝え、応募者の疑問に答える

どちらか一方だけでは不十分です。見極めだけに偏ると尋問のようになり、魅力を伝えることだけに偏ると入社後のミスマッチを防げません。

面接官が押さえたい7つの心得

1. 会う前に採用基準を決める

面接官が最初に行うべきことは、質問集を探すことではありません。その職務で何を任せるのか、入社時に何が必要かを整理し、採用基準を決めることです。

「明るい人」「感じがよい人」といった抽象的な基準では、評価が面接官の好みに左右されます。「安全手順を守って作業できる」「分からないことを確認できる」のように、仕事上の行動へ置き換えましょう。

採用基準の作り方は、採用基準を曖昧にしないための作り方で詳しく解説しています。

2. 質問の意図を明確にする

面接の質問は、「何を確認するために聞くのか」を先に決めます。同じ質問でも、評価する観点が曖昧なら、回答の受け取り方が面接官ごとに変わるからです。

たとえば過去の失敗を聞くなら、失敗の大きさではなく、その後に何を考え、どう行動し、次へ生かしたかを確認します。質問と評価項目を一対一で結びつけると、興味本位の深掘りも防ぎやすくなります。

目的別の質問例は、面接で本音と行動を確認する質問例をご覧ください。

3. 応募者ごとに基本質問を変えすぎない

応募者の経歴に合わせた追加質問は必要です。ただし、合否に関わる基本質問まで毎回変えると、同じ基準で比較できません。

全員に確認する基本質問と、回答を深掘りする追加質問を分けましょう。面接の質を揃えながら、一人ひとりの経験も丁寧に確認できます。

4. 話すより、応募者の経験を具体的に聞く

面接官が長く話し続けると、応募者を判断する材料が集まりません。質問した後は、結論だけでなく「どのような状況で、本人が何を考え、どう行動したか」を聞きます。

既存記事で紹介していたとおり、大岩は求人広告の営業時代、多くの企業で従業員アンケートを行っていました。入社のきっかけを尋ねると、採用に力を入れている企業では「面接で自分の話をよく聞いてくれた」という回答が見られました。

聞くことは、応募者への印象をよくするためだけではありません。準備された短い回答の奥にある経験と判断を確認するためにも重要です。

5. 仕事の魅力と厳しさを具体的に伝える

応募者から選ばれるために、自社で働く価値を伝えることは必要です。ただし、良い面だけを並べると、入社後のギャップにつながります。

任せる仕事、期待する役割、身につく経験、職場の支援体制に加え、仕事の難しさや条件も説明しましょう。「アットホーム」「成長できる」といった抽象語ではなく、実際の仕事や社員の行動で伝えます。

面接で伝える内容は、求人票や採用サイトと揃える必要があります。採用ブランディングの6つの進め方も参考にしてください。

6. 印象ではなく、回答の事実を記録する

「なんとなく合いそう」「受け答えがしっかりしていた」だけでは、採否の理由を説明できません。面接中は、応募者が話した経験や行動を記録し、面接終了後に採用基準と照合します。

複数の面接官で評価する場合は、話し合う前に各自で記録と評価を行う方がよいでしょう。最初に発言した人の意見へ、全員が引っ張られるのを防ぎやすくなります。

7. 応募者の人権とプライバシーを尊重する

面接の質問は、職務遂行に必要な適性・能力を確認する範囲に限ります。本人に責任のない家族、住宅状況、生活環境や、宗教、支持政党などの思想・信条に関わる事項を把握することは、就職差別につながるおそれがあります。

悪意がなくても、アイスブレイクや会話の流れで尋ねてしまうことがあります。面接官全員が厚生労働省「公正な採用選考の基本」を確認し、質問を事前に点検してください。

面接前に準備する5つのこと

良い面接は、当日の対応よりも事前準備で決まります。特に、社長、採用担当者、現場責任者が同席する場合は、次の5点を共有しておきましょう。

準備すること 面接前に決める内容
1. 採用する目的と任せる仕事 欠員補充、事業拡大、技術承継などの目的と、入社後の役割
2. 採用基準 入社時に必須の条件、教育できること、評価する行動
3. 質問と評価項目 全員に聞く基本質問、追加質問、回答の評価観点
4. 面接官の役割分担 進行役、質問者、仕事内容の説明者、記録者
5. 応募者へ伝える内容 仕事の魅力と厳しさ、労働条件、選考後の流れ

面接直前に履歴書を初めて読む状態では、確認事項が場当たり的になります。応募書類は事前に読み、既に書かれている事実を何度も聞くのではなく、仕事との関係で確認したい点を整理します。

面接当日の基本的な流れ

面接の順番を標準化すると、聞き漏らしと担当者ごとの差を減らせます。60分面接でも30分面接でも、基本の流れは同じです。

1. あいさつと面接官の自己紹介

面接官から所属と役割を伝え、応募への感謝を簡潔に述べます。応募者が緊張している場合は、答えやすく職務と無関係な個人情報へ踏み込まない話題から始めます。

アイスブレイクの目的と進め方は、面接官向けアイスブレイクのテクニックで詳しく紹介しています。

2. 面接の目的と進め方を説明する

所要時間、質問、会社説明、応募者からの質問という流れを最初に伝えます。見通しが分かると、応募者も落ち着いて話しやすくなります。

3. 経験と行動を確認する

志望理由や職歴だけでなく、過去の具体的な行動を聞きます。回答が抽象的な場合は、「そのとき、あなた自身は何をしましたか」「どのように工夫しましたか」と事実へ戻しましょう。

4. 会社と仕事について説明する

応募者の関心と経験を踏まえ、仕事内容、期待する役割、職場、教育、仕事の難しさを説明します。全員へ共通して伝える情報を決めたうえで、相手が判断しやすい情報を補います。

5. 応募者からの質問を受ける

質問の時間を残し、分からないことは曖昧に答えず、確認後に伝えると説明します。応募者から質問がない場合も、理解不足や関心不足だとすぐに決めつける必要はありません。

6. 今後の流れを案内する

選考結果の連絡方法、目安となる時期、次の選考がある場合の内容を伝えます。約束した連絡時期は社内で共有し、遅れる場合は放置せず連絡します。

面接評価は「基準・質問・記録」をセットにする

面接評価のばらつきを抑えるには、採用基準、確認する質問、記録欄を一つの評価表へまとめます。項目数を増やしすぎず、その職務で特に重要な3〜5項目へ絞ると運用しやすくなります。

たとえば、複数人で進める現場職なら、次のように設計できます。

評価項目 確認したい事実・行動 質問の方向性 記録すること
安全への向き合い方 手順を守った経験、危険に気づいた対応 ミスや危険を防ぐために工夫した経験 状況、本人の行動、結果
協働 周囲と役割を分けて進めた経験 意見が異なる相手と仕事を進めた経験 本人の役割、対話、工夫
学習姿勢 未経験の仕事を覚えた方法 分からないことをどう確認したか 学び方、助けの求め方
継続条件 勤務時間や仕事内容への理解 提示した条件で働くうえでの確認事項 会社側が確認・回答すべき点

これはあくまで例です。営業職、事務職、管理職では必要な行動が異なるため、仕事内容に合わせて項目を変えてください。

評価は「印象がよいから5点」ではなく、回答から確認できた事実を根拠にします。複数の面接官で意見が割れたときも、好き嫌いではなく、どの回答をどう評価したかを話し合えます。

面接官が聞いてはいけない質問

面接では、本人の適性・能力と関係のない情報を尋ねないことが原則です。厚生労働省は、就職差別につながるおそれがある事項として、次のような項目を示しています。

  • 本籍・出生地
  • 家族の職業、健康、学歴、収入など
  • 住宅状況、生活環境、家庭環境
  • 宗教、支持政党、人生観、思想、尊敬する人物
  • 労働組合や社会運動に関すること

また、質問以外でも、身元調査、本人の適性・能力に関係のない事項を含む応募書類の使用、合理的・客観的な必要性が認められない採用選考時の健康診断は避ける必要があります。

採用基準に使わないつもりでも、これらを把握すること自体が就職差別につながるおそれがあります。

上記は概要です。面接前には、厚生労働省「採用選考時に配慮すべき事項」で対象範囲を確認してください。

特に注意したいのは、場を和らげようとして家族や住まいの話へ入ることです。確認したいのが通勤可能性であれば、自宅の詳しい場所や家族の支援を聞くのではなく、提示した就業時間・勤務地で勤務できるかを確認します。

高卒採用では学校との関係や統一応募書類など、一般の中途採用と異なる実務があります。具体的な会話例は、高卒採用の面接で注意すべきNG質問をご確認ください。

中小企業の採用支援で実際に重視していること

当社の支援でも、面接の改善は質問テクニックから始めません。先に採用目的と人物像を整理し、質問、評価、伝える内容へつなげます。

タダノエステック|採用ターゲットと社内の判断基準を揃える

株式会社タダノエステックでは、応募の集まりにくさや選考途中の辞退に加え、採用基準や方針が社内で揃っていないことが課題でした。

そこで、採用目的、求める人物像、求職者が共感するポイントを整理し、「誰に、何を、どう伝えるか」を半年間かけて構築しました。プロジェクト終了後に採用を再開した2025年は、87名の応募から12名を採用し、20〜30代の若手を中心に採用できました。

この事例のポイントは、面接官個人の見極め方を磨く前に、会社として採用する人と伝える内容を揃えたことです。

株式会社タダノエステックの採用支援事例を見る

佐賀梱包運輸|面接前に質問と注意事項を共有する

2026年9月、佐賀梱包運輸株式会社の高校新卒採用支援では、実際の面接を前に、応募者の適性・能力と関係のない事項を聞かないことを確認しました。

家族、住環境、思想・信条へ話題を広げず、志望理由、学校で取り組んだこと、本人の行動や仕事との適性を確認する方向を共有しています。大切なのは、一人の採用担当者だけが理解するのではなく、面接へ参加する全員で質問と進め方を揃えることです。

佐賀梱包運輸株式会社の採用支援事例を見る

※支援内容と成果は、各社の課題・条件・実施時期によって異なります。同様の採用成果を保証するものではありません。

面接官が陥りやすい5つの失敗

当日に初めて応募書類を読む

質問が経歴の読み上げになり、仕事に必要な行動を確認する時間がなくなります。応募書類は事前に読み、深掘りしたい点を決めておきます。

面接官が話しすぎる

会社説明が長くなると、応募者の経験を確認できません。質問と会社説明の時間をあらかじめ分けてください。

第一印象だけで合否を決める

話しやすさや自分との相性は、職務上の適性と同じではありません。採用基準と回答の事実へ戻って評価します。

入社してほしい一心で、良い面だけを伝える

採用できても、説明と実態が違えば早期離職につながりかねません。魅力と合わせて、仕事の厳しさや期待する役割も伝えます。

面接官によって説明と評価が変わる

採用担当者、社長、現場責任者で言うことが違うと、応募者は不安になります。採用基準、基本質問、会社説明、評価表を面接前に共有しましょう。

面接官向けチェックリスト

面接前

  • □ 採用目的と入社後に任せる仕事を確認した
  • □ 職務に必要な採用基準を3〜5項目に絞った
  • □ 基本質問と評価する観点を結びつけた
  • □ 応募書類を読み、追加で確認する点を整理した
  • □ 面接官の役割分担を決めた
  • □ 仕事内容の魅力と厳しさを説明できる
  • □ 質問が公正採用選考の考え方に沿っているか点検した

面接中

  • □ 面接の流れと所要時間を最初に伝えた
  • □ 応募者の話を遮らず、具体的な行動を確認した
  • □ 職務と関係のない個人情報へ踏み込まなかった
  • □ 会社からの説明と質問時間を確保した
  • □ 回答の事実を記録した

面接後

  • □ 印象ではなく採用基準に沿って各自で評価した
  • □ 評価の根拠となる回答・行動を残した
  • □ 面接官同士の評価差と理由を確認した
  • □ 約束した方法と時期に選考結果を連絡できる状態にした
  • □ 質問、説明、進行で改善すべき点を振り返った

よくある質問

初めて面接官をするとき、最初に何を準備すればよいですか?

最初に準備するのは、質問集ではなく採用基準です。任せる仕事と必要な行動を整理し、各基準を確認する質問と評価欄を用意してください。

面接官は何人がよいですか?

最適な人数は、企業規模や採用する役割によって異なります。複数人で行う場合は、応募者へ過度な圧迫感を与えない配置にし、進行、質問、仕事内容の説明、記録の担当を事前に決めましょう。

面接で応募者をリラックスさせるにはどうすればよいですか?

面接官から自己紹介し、当日の流れと時間を最初に伝えることが基本です。雑談する場合も、家族、住宅、生活環境など適性・能力と関係のない事項へ踏み込まないでください。

応募者の本音を引き出すにはどうすればよいですか?

「本当はどう思っていますか」と迫るのではなく、過去の具体的な状況、本人の行動、判断理由を順番に聞きます。沈黙を急いで埋めず、考える時間を待つことも大切です。

面接評価表には何を入れればよいですか?

職務に必要な3〜5項目、各項目を確認する質問、回答の事実を残す欄を設けます。抽象的な「人柄」だけでなく、仕事上の行動として評価できる項目にしてください。

まとめ|面接官の心得は、当日ではなく準備から始まる

面接官に必要なのは、応募者を短時間で見抜く特別な話術ではありません。採用基準、質問、評価、伝える内容を準備し、職務に必要な事実を公正に確認することです。

同時に、応募者も会社を選んでいます。仕事の魅力だけでなく、難しさや期待する役割まで誠実に伝え、双方が判断できる面接を目指しましょう。

まずは次回の面接前に、この記事のチェックリストを使い、面接へ参加する全員で基準と質問を確認してください。

面接だけでなく、採用目的、人物像、発信、選考、KPIまで一連の方針を整理したい方は、中小企業の採用戦略の立て方もあわせてご覧ください。

採用基準を考える前に、募集する仕事を整理したい方へ

面接の質問と評価基準を作るには、「どの仕事を、どこで、どの雇用形態で、誰に向けて募集するか」が整理されている必要があります。

無料資料「採用を考える前に、必ず整理していること」では、募集する仕事を職種・勤務地・雇用形態・ターゲットに分解し、一覧にできます。当社が実名で公開している支援事例の多くでも、支援の初期段階に行ってきた方法です。

募集の優先順位を整理し、面接で確認すべき人物像を考える前段階としてご活用ください。

※無料資料のダウンロード時にメルマガへ登録されます。資料は募集内容を分解・整理するための12ページのワーク資料であり、資料だけで面接設計や採用戦略全体が完成するものではありません。

面接の設計や面接官トレーニングを相談したい方へ

「採用基準が面接官ごとに違う」「質問はあるが評価につながっていない」「現場責任者にも面接を任せたい」といった課題をご相談いただけます。

株式会社コクリエパートナーでは、採用目的と求める人物像の整理から、質問・評価表の設計、面接官トレーニングまで、企業の状況に合わせて支援します。採用全体から見直したい場合は、中小企業向け採用支援の内容もご確認ください。

問い合わせフォームのほか、公式LINEでもご相談いただけます。

ABOUT ME
採用人事コンサルタント 大岩貴文
求人広告の営業として10年間、中小企業の採用現場を見続けてきました。「採用の問題は、経営の問題」と確信し、中小企業診断士(経営コンサルタント唯一の国家資格)を取得。今は採用戦略・人材育成・経営改善を手がけるコンサルタントとして活動しています。「いい人が来ない」「採っても辞めてしまう」——そんなお悩み、ぜひご相談ください。経済産業省認定経営革新等支援機関 / 中小企業基盤整備機構経営アドバイザー