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事業の方向性を決める!アンゾフの成長マトリクス

TAKA
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今日は中小企業診断士試験でも頻出のアンゾフの成長マトリクスを解説します。私が受験した令和2年の二次試験でもB社のこれまでの事業をアンゾフの成長マトリクスに沿って書きなさい、といった設問がありました。試験だけでなく新規事業を検討する際にもかなり考えをまとめやすいフレームワークです。

中小企業は経営資源(人・物・金・情報)に制約があることが多い

そのため、事業戦略を検討する際には市場と製品の2軸で分けたマトリクスで考えてよりリスクが少ない戦略を選択することがセオリー

一番リスクが高い多角化でも既存事業との関連性があればリスクを抑えることが可能

アンゾフの成長マトリクスとは?

アンゾフの成長マトリクスは経営戦略の父と呼ばれるイゴール・アンゾフ氏が提唱したフレームワークです。

  • 売上が低迷してきた。。。
  • 事業を拡大したいけど、何から考えたらいいかわからない。。。
  • 既存事業は他社にシェアを奪われつづけているから打開策を考えないと。。。

などなど。

事業戦略をどうやって方向づけていくかをアンゾフの成長マトリクスに沿って検討していきます。

具体的には、下図の通り市場と製品・サービスの2軸でマトリクスを作ります。

それぞれの象限の戦略についてまとめます。

象限①:市場浸透戦略

まずは既存の市場に既存製品を売ることで売上拡大を図る戦略です。

これは今まで取り組んでいることですから大きなリスクはありません。

今まで取り組んでいるからこそ、これ以上の拡大は難しいと思いがちですが市場浸透戦略こそ発想の転換やアイディア次第でどうにでもなる、という可能性を秘めています。

私の体験した広告営業でのことです。

既存の大手クライアントからの発注を増やしてもらいたくてアプローチしていたのですが「他の媒体はもう既にお取引している会社があるから・・・」と断られることが多くありました。営業経験が浅い時はもうあの会社からの発注は頭打ちかなー、とあきらめていました。

しかし、何度も担当者さんと話すうちに他社との取引で不満に感じていらっしゃるところを聞くことができたんです。

そこからはその不満をどう解消するか、根気よく提案を続けることで当社に発注いただけることができ、売上も各段に伸びました。

その時に改めて考えたのは、自分の思い込みを疑え!ということです。

もうだめだ!と感じても、よ~くお客様のことを観察して、相手の視点や思考に考えを巡らせることで新しい突破口が見えてくるかもしれません。

まずは今の状況でやれることは全てやっているのか?という議論は必要です。

象限②:製品開発戦略

次に既存市場に新しい製品を投入する製品開発戦略です。

リスクとリターンは中程度といったところでしょうか。

既存市場を相手にしているので今まで蓄積した顧客ニーズをどう活かすのか、といったことが問われてきます。

私が考える成功するポイントとしては2点。

  • 既存製品では解決できない顧客の悩みまで現場で吸い上げて社内にフィードバックするような仕組みを作れているか
  • 顧客を良く知る、いわば解像度の高いメンバーが製品企画を担っているか

製品開発の起点は顧客の悩みを当社でどう解決するか、という発想だと思います。

当然それが的を外していたら失敗する可能性は高いです。

中小企業では組織面で役割分担ができていないケースもあり、製品開発やマーケティングを社長や営業が兼任したりといったこともあります。よく診断士の二次試験でもアドバイスを求められるケースですが、商品開発部をつくるなどの体制も大事になってきます。

市場浸透戦略と比較すると新しい製品ですから、時間やコストもある程度かかることがネックとして考えられ、チャレンジ精神をもった人も必要です。すべてが上手くいくわけでは当然ないので失敗しても継続して取り組むチャレンジ精神を組織文化として醸成できるかも成功するかどうかのポイントですね。

象限③:市場開拓戦略

次に新しい市場に既存製品を売ることで売上拡大を図る、市場開拓戦略です。

こちらもリスクとリターンは中程度です。

市場開拓は拡大スピードが早いことがメリットです。

理由は、既存製品ということで今まで十分経験がありますから製品を供給することも、売ることも慣れているためです。市場を広げるだけですから、お客様からの紹介をいただくなどでアプローチできます。

一方、デメリットになりやすいのが経営資源(人・物・金・情報)です。

市場を広げるには自社の製品がエリアを拡大して受け入れられるかマーケティングが必要です。戦う場所が変わると新たな競合がいる可能性も十分考えられます。そこで競争優位性を発揮できるか見極めが必要です。

運よく、市場を拡大できたとしても次は流通を考えた体制を整備しないといけません。

製品を売る営業や販売員の確保や物流の設計、それを実現するための投資をする必要があります。

また、規模拡大後の人的資源管理も見逃せません。中小企業の場合、理念などを明文化していないケースもあり、少ない人数でしたら経営者と共に働きながら考えを知ることができますが人が増えてくるとそれも難しくなってきます。

私の経験した例を挙げると、地方本社の会社が大手クライアントとの取引がきっかけとなりそれまで、2拠点しかなかった営業所を5年程度で7拠点まで増やしました。

代理店ビジネスで製品はメーカーが担当しているため製品面の課題は自社では発生しません。メーカーによるプロモーションも積極的で製品は全国的に知名度があり、営業力があれば十分エリア拡大は可能な状況でした。

エリア拡大後は売上が右肩上がり、2019年には過去最高売上もたたき出しました。営業人員も毎年新卒を10名以上は採用していました。

しかし、その調子は長くは続かず売上が低迷することになります。※もちろん新型コロナウイルスなどの要因もありますが、、、

まず営業スタッフが大量に離職しました。新卒を10名前後採用しても3年後には1~2名という状況です。完全にベテランと若手の層に大きな隔たりができ、歪な年齢構成になっています。要因は拠点への転勤やスタッフのマネジメントが機能していないことが挙げられます。

拠点を出すことで、現地には管理者を置く必要がありますが、マネジメントができるスタッフを育てるのは相当な時間と労力が要ります。市場開拓で規模を広げるのであれば、人事部や管理者育成など人に対しての管理を意識しないと組織崩壊につながりかねません。

新市場開拓は売上が急拡大する可能性もありますが、自社の組織が規模拡大に耐えられるのかという視点も合わせもつ必要があると思います。

象限④:多角化

最後に、新しい市場に新しい製品を投入する多角化です。

こちらは2種類あり、既存事業と何かしら関連性のある関連多角化とそうではない非関連多角化です。

いずれにせよ、知らない相手に新しいものを提供するので成功する可能性が低いですが当たれば大きい、高リスク高リターンな戦略です。

既存市場・製品の停滞やリスク回避のために多角化する必要が出てくるケースも、もちろんあるかと思いますが、一から始めるにはリスクが高いと認識すべきです。

多角化をするとしたら、企業買収を検討するか、経営ノウハウの提供を受けられるフランチャイズで始めることが無難かもしれません。

さて、長くなりましたがすべての戦略についてお話してきました。

社内で新規事業の話や売上UPについて議論する際はアンゾフの成長マトリクスに沿って話すと相手も考えがまとまりやすく、建設的に会議も進行するのではないでしょうか。

もし、わかりずらい点やご質問があればお気軽にお問い合わせください。

今日の記事は以上です!お疲れ様でした。

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ABOUT ME
採用人事コンサルタント 大岩貴文
大手メディアの求人広告営業を10年経験した後、経営コンサルタント唯一の国家資格である中小企業診断士の資格を取得。採用人事に強いコンサルタントとして、採用支援、研修講師、経営改善などを中心に活動中。経済産業省認定経営革新等支援機関、福岡県商工会連合会エキスパートバンク登録専門家。

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