福岡県の訪問介護人材確保補助金

福岡県内の訪問介護事業所などを対象に、人材確保や職員の定着、経営改善を支援する補助金の申請が始まっています。

単純に求人広告費を補助する制度ではありません。主な対象は、職員研修、新人ヘルパー等への同行指導、登録・非常勤ヘルパーの常勤化などです。

対象として認められた経費は、各メニューの上限まで全額補助されます。ただし、申請すれば必ず交付されるわけではなく、福岡県による審査があります。

この記事では、制度の対象者、補助内容、補助額、申請期限、申請前に確認したい注意点を分かりやすく整理します。

  • 対象は、福岡県内の訪問介護事業所など3種類
  • 職員研修は1事業所あたり最大10万円
  • 新人等への同行支援は1人30回まで
  • 登録・非常勤ヘルパーの常勤化は1人最大30万円
  • 対象経費は上限まで全額補助
  • 申請期限は2026年9月10日(木)
  • 単独事業所が自社の求人広告を出す費用は対象外

福岡県訪問介護サービス人材確保事業費補助金とは

この補助金は、訪問介護サービスの担い手確保と経営の安定化を目的とした制度です。

人材確保体制の構築や、安心して働き続けられる職場環境づくり、事業所の経営改善に向けた取り組みを支援します。

制度の基本情報は次のとおりです。

項目内容
制度名令和8年度福岡県訪問介護サービス人材確保事業費補助金
実施主体福岡県
申請受付期間2026年7月10日(金)~9月10日(木)
事業実施期間2026年4月1日~2027年1月31日
補助率10分の10(対象経費を上限まで全額補助)
交付時期額の確定後、2027年2月頃~3月31日までの予定
選考方法審査制。先着順ではない

申請期間内に受け付けた案件を福岡県が審査し、採択の可否と交付額を決定します。

予算には限りがあるため、不採択となる場合や、申請額より交付額が少なくなる場合があります。

対象となるのは福岡県内の訪問介護事業所など

対象となるのは、福岡県内に所在する次の事業所を運営する事業者です。

  • 訪問介護事業所
  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所
  • 夜間対応型訪問介護事業所

訪問介護に関連していても、すべての介護サービスが対象になるわけではありません。

例えば、通所介護や訪問看護などは、この制度の対象事業所として記載されていません。

補助対象は5つ。単独事業所向けと複数法人向けがある

補助内容は、大きく「人材確保体制構築支援」と「経営改善支援」に分かれます。

区分主な取り組み補助基準額・上限
研修体制の構築研修計画、カリキュラム、キャリアアップの仕組みづくり、研修受講1事業所10万円
経験の浅いヘルパー等への同行支援経験者が同行して指導する際の人件費・交通費等1回2,500~5,000円、1人30回まで
登録・非常勤ヘルパー等の常勤化常勤化によって増える賃金・法定福利費等1人月10万円、最大3か月
複数法人による協働化・大規模化共同採用、合同研修、システム共通化、共同購入等1グループ150万円または200万円
協働化に向けた経営改善コンサルタントや社会保険労務士等への相談・支援1事業所40万円

補助率はいずれも10分の10です。分かりやすく言えば、対象として認められた経費が、それぞれの上限まで全額補助されます。

ただし、かかった費用が無条件ですべて戻るわけではありません。

対象経費として認められること、各メニューの上限内であること、審査で採択されることが前提です。

職員研修は1事業所あたり最大10万円

研修体制の構築では、ホームヘルパーや介護職員等の資質向上、定着促進につながる取り組みが対象です。

対象経費の例として、次の内容が挙げられています。

  • 研修カリキュラムの作成・見直し
  • キャリアアップの仕組みづくり
  • 事業所内研修の講師料
  • 研修会場の使用料
  • 介護職員初任者研修の受講料
  • 喀痰吸引等研修や法定研修の受講料
  • 研修受講に伴う交通費

補助基準額は、1事業所あたり10万円です。

例えば、対象となる研修費が8万円であれば、補助額は最大8万円です。15万円を支出した場合は、上限の10万円までとなります。

原則としてホームヘルパーが対象ですが、資質向上や定着促進につながると認められる研修であれば、ヘルパー資格を持たない職員も対象になる場合があります。

経験の浅いヘルパー等への同行支援は1人30回まで

経験年数の長いホームヘルパーが、新人や経験の浅いヘルパー等に同行し、技能や技術を指導する取り組みも対象です。

対象となる経費の例は、同行指導を行った際の人件費や交通費です。

事業所の所在地30分未満30分以上
中山間地域等・離島等地域1回3,500円1回5,000円
上記以外の地域1回2,500円1回4,000円

補助対象は、経験の浅いヘルパー1人につき30回までです。

制度上の「経験年数が短いホームヘルパー」は、原則として訪問業務の経験が1年未満の人を指します。

ただし、過去に1年以上の経験があっても、訪問業務から1年以上離れていた場合は対象になる可能性があります。

指導する側は、訪問業務の経験が3年以上のホームヘルパーです。

なお、対象となるのは介護報酬上の訪問介護等業務への同行です。次のような同行は対象になりません。

  • 介護保険外サービス
  • 障がい福祉サービス
  • 介護予防・日常生活支援総合事業
  • 複数名訪問加算を算定している同行

登録・非常勤ヘルパーの常勤化は1人最大30万円

現在働いている登録ヘルパーや非常勤ヘルパーを常勤化した場合、増加した賃金等が補助対象になります。

補助基準額は、常勤化する人1人につき月10万円、最大3か月です。したがって、1人あたり最大30万円となります。

ただし、30万円が一律に支給される制度ではありません。

補助対象になるのは、常勤化によって実際に増えた賃金や法定福利費等の差額です。

例えば、常勤化によって増える対象人件費が月7万円の場合、補助額は月10万円ではなく、最大7万円です。

ここでいう常勤化とは、単に「パートから正社員へ名称を変えること」ではありません。申請事業所の就業規則で定める常勤職員として雇用する必要があります。

また、次のケースには注意が必要です。

  • 派遣会社から派遣されているヘルパーの常勤雇用は対象外
  • 訪問介護に従事しない事務職員等は対象外
  • 登録・非常勤ヘルパーの離職後に新たな常勤ヘルパーを雇う場合、離職から採用まで6か月以内

常勤化を検討している場合は、本人の希望、就業規則、変更前後の勤務条件、賃金・法定福利費の差額を整理しておく必要があります。

求人広告費は単独申請ではなく、複数法人による共同採用で対象になる可能性

この補助金は、1事業所が自社の求人広告を出す費用を、そのまま補助する制度ではありません。

一方、小規模法人を中心とした複数法人のグループが、協働化・大規模化に取り組む場合は、人材募集や一括採用、合同研修などが対象になる可能性があります。

対象経費の例は次のとおりです。

  • 複数法人による人材募集・一括採用
  • 合同研修
  • 職員の定着や職場の魅力発信
  • 人事管理、福利厚生、請求業務等のシステム共通化
  • 物品の共同購入
  • 協働化に伴うICTインフラ整備

補助基準額は、1グループあたり150万円です。

対象となる中山間地域等・離島等地域の法人を含む場合は、1グループあたり200万円となります。

グループには、実施要領に定める小規模法人の要件を満たす法人を1法人以上含める必要があります。また、すべての参加法人が訪問介護等事業所を運営していなければなりません。

そのため、単独事業所の採用広告を目的に検討する場合と、複数法人で共同採用に取り組む場合では、制度の使い方が異なります。

協働化に向けた専門家への相談費は1事業所最大40万円

複数法人による協働化・大規模化の取り組みを申請した法人は、経営改善に向けた専門家への相談・支援費用も対象になる可能性があります。

対象経費の例として、コンサルタントや社会保険労務士等との契約費用が挙げられています。

補助基準額は、1事業所あたり40万円です。

このメニューだけを単独で利用するのではなく、協働化・大規模化の取り組みと組み合わせることが前提です。

申請前に確認したい6つの注意点

1.申請は先着順ではなく審査制

この補助金は、申請順に採択が決まる先着順ではありません。

申請期間内の案件を福岡県が審査し、採択の可否と交付額を決定します。

予算額には限りがあるため、要件を満たしていても不採択や減額となる場合があります。

2.2026年4月1日以降の取り組みは遡及対象になる可能性

事業実施期間は、2026年4月1日から2027年1月31日までです。

交付決定前に実施した取り組みも、期間内であれば遡って補助対象になる可能性があります。

ただし、交付決定前に実施しても、採択や交付額は保証されません。

3.2027年1月31日までに支払いまで完了する

対象となる取り組みは、2027年1月31日までに実施し、経費の支払いまで完了する必要があります。

研修の実施日だけでなく、請求・支払いの時期も含めて計画してください。

4.他の公的補助金との重複はできない

国、都道府県その他の公的機関が実施する類似の補助金等で、同じ取り組みへの補助を受けている、または受ける予定の場合は対象外です。

他制度も検討している場合は、対象経費が重複していないか確認が必要です。

5.見積書・契約書・写真などの記録を残す

申請時には、取り組みの詳細が分かる見積書等が必要です。

「一式」だけでは内容を確認できないため、経費の内訳が分かる資料を準備します。

実績報告では、次のような書類が必要になります。

  • 契約書
  • 注文書
  • 請求書
  • 領収書
  • 研修資料
  • 取り組みの写真

口頭での発注は避け、メールや書面で記録を残しておくことが重要です。

6.交付申請書だけは郵送が必要

申請は、電子申請と郵送の両方が必要です。

交付申請書(様式1)は郵送し、それ以外の申請書類は電子申請で提出します。

郵送分は、2026年9月10日の当日消印有効です。後納郵便は消印が押されないため、使用を控えるよう案内されています。

この補助金の活用を検討しやすい事業所

実務上は、次のような事業所で確認する価値があります。

事業所の状況検討できる補助メニュー
登録・非常勤ヘルパーを常勤化したい常勤化による人件費差額を1人最大30万円
新しく採用したヘルパーを現場で育成したい経験者による同行支援
研修体系やキャリアアップの仕組みを整えたい研修体制の構築
職員に資格取得やスキルアップ研修を受けさせたい研修受講料・交通費等
他法人と共同で採用・研修・業務効率化に取り組みたい協働化・大規模化
協働化に向けて経営・労務の専門家へ相談したい経営改善支援

まず確認したいのは、現在の職員構成と今後の人材計画です。

特に、次の情報を整理すると、自社に合うメニューを判断しやすくなります。

  • 登録・非常勤ヘルパーの人数
  • 常勤化を希望する職員の有無
  • 採用した新人の訪問業務経験
  • 今後の研修予定
  • 連携できる他法人の有無

よくある質問

求人広告費は補助対象になりますか?

単独の事業所が自社の求人広告を出す費用は、この補助金の対象として示されていません。

一方、要件を満たす複数法人のグループが共同で人材募集や一括採用を行う場合は、協働化・大規模化のメニューで対象になる可能性があります。

非常勤ヘルパーを常勤化すれば、必ず30万円もらえますか?

30万円が一律に支給されるわけではありません。

補助基準額は1人月10万円、最大3か月ですが、実際に補助されるのは、常勤化によって増えた賃金・法定福利費等の差額と基準額を比較した低い方です。

また、福岡県の審査で採択される必要があります。

2026年4月以降にすでに実施した研修も対象になりますか?

事業実施期間内であれば、交付決定前の取り組みも遡って対象になる可能性があります。

ただし、申請や交付が保証されるわけではありません。

契約書、請求書、領収書、研修資料、写真など、取り組みと支出を確認できる記録が必要です。

他の補助金や助成金と併用できますか?

同じ取り組み・経費について、国や自治体等の類似した公的補助を重複して受けることはできません。

別の取り組みや重複しない経費であれば判断が分かれるため、申請前に福岡県へ確認してください。

申請は先着順ですか?

先着順ではありません。申請期間内に受け付けた案件を福岡県が審査します。

予算には限りがあるため、不採択となる場合や、申請額より交付額が少なくなる場合があります。

まとめ|申請期限は2026年9月10日

福岡県訪問介護サービス人材確保事業費補助金は、単純な求人広告費の補助ではありません。

職員の育成や定着、登録・非常勤ヘルパーの常勤化、複数法人による共同採用・経営改善などを支援する制度です。

※制度内容は変更される場合があります。申請前に必ず福岡県の公式ページと最新の実施要領をご確認ください。

特に、次の取り組みを予定している事業所は確認しておきましょう。

  • 職員研修や研修体系の整備
  • 新人や経験の浅いヘルパーへの同行指導
  • 登録・非常勤ヘルパーの常勤化
  • 複数法人による共同採用や合同研修
  • 協働化に向けた専門家への相談

申請期限は、2026年9月10日(木)です。

申請は電子申請だけで完結せず、交付申請書の郵送も必要です。

制度の対象になるか分からない場合や、補助金を活用して人材確保・育成・経営改善を進めたい場合は、株式会社コクリエパートナーへご相談ください。

対象になるか分からない段階でもご相談いただけます。

ABOUT ME
採用人事コンサルタント 大岩貴文
求人広告の営業として10年間、中小企業の採用現場を見続けてきました。「採用の問題は、経営の問題」と確信し、中小企業診断士(経営コンサルタント唯一の国家資格)を取得。今は採用戦略・人材育成・経営改善を手がけるコンサルタントとして活動しています。「いい人が来ない」「採っても辞めてしまう」——そんなお悩み、ぜひご相談ください。経済産業省認定経営革新等支援機関 / 中小企業基盤整備機構経営アドバイザー