春闘とは、毎年春に行われる労働組合と企業の賃金・労働条件に関する交渉のことです。正式には「春季生活闘争」と呼ばれ、主に大手企業の労働組合が団結し、賃上げや労働環境の改善を求める取り組みです。
春闘と聞いても、ピンと来ない方も多いのではないでしょうか?でも、大手の動きは中小企業にも大きく影響します。どんな影響があるのか、どう対策をすればいいのか、この記事で詳しくお伝えします。
この記事では、そんな春闘について初めて知る方にもわかりやすく解説します。ぜひ、最後までご覧いただけると幸いです。
春闘は中小企業にも関係する?

春闘は主に大企業で行われますが、その影響は中小企業にも波及します。大企業が賃上げを行うと、求職者の待遇への期待が高まり、結果として中小企業も賃上げを求められるケースが増えます。また、取引先の労働環境が改善されることで、働き方の基準が変わることも考えられます。
今春闘でも中小企業に賃上げが波及するかどうかが注目されています。2024年の春闘では、大企業より賃上げ率は低いものの、中小企業でも賃上げが進みました。連合によれば、300人以上の企業では定期昇給込みで5.19%、定昇を含まない賃金分(ベースアップ)で3.60%であり、300人未満の企業はそれぞれ4.45%、3.16%でした。
一方、2024年の消費者物価の総合指数は前年比2.7%上昇しました。労働組合がある職場では、それが十分かどうかはさておき、中小企業も物価上昇を超えるベアを獲得したことになります。
春闘の対象と交渉内容
春闘では具体的にどのような内容が交渉されるのでしょうか?実は、賃上げだけでなく、さまざまな労働条件について話し合われています。
- 賃上げ(基本給の引き上げや一時金の増額)
- 労働時間の短縮(残業時間の削減、週休2日制の推進)
- 非正規社員の待遇改善(正社員との賃金格差是正)
- 育児・介護支援の拡充(働き方改革に関連)
春闘の目的と中小企業への影響

春闘の目的
春闘の目的とは何でしょうか?実は、春闘は単なる賃上げ交渉にとどまらず、さまざまな目的を持っています。具体的には、次のような点が挙げられます。
- 労働者の生活向上
- 労働環境の改善
- 企業の競争力向上(待遇改善による優秀な人材の確保)
中小企業の経営者が知るべき影響
春闘と聞くと「大企業の話だから自社には関係ない」と思う方もいるかもしれません。しかし、春闘の結果は大企業にとどまらず、中小企業の人材採用や従業員の満足度にも影響を及ぼします。
- 人材の確保が難しくなる:大企業が賃上げをすると、求職者がより高待遇の企業を選ぶ傾向が強まる
- 労働市場の基準が変わる:労働環境改善が進むと、従業員の期待値が高まる
- 取引先の影響:大企業が賃上げを進めると、下請け企業にコスト上昇の影響が及ぶ
春闘の交渉の流れとスケジュール

春闘の進行スケジュール
春闘は毎年実施されますが、どのようなスケジュールで進むのでしょうか?一般的な流れは次のとおりです。
- 前年8月〜12月:労働組合が要求内容を検討
- 12月:全国労働組合組織が全体方針を決定
- 1月〜2月:各企業の労働組合が具体的な要求を策定
- 2月〜3月:企業と労働組合の交渉が本格化
- 3月中旬〜下旬:企業側の回答が出揃い、最終決定
中小企業の対応ポイント
中小企業も大手企業の春闘の影響を受けることがあります。その影響に対応するためのポイントを分かりやすくご紹介します。
市場動向を把握することの重要性
春闘の影響は、大企業だけでなく中小企業にも広がります。たとえ直接交渉の場がなくても、労働市場全体の流れを理解することが重要です。
なぜ市場動向を把握する必要があるのか?
- 採用競争の変化:大企業の賃上げが進むと、求職者の待遇への期待が高まり、中小企業もそれに応じた対応が求められる。
- 労働市場の基準変化:春闘の結果によって、業界全体の賃金や労働環境の基準が変わる可能性がある。
- 取引先の影響:仕入れ先や顧客企業が春闘の影響を受けると、中小企業も価格交渉やコスト調整が必要になる。
つまり、春闘の影響を直接受けない企業であっても、賃上げの流れや市場の変化を意識しながら、経営戦略を見直すことが求められます。
過去の春闘の動向と2024年の特徴

過去の春闘の賃上げ率推移
近年の春闘では、どのような賃上げが行われてきたのでしょうか?過去数年間のデータを見ると、賃上げ率には一定の傾向が見られます。
- 2022年:2.2%
- 2023年:3.6%
- 2024年(見込み):5%超
この背景には、物価上昇や企業の利益回復が関係しています。
2024年の春闘の特徴
2024年の春闘では、
- 物価上昇を考慮した大幅な賃上げ要求
- 非正規雇用の待遇改善への関心の高まり
- 政府の賃上げ要請が強く影響 が注目点となっています。
春闘を踏まえた中小企業の対応策

自社の賃金戦略をどう考えるべきか?
- 業界の平均賃上げ率を確認
- 自社の業績と財務状況を分析
- 労働市場の競争環境を考慮
採用市場への影響と人材確保のポイント
春闘による賃上げの影響で、求職者はより高待遇の企業を選ぶ傾向が強まります。そのため、
- 賃金以外の魅力(福利厚生・働きやすさ)を強化
- 企業の魅力を発信する採用広報を充実
- 労働条件の見直しを検討 といった対応が重要です。
私の体験談:補助金での賃上げ要件が多くなってきた

私は中小企業診断士として、中小企業の経営をサポートしています。特に、国や自治体が公募する補助金を活用した設備投資の支援を行うことが多く、事業計画書の作成や申請手続きのサポートをしています。
中小企業、とくに製造業では設備投資にかかる費用が大きく、補助金の活用は経営にとって欠かせません。補助金にはさまざまな要件があり、それを満たすことで補助率が上がったり、加点措置が受けられたりするため、採択の可能性が高まります。その中でも最近特に注目されているのが、賃上げを実施することが補助要件に含まれるケースが増えていることです。
中小企業では労働組合がないため、大企業のように春闘を通じた賃上げ交渉はあまり行われません。しかし、国が補助金の条件として賃上げを求めることで、企業側も賃上げを検討せざるを得ない状況になりつつあります。こうした動きからも、政府が賃上げを推進していることがわかります。
まとめ:春闘を正しく理解し、中小企業経営に活かす
春闘は主に大企業で行われるものですが、その影響は中小企業にも及びます。特に、
- 賃上げの動向を把握し、適切な人材戦略をとること
- 労働市場の変化に対応し、採用力を強化すること が、中小企業にとって重要なポイントです。
2024年の春闘の影響を見据え、自社の労働条件を見直し、競争力を高める準備を進めていきましょう!