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マルチタスクとは?人手不足時代に求められる働き方の本質

最近、「マルチタスク」という言葉を耳にする機会が増えました。特に中小企業をはじめとする現場では、一人が複数の業務を担うことが当たり前になりつつあります。その背景には、2025年問題をはじめとした深刻な人手不足があります。

実際、新潟県南魚沼市の古民家ホテル「ryugon」では、76歳の女性従業員が朝食づくり、民謡披露、郷土料理の講師という3役を担い、ホテル運営を支えています。系列ホテルでは1人6役をこなす従業員もおり、この「多能工化」が売上高の8倍増、離職率の低下という成果を生み出しました。

採用コンサルタント:大岩

マルチタスクは製造業では「多能工」と呼ばれ、一人で複数の工程を担える人のことを指します。最近では製造業だけでなく、サービス業などの業種にも多能工化が広がっています。

こうした事例は、単なる業務の分担ではなく、個人の可能性を広げる「マルチタスク」という働き方が持つ力を象徴しています。本記事では、「マルチタスクとは何か」を改めて整理し、経営や人材戦略の視点からその意義と課題を掘り下げます。

マルチタスクとは?意味と基本概念

マルチタスクとは、複数の作業を同時に、または短時間で切り替えながら進行する能力を指します。もともとはコンピュータ用語で、1台のコンピュータが複数の処理を並行して実行することを意味していました。

ビジネスシーンにおいては、電話応対をしながらメールを確認する、会議をしながら議事録を取るなどが代表例です。近年ではこの能力が「多能工化」「柔軟性の高い人材」として、企業経営における重要なキーワードとなっています。

マルチタスクのメリットと経営への利点

マルチタスクには、次のようなメリットがあります。

  • 時間の有効活用:複数の業務を並行して進めることで、業務全体のスピードが上がります。
  • 緊急対応力の向上:突然のタスクにも柔軟に対応できる人材は、現場の即応力を高めます。
  • 全体視点の育成:複数の業務を経験することで、会社全体の流れを理解する力が身につきます。

先述の旅館のように、業務をまたぐ経験を提供することで、従業員のスキルが広がり、企業の価値提供の幅も広がるのです。これは人手不足下の中小企業にとって、非常に重要な戦略といえるでしょう。

マルチタスクのデメリットと注意点

一方で、マルチタスクには注意が必要です。

  • 生産性の低下:人間の脳は同時に複数のことを処理するのが得意ではありません。切り替え時に集中力が低下することが多く、かえって効率が下がることがあります。
  • ストレスの増加:同時進行の業務が多すぎると、心理的負担が増え、燃え尽き症候群につながる恐れもあります。
  • タスク間の干渉:一つのミスが他の業務に波及する可能性があり、リスク管理の難易度も高まります。

無理な業務の詰め込みは逆効果です。マルチタスクを機能させるには、業務設計と環境整備が不可欠です。

マルチタスクが苦手な人の特徴と対策

マルチタスクが得意ではない人には共通点があります。

  • 完璧主義傾向:一つの作業を完璧に仕上げたい気持ちが強く、他の業務と並行しづらい。
  • スケジュール管理が苦手:タスクの優先順位付けや、進行管理が苦手で混乱しやすい。

こうした人には、業務の見える化や、タスク管理ツールの導入、1日単位での予定立案などを支援すると効果的です。適性に応じた業務設計が離職防止にもつながります。

性別や脳の特性から見るマルチタスク

研究によれば、女性は男性よりもマルチタスク能力において優位である可能性があります。脳の構造やエストロゲンといったホルモンが影響しているとされ、保育や接客などの現場では女性の強みが発揮されやすい傾向にあります。

また、脳の構造的な違いとして、女性は左右の脳半球を結ぶ「脳梁(のうりょう)」の連携が強いとされ、情報のやり取りがスムーズである可能性が指摘されています。これにより、言語や感情、視覚情報などを同時に処理する能力が高いと考えられています。

一方で、男性は空間認識や集中力の持続に優れる傾向があり、シングルタスクに強みを持つとも言われます。たとえば、集中して一つの作業に没頭する業務や、分析・設計といったタスクに適している場合もあります。

ただし、これはあくまで傾向であり、個々の特性や適性を見極めることが重要です。性別に関わらず、それぞれの強みを活かす配置や業務設計が求められます。

企業が取り入れるべき「マルチタスク支援施策」

マルチタスクを社員個人の努力や根性に頼るのではなく、「仕組み」で支えることが重要です。

  • マニュアル整備:業務を標準化することで、誰が担当しても一定の品質を保てる。
  • 教育とOJTの充実:複数業務を段階的に学べるカリキュラムを用意。
  • ICTツールの導入:タスク管理や進捗共有がしやすいツールを活用。
  • 評価制度の見直し:多能工的な役割や柔軟性を正しく評価する仕組みを。

また、日立ハイテクのようにニューロダイバーシティを尊重し、多様な特性を持つ人材が活躍できる職場づくりも求められます。

生産性向上とマルチタスクのこれから

今後、人口減少により「人手不在」の社会が現実となります。その中で経済成長を維持するためには、一人ひとりの生産性を上げるしかありません。

スイスのビジネススクールIMDによると、日本の人的資本ランキングは67カ国中40位と低水準。語学力や国際経験の不足が課題とされています。こうした課題を受けて、熊本県では小学校教育から英語による授業を導入する「国際クラス」の準備が進められています。外国人児童の受け入れに対応するとともに、将来的にグローバル人材を育てる狙いがあります。

マルチタスクは、人手不足時代の現場を支える重要な手段です。ただしそれは「便利にこき使う」ことではなく、「個人の能力を最大限に活かす設計」として位置づける必要があります。

私の現場体験から見たマルチタスクの可能性

私は現在、採用コンサルタントとしてさまざまな業種の企業を支援しています。その中で、人材活用が上手くいっている企業ほど「マルチタスク化」に積極的に取り組んでいる傾向があります。

特に製造業では、ライン作業や工程ごとに分業されがちな中で、一人の作業者が複数の工程を担えるように教育している企業が増えています。結果として、生産の柔軟性が高まり、急な欠員にも対応しやすい体制が整っているのです。

また、飲食業界でも複数店舗を展開する企業においては、業態の垣根を越えて社員やアルバイトが応援に入れる体制を整えています。例えばカフェ業態から居酒屋業態への応援が可能で、そのスキルを得た人には手当を支給する仕組みを設けているケースもあります。

このように、今いるスタッフの能力を最大限に引き出し、生産性を高めることが、これからの人手不足を乗り越えるためには欠かせない視点だと実感しています。

まとめ:マルチタスクを「人材活用戦略」として見直す

  • 無理に押し付けず、適性と教育、設計で支えること
  • 働く人の多様な能力を引き出す視点を持つこと
  • 現場からのフィードバックを活かし、制度として整えること

人手不足が続くこれからの時代において、マルチタスクは単なる流行語ではなく、経営における根本的な課題と向き合うためのヒントとなるはずです。

よくある質問(Q&A)

Q1. マルチタスクを社員に求めるのはブラック企業になりませんか?

A1. 無理な負荷をかけることは避けるべきですが、業務の多能工化を「スキルアップの機会」として設計し、適切な教育や評価制度とセットで導入すれば、社員のやりがいや成長につながります。

Q2. マルチタスクを苦手とする社員への対応方法は?

A2. タスク管理ツールの導入や業務の見える化を進めることで、混乱を防ぎやすくなります。特性を見極め、適切な業務配置をすることが重要です。

Q3. 採用時にマルチタスク能力はどのように見極められますか?

A3. 過去の業務経験で「複数業務を同時にこなした事例があるか」「優先順位の判断に関わった経験があるか」などを面接で深掘るのが効果的です。

Q4. マルチタスクはすべての職種に必要ですか?

A4. 一概には言えません。職種によってはシングルタスクに集中した方が成果を出しやすいこともあります。業務の性質に応じて、必要性を判断しましょう。

Q5. マルチタスクの導入で離職率が上がることはありませんか?

A5. 無計画に導入すると負荷が増え、離職につながるリスクがあります。業務設計・教育・評価をセットで整えることで、むしろ定着率を高める効果も期待できます。

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ABOUT ME
採用人事コンサルタント 大岩貴文
大手メディアの求人広告営業を10年経験した後、経営コンサルタント唯一の国家資格である中小企業診断士の資格を取得。採用人事に強いコンサルタントとして、採用支援、研修講師、経営改善などを中心に活動中。経済産業省認定経営革新等支援機関、福岡県商工会連合会エキスパートバンク登録専門家。

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