住宅手当の再評価が進んでいます。物価や家賃の上昇にともない、大手企業を中心に住宅手当の支給額を増額・制度を拡充する動きが目立ちます。
私ももらったことがありますが、住宅手当は働く人にとって魅力的な手当ですよね!最近の傾向として、その住宅手当が見直される動きがあることをご存知でしょうか?
かつては廃止傾向にあったこの制度が、今なぜ注目されているのか?そして中小企業こそ取り入れるべき理由とは?この記事では、採用のプロの視点から「住宅手当とは何か」「導入・見直しのポイント」まで詳しく解説します。
住宅手当とは?その基本的な役割と目的

住宅手当とは、企業が社員に対して家賃の一部を補助する制度のことです。主に、社員の生活基盤を安定させ、安心して働ける環境を整える目的で導入されています。また、採用活動においても「福利厚生が充実している企業」としてアピール材料になり、応募数の増加や人材定着率の向上に寄与します。
支給方法は企業によって異なり、一定額を支給する定額方式や、家賃の〇%を上限付きで支給する方式、世帯構成(独身・配偶者あり・子どもあり)によって金額を変えるケースなどがあります。
→ 次は、なぜ今また住宅手当が注目されているのかを見ていきましょう。
なぜ今、住宅手当が見直されているのか?

背景にあるのは、都市部を中心とした住宅費の高騰です。不動産情報サービス「アットホーム」によると、2025年3月時点で東京23区の単身向け平均家賃は9万9,083円、カップル向けは16万3,554円と、前年同月比でそれぞれ6.6%、10.3%上昇しています。
加えて、東京都区部の「民営家賃」は前年同月比で1.1%上昇しており、これは実に30年ぶりの高い上げ幅です。こうした家賃上昇は、求職者や若手社員の生活に大きな影響を及ぼしており、企業側が支援に乗り出す必要性が高まっています。
→ こうした背景を受けて、実際に各社がどのように制度を強化しているかを見てみましょう。
住宅手当の支給を拡充する企業事例

- セブンイレブン・ジャパン:転勤者向けに毎月最大6,000円の増額。支給額は2万〜3.5万円。物価高への対応として補助額を見直し。
- 商船三井:全社員(持ち家含む)を対象に住宅手当を月4〜6万円に倍増。
- 三菱重工業:家賃補助を3割増、さらに新幹線・高速道路の通勤補助も要件緩和。
- ニーズウェル:支給対象を入社3年目→7年目まで延長。
- プレミアグループ:住宅手当の上限額を5,000円引き上げ、最大6.5万円に。対象年齢や等級も拡大。
→ このように大手企業の動きは、求職者の注目度も高めています。
住宅手当の導入・見直しがもたらす採用効果

キャリタス就活の調査によると、「就職先選びで知りたい情報」として最も多かったのが「福利厚生(住宅補助や保養所など)」で、61.4%が注目しています。給与だけでなく、住宅手当や社宅制度など、生活支援型の福利厚生が採用競争力を左右する時代です。
実際、「福利厚生が充実している企業は安心感がある」との声も多く、特に初めての一人暮らしをする新卒社員には強い訴求力を持ちます。また、既存社員の働きがい(エンゲージメント)向上にもつながり、離職防止にも効果が期待できます。
→ では、制度を設計する際の実務的なポイントを見ていきましょう。
制度設計の実務ポイントと注意点

- 支給対象の明確化:独身者も含めるのか、世帯主限定なのか。共働きや外国人社員への対応も含め、柔軟に設計を。
- 支給金額の妥当性:地域の家賃相場を踏まえた支給水準を設定。
- 持ち家社員への配慮:商船三井のように、住宅ローンを持つ社員も対象に含める設計も可能。
- 社宅とのすみ分け:社宅制度との併用可否や非課税枠の検討も重要。
- 税務上の扱い:住宅手当は原則給与課税となるため、非課税枠の活用や社宅制度との併用に工夫が必要です。
→ 最後に、導入を検討する企業へのメッセージをまとめます。
私自身の体験から感じたこと

私が以前勤めていたのは、求人メディアを扱う代理店でした。入社5年目に、新しい拠点の立ち上げで転勤を命じられた際、それまでなかった住宅手当が初めて支給されました。
本社勤務時代には制度の対象外だったため、当時は「住宅手当なんて一部の人だけがもらえるもの」という感覚でした。しかし、転勤により実際に住宅手当を受け取ると、手取りが増えた実感が強くありました。家賃負担の軽減だけでなく、「自由に使えるお金が増えた」という心理的ゆとりは非常に大きなものでした。
ところが、本社に戻ったタイミングで住宅手当は支給対象から外れ、再び家計の負担が重くなったのを実感しました。この経験から、社員の納得感を高めるには、誰がどの条件で受け取れるのかが明確で、公平性のある制度設計が重要だと感じています。
企業が制度を導入する際には、「一部の社員しか得をしない」といった不公平感が生まれないよう、透明性や説明責任を持った運用が求められます。
中小企業こそ「住宅手当」で差別化を

「大企業にはできても、うちでは無理」と感じるかもしれません。しかし、実際はシンプルな制度設計でも十分な効果があります。例えば月1万円程度の補助でも、若手社員にとっては家計の支えになり、企業への安心感や信頼感を持ってもらいやすくなります。特に地方では、少額でも「手当があるかないか」が求職者の企業選びに直結するケースも多くあります。
また、住宅手当は単なる金銭的支援にとどまらず、「社員の暮らしを理解し、大切にしている」という企業姿勢を伝えるメッセージにもなります。社員の声をヒアリングしながら制度設計を行えば、働く環境の向上とあわせて、組織へのエンゲージメント強化にもつながります。
さらに、近年は中小企業でも人材獲得競争が激化しており、給与額だけでは大手と差がつきやすくなっています。そんな中、「住宅手当」という実利性の高い福利厚生を設けることは、採用活動の差別化にも大いに役立ちます。
中小企業だからこそ、経営判断のスピードや制度導入の柔軟性が活かせます。まずは「今できる範囲」で、試験的な導入から始めてみることをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
Q1:住宅手当はどのくらいの金額が一般的?
A:住宅手当の相場は、企業の規模や所在地によって異なりますが、都市部ではおおよそ月2〜4万円が主流です。特に東京23区や大阪市内などの家賃が高いエリアでは、月5万円以上を支給している企業もあります。一方で、地方では1〜2万円程度の支給が一般的です。また、金額だけでなく支給の条件(例:独身か既婚か、転勤かどうか)も企業ごとに異なるため、導入時には自社の人員構成や地域事情を踏まえて設計することが重要です。
Q2:税務処理上の注意点は?
A:住宅手当は原則として「給与」として課税対象となります。そのため、支給額に応じて社員の所得税や社会保険料にも影響が出ます。ただし、借り上げ社宅制度と組み合わせることで、一定の条件下では非課税枠を活用できるケースもあります。税務上の取扱いについては、制度設計前に顧問税理士や社会保険労務士と相談することをおすすめします。また、誤って課税・非課税の区分を誤るとトラブルの元となるため、運用時にはルールの明文化も重要です。
Q3:住宅手当は新卒採用でも効果がある?
A:はい、非常に効果があります。特に新卒社員の多くは初めての一人暮らしをすることが多く、家賃の負担は大きな不安要素です。住宅手当があることで「生活への不安が軽減される」「安心して働き始められる」といった心理的な安心感が得られ、企業選びの重要な要素になります。実際、就職情報サイトの調査でも「福利厚生(住宅補助など)」は学生が重視する項目の上位に入っており、採用広報の中でもPRすべきポイントです。
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