「保育園のときは両立できていたのに、小学校に上がった途端、働き続けるのが難しくなった」。 このような声は、ニュースや報道などで頻繁に取り上げられており、社会的にも注目されている課題です。
この現象は「小1の壁」と呼ばれ、子どもが小学校に進学すると同時に、 親の働き方に大きな影響が出る問題です。保育園と異なり、小学校は朝の登校時間が遅く、放課後も預かり時間が短いため、 出勤や残業が難しくなります。
結果として、働く親が時短勤務に切り替えたり、 場合によっては離職を選んだりするケースもあります。この記事では、「小1の壁」について、採用コンサルタントの視点で詳しく解説しています。ぜひ、最後までご覧ください。
小1の壁の現状データ|こども家庭庁の調査から見る支援不足

2025年5月、こども家庭庁が全国1741市区町村を対象に調査を実施。 1017の自治体から回答を得ました。
その中で、平日の朝に子どもの居場所を「実施している」と回答したのは、 全体のわずか1.4%(14自治体)。「実施に向けて検討中」も1.7%(17自治体)にとどまり、 実に96.7%(983自治体)は「実施していない(未検討)」という結果でした。
親側の調査では、約30%の保護者が「朝の居場所を利用したい」と答えており、 ニーズは高いにもかかわらず、自治体の対応はまだ進んでいないのが現状です。
人材不足や施設確保の困難さが主な課題となっており、 公的支援だけに頼るには限界があることがわかります。
小1の壁が離職を招く?企業が人材確保のためにできる対応

「小1の壁」は、企業にとっても無関係ではありません。 この問題に直面した社員が離職や時短勤務に移行することで、 業務に支障が出たり、採用コストが増加したりするリスクがあります。
だからこそ、企業が能動的に社員のライフステージに寄り添い、 働きやすい環境を整えることが、人材の定着・戦力化に直結します。
特に共働き世帯が多い現代において、柔軟な働き方の有無は 求職者にとって企業選びの重要な判断材料となっています。
小1の壁対策に有効な柔軟な働き方の導入アイデア

企業にできる対応策として、以下のような取り組みが挙げられます。
- 時差出勤制度の導入(例:10時始業など)
- リモートワークや在宅勤務の導入
- 子どもの入学タイミングでの1on1面談による相談機会の提供
- 子育て中社員同士の交流の場づくり(社内コミュニティ)
重要なのは「制度があること」ではなく、「制度が使いやすいこと」。 そのためには、管理職の理解や職場全体での雰囲気づくりが欠かせません。
実体験で感じた小1の壁|3児の父である筆者の声

私は3人の子どもを育てながら仕事をしています。 子どもは現在、8歳・6歳・4歳。真ん中の子が今年、小学校に入学しました。
保育園に通っていたときとは異なり、小学校は「親の出番が多い」。 朝の準備、持ち物のチェック、登校の見守り、 PTAや地域の見守り当番まで、想像以上にやることが増えました。
入学直後は特に子どもも親も緊張しており、 朝は「行きたくない」と泣いたり、体調を崩すこともありました。
このような時期にフルタイムで働き続けることは、 決して当たり前のことではありません。
だからこそ、企業には「個々の社員の状況に合わせた柔軟な対応」が 必要だと実感しています。
採用広報で差がつく!小1の壁に配慮した制度の伝え方

「柔軟な働き方ができる職場」であることは、採用活動でも大きな強みになります。
- 採用サイトに育児支援の取組みを掲載
- 実際に支援制度を利用した社員のインタビューを掲載
- SNSや採用動画で職場の雰囲気を伝える
制度の内容だけでなく、「実際にどう使われているか」「どんな配慮があるか」 を可視化することで、求職者の共感や安心感を得られます。
小1の壁は家庭全体・企業全体の問題|男性社員・管理職の役割とは

「小1の壁」は、母親だけが抱える問題ではなく、父親を含む家庭全体、そして企業全体が向き合うべき課題です。実際、育児や家庭の事情で柔軟な働き方を求めるのは、女性に限りません。
男性社員の中にも、登校の見守りや保育園の送り迎え、PTA活動への参加など、子育てとの両立に悩む人は少なくないのです。企業としては、「子育て支援=女性支援」という固定観念を捨て、すべての社員にとって働きやすい環境を目指すべきです。
また、管理職には制度を理解し、利用を後押しする立場としての責任があります。
「制度はあっても使いづらい」状態では意味がありません。 積極的にロールモデルを紹介したり、使いやすい雰囲気を作ったりすることで、 制度の活用率が上がり、社員の満足度や定着率にもつながります。小1の壁に対応することは、結果的に企業全体の生産性向上や働き方改革にも寄与するのです。
ライフステージに応じた支援制度で実現する離職防止と採用力アップ

社員の人生には、育児・介護・自身の病気・パートナーの転勤など、 働き方を見直す必要が生じるさまざまなタイミングがあります。 こうしたライフステージごとの変化に対応できる制度が整っているかどうかは、 企業にとって採用・定着両面において極めて重要な要素です。
一律の制度ではなく、個別の事情に合わせて調整できる柔軟性こそが、 社員の「辞めずに働き続けられる」安心感につながります。 たとえば、子育てが落ち着くまでは時短勤務、介護が必要な時期には週の一部だけ出社、 体調不良のときは在宅勤務といった運用ができるようにすることが理想的です。
こうした支援は、福利厚生の一部ではなく、企業の競争力そのものだと捉えるべきです。 「柔軟な働き方ができる=成果を出せる環境がある」ことを社内外に示すことで、 採用力の強化につながります。
特に若年層や女性求職者にとって、制度の有無だけでなく、 実際に活用されているかどうかが企業選びのポイントになります。 そのため、支援制度を整えるだけでなく、制度利用の実績や社員の声を発信していくことが大切です。
結果的に、支援制度の整備は「離職を防ぐ」だけでなく、 「この会社で働きたい」と思わせる力にもなります。
よくある質問(Q&A)
小1の壁は何歳まで続くの?
一般的には入学後の1年間がもっとも負担が大きいとされますが、 学童の終了や習い事の送迎など、柔軟な対応が求められる期間は長期にわたることもあります。
男性社員にも制度を使ってもらうには?
「使っていい」というだけでなく、 実際に使っているロールモデルや上司の後押しが重要です。 職場の文化として制度活用を歓迎する雰囲気づくりが効果的です。
柔軟な制度を作っても、使われなかったら意味がないのでは?
制度は「存在」ではなく「運用」が重要です。 社員が安心して使えるように、研修や社内説明、事例共有を行いましょう。
【無料】採用人事に役立つメルマガ配信中!

毎週火曜・金曜の11時30分ごろに最新情報をお届けしています。ブログでは書けない、ここだけの話や実践的な採用ノウハウも盛り込んでいます。
不要になった場合は、いつでも簡単に解除可能です。まずは気軽にご登録ください!