美容師免許を取得しながらも美容師として働かない「免許保有未就業者」の増加や、休眠美容師の多さが、いま美容業界に大きな課題としてのしかかっています。2025年現在、少子高齢化の加速や働き方への意識の変化を背景に、人材確保はますます困難に。離職率の改善や復職支援といった前向きな動きも見られる一方で、Z世代の就職観に合った柔軟な働き方や情報発信力が、採用成功の鍵となってきています。
実は、美容師さんの採用はかなりハードルが高い部類に入ります。資格が必要であり、働く環境もハードなため資格を持っていても別の職を選ぶ人が多い現状があります。
この記事では、美容師の採用に関する最新の課題と、それに対する具体的な戦略について、わかりやすく解説します。
美容業界の採用状況と2025年問題

近年、美容師免許の取得者数自体は大きく減っていないにも関わらず、「美容師として働かない」選択をする若者が増えています。リクルートの調査によると、免許を持ちながらも美容師としての就労経験がない人の割合は年々増加傾向にあり、2025年時点で過去最高水準に達しています。特に若年層では「技術職=長時間労働・低賃金・休めない」というイメージが強く、美容室の職場環境に不安を感じているケースが多いと考えられます。
また、少子高齢化によって若手の絶対数が減っており、各美容室は人材確保の難しさに直面しています。一方で、福利厚生の充実や柔軟な働き方を取り入れることで、離職率が低下しているというポジティブなデータもあります。美容業界においては、採用と定着の両面からアプローチする戦略が今後ますます重要になるでしょう。
美容師採用の課題

美容師採用が難航する背景には、単なる人手不足だけでなく、若者の職業観や業界に対するイメージの変化が色濃く影響しています。美容師という職業は華やかでクリエイティブな側面がある一方、現場では体力的にも精神的にもハードな環境が多く、特に就業初期は低賃金で過酷なトレーニングが続きます。このような現実とのギャップが、入職をためらわせる大きな要因となっています。
さらに、近年では「仕事とプライベートの両立」や「働きがい」など、若年層が重視する価値観に業界が十分応えられていないケースも目立ちます。週休二日制が導入されていない店舗もあり、土日祝日の勤務が前提とされる風土が敬遠される一因です。
また、美容師免許取得者のうち実際にサロン勤務を経験しないまま他業界へ進む人が増えているという調査結果からも、「美容師になるリスク」を回避したいと考える傾向が見えてきます。働く側の心理的ハードルをいかに下げるかが、今後の採用成功に向けたカギになるでしょう。
なぜ採用が難しいのか?
- 労働環境の厳しさ:長時間労働や立ち仕事、休憩が取りづらいなどの身体的負担
- キャリア形成の困難さ:技術習得に時間がかかり、初任給も低いため離職しやすい
- 給与水準の問題:全産業平均より低め。給与と労働のバランスが取れていない
給与の実態(2025年時点)
- 正社員美容師:月給約24.6万円
- アルバイト美容師:時給約1,324円 (出典:PR TIMES 調査)
効果的な美容師採用戦略

美容師の採用を成功させるには、今の若者が何を重視しているかを理解し、それに合った工夫を取り入れることが大切です。ここでは、現場主導の採用体制、SNSの活用、働きやすい環境の整備、そして独自のブランディングといった、採用効果を高めるための4つの柱をご紹介します。
まず、採用活動を店舗主導で行うことで、現場のリアルな魅力を直接伝えることができます。求職者との接点が増え、ミスマッチの防止にもつながります。
次に、InstagramやTikTokなどのSNSを活用して、サロンの雰囲気やスタッフの人柄を発信することが、Z世代の学生に効果的です。写真や動画での発信は、サロンを身近に感じてもらうきっかけになります。
働きやすさを追求することも重要です。柔軟な勤務時間、福利厚生の充実、教育体制の整備など、トータルで「この職場なら長く働けそう」と思ってもらえる環境づくりが求められます。
最後に、自社ならではの魅力を打ち出すブランディング。たとえば有名人のヘアメイクに関われるチャンスがあるなど、特別な体験を提供できることも強みになります。
このように、美容師採用には多面的なアプローチが欠かせません。次の章では、それぞれの戦略を具体的に見ていきましょう。
まずは「誰が採用活動の中心を担うか」という観点です。これまで多くの美容室では採用活動を本部が一括して担当していましたが、最近では店舗が主体となって採用に取り組むケースが増えています。その背景や具体例を見ていきましょう。
1. 店舗主導の採用体制へ
Ashでは本部一括採用から店舗主導の採用へ移行。学生との接点を店舗が直接持ち、サロン見学者数が前年比182.9%増。Z世代の情報収集スタイルに対応しています。
2. SNS活用による認知拡大
Z世代はInstagramを中心にサロンを探しています。美容学生は100%SNSを利用しており、以下のような活用が有効です:
- 採用専用アカウントを運用
- サロンの日常やスタッフ紹介を投稿
- ハッシュタグ活用による拡散力強化
3. 働きやすさの追求
- 柔軟な勤務体系(フレックス・時短)
- 福利厚生の見直し
- POSやIoT機器の導入で業務効率化
- SNS投稿や動画制作などへの手当導入
4. 採用と定着を両立する「人的資本経営」
- 採用段階で定着を意識したマッチング重視
- サロン体験やコミュニケーションの機会創出
- 採用しない基準を設けてミスマッチ防止
5. ブランド戦略と差別化
AshはK-POPアーティストとの連携をPRに活用し、他店との差別化に成功。美容学生にとって魅力的なキャリアパスを示しています。
休眠美容師・離職経験者へのアプローチ

美容師免許を持ちながらも、何らかの理由で業界から離れた「休眠美容師」は全体の57.4%にものぼります。彼らを採用対象と捉え直すことで、慢性的な人材不足に対する有効な打ち手となります。
なかでも出産や子育てを機に一度業界を離れた人材は、一定のスキルや経験をすでに持っているため、戦力化が早く、即戦力として活躍してもらえる可能性が高いです。こうした人材に再びサロンで働いてもらうには、「働きやすさ」を実感できる仕組みが不可欠です。
たとえば、子育て世代に向けた短時間勤務制度やシフトの柔軟性、土日休みの選択肢を設けることが検討されます。また、復職支援研修や技術フォローアップなど、「ブランクがあることへの不安」を取り除くサポート体制も整えるべきでしょう。
さらに、福利厚生の一環として保育費補助制度や時短勤務手当を導入することで、安心して復帰できる環境を整備する企業も増えています。ターゲットを新卒や若手に限定せず、経験者を含めた幅広い人材プールから採用につなげていく視点が、今後の採用戦略には欠かせません。
美容学生のニーズと入社後のギャップ

美容学生がサロンに就職した後に感じる「ギャップ」は、採用活動においても軽視できない重要な要素です。リクルートの調査によれば、美容師として働き始めてから3年以内に「もっと早く知っておきたかった」と感じることが多かった項目には、技術面だけでなく、経営や数字に関する視点も含まれていました。これは、学生時代に技術習得ばかりに注力していた結果、入社後に必要とされる実務的スキルとの間に差を感じるケースが多いことを示しています。
とくに「売上」や「生産性」など、経営的な視点を求められる場面では戸惑う若手美容師が多く、離職の引き金になることもあります。美容室経営においては、入社後の教育設計を見直し、技術指導とあわせて「売上のつくり方」や「顧客対応」「チームでの働き方」なども体系的に学べるようにすることが重要です。
また、学生との面談や見学時には、入社後に求められるスキルや働き方を丁寧に説明することで、期待値の調整を行い、定着率の向上にもつながります。サロン側と学生側の相互理解を深める採用設計が、ギャップのないスムーズなスタートに貢献します。
「入社後3年までに学びたかったこと」ランキング:
- 技術(49.3%)
- 経営知識(27.8%)
- 数字に関する意識(25.4%)
体系的に学ぶ場の不足が指摘されており、教育・研修制度の整備がカギとなります。
フリーランス・多様な働き方への対応

美容業界でも、正社員以外の多様な働き方が広がりを見せています。特に注目されているのが、フリーランス美容師や業務委託スタッフとの連携です。こうした働き方は、従来の雇用に比べて柔軟性が高く、働く側にとっても「自由に働きたい」「自分の時間を大切にしたい」というニーズに応えられる選択肢となっています。
一方、経営側にとっても、繁忙期に合わせて人員を調整できるというメリットがあります。たとえば、週に数日の稼働でも即戦力として活躍できる高スキルのフリーランス美容師を必要なタイミングで確保することで、顧客満足度を維持しつつ人件費を最適化することが可能です。
また、店舗を持たないフリーランス美容師がレンタルスペースを利用して施術を行うといったケースも増えており、こうした仕組みを導入することで、サロン経営にも新たな収益モデルをもたらす可能性があります。
さらに、業務委託契約やシェアサロン制度を活用することで、多様な人材との関係性を築きやすくなります。採用という枠組みにとらわれず、「共に働くパートナー」としての関係性を築く視点が、今後ますます求められるでしょう。
まとめ:2025年現在の美容師採用の方向性
今後の美容師採用は「採用」だけでなく「定着」「育成」「ブランディング」「デジタル活用」を一体で考える必要があります。
成功のカギ
- SNS発信を通じた採用広報
- 若手に支持される柔軟な勤務環境
- キャリアパスが明確な教育設計
- サロンごとの独自価値の発信
- 採用・定着を見据えた人的資本経営
これらを実践できる美容室が、今後も選ばれ続ける存在となるでしょう。
よくある質問(Q&A)
Q1. フリーランス美容師を受け入れる際の注意点は?
契約内容の明確化が重要です。労働者性を避けるため、業務範囲や報酬、設備の使用条件などを文書化しておきましょう。
Q2. SNS採用を始めるには、何から着手すればいい?
まずは採用専用アカウントを作成し、サロンの日常やスタッフの魅力を発信することから始めましょう。ハッシュタグを工夫してターゲットに届く投稿を意識してください。
Q3. 復職希望者への支援として効果的な施策は?
技術研修やシフトの柔軟化に加え、短時間勤務制度や子育て支援(保育費補助など)の導入が効果的です。「復帰しやすい」と感じてもらえる環境づくりがカギになります。
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