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ベースアップのデメリットとは?企業が抱える6つの落とし穴と対応策を解説

「うちの会社も賃上げしないと人が集まらないかも…」

最近は物価の上昇や人手不足の影響で、基本給を一律に引き上げる「ベースアップ」を検討する企業が増えています。メディアや経済団体も「賃上げ」を強く後押ししており、周囲の流れに合わせなければと焦る企業も少なくありません。

採用コンサルタント:大岩

確かに、ベースアップは従業員のモチベーション向上や人材の定着につながる面があります。しかしその一方で、経営上のリスクや制度上の混乱、採用・人材戦略への影響など、さまざまな“見えにくいデメリット”が存在することも事実です。

この記事では、経営者や人事の方に向けて、ベースアップの代表的なデメリットを6つの視点から整理し、実務上の注意点とあわせてわかりやすく解説します。意思決定の参考材料として、ぜひ最後までご覧ください。

ベースアップで人件費が毎年膨らむリスク

基本給を上げる=毎月の固定費が増える ということ。

賞与(ボーナス)と違って、ベースアップで上げたお給料は毎月・毎年払い続けなければなりません。業績がいいときならまだしも、売上が落ち込んでいるときにも同じ額を払う必要があるため、経営を圧迫してしまう可能性があります。

特に社員数が多い会社では影響が大きく、慎重な判断が求められます。

また、基本給を上げると、それに連動して社会保険料や退職金の積立額なども増えるため、見かけ以上に企業のコスト負担は大きくなります。

例えば、従業員が100人いて、月に1万円ずつベースアップしたとすると、年間で単純計算しても1,200万円の人件費増。ここに賞与や社会保険料の上昇分が加われば、実質的な負担はそれ以上になるケースもあります。

一度上げた基本給はよほどの事情がない限り下げるのが難しいため、「続けられるかどうか」という視点での判断が必要不可欠です。

長く続けるためには、売上アップや業務の効率化など、“原資の確保”が欠かせません。

ベースアップによる賃金制度・評価制度への影響

ベースアップは、すべての社員の基本給を一律に底上げする仕組み。

その結果、こんな問題が起きやすくなります。

  • 成果を出している人と、そうでない人の差が縮まってしまう
  • 評価制度のインセンティブ(やる気を引き出す仕組み)が機能しなくなる
  • 昇給のカーブ(年齢や年次に応じた昇給計画)が見直しに

特に、「がんばった人が報われる」仕組みを重視している企業にとっては大きなジレンマです。

公平さとメリハリのある制度設計がより一層重要になります。

中小企業にとってのベースアップの負担とは

大企業は内部留保や利益率に余裕がある場合が多いため、ベースアップしてもある程度は耐えられます。でも、中小企業ではちょっとした賃上げでも経営に大きな影響を及ぼすことがあります。

2025年の春闘でも、大企業を中心に高い賃上げ率が続いており、昨年(2024年)の平均5.58%に続く水準が話題となっています。一方で、中小企業はそこまで踏み切れず、人材流出のリスクが高まっているという調査もあります。

「うちはそこまで上げられない…」という現実とのギャップに苦しむ中小企業が増えています。

実際、ベースアップを実施するには「人件費の増加分をどうカバーするか」を明確にする必要がありますが、利益率が低い企業や価格競争の激しい業界では、その原資を捻出するのが難しいのが現実です。

また、賃上げを実施したとしても、それが新たな取引先や人材獲得に結びつかない場合、かえって財務リスクが高まるおそれもあります。

中には、「他社に合わせてやむなくベースアップを実施したが、資金繰りが苦しくなり、人員削減や設備投資の延期に追い込まれた」といった声も聞かれます。

中小企業にとってベースアップは、単なる賃上げではなく、企業の存続や今後の経営方針を左右する重大な決断であることを忘れてはなりません。

ベースアップとインフレの綱引き問題

物価が上がれば、従業員の生活も苦しくなり、当然「給料も上げてほしい」という声が強くなります。ただし、給料を上げてもそのコストを商品やサービスの価格に転嫁できなければ、会社の利益は減ってしまいます。

逆に、価格転嫁が進みすぎると物価がさらに上昇し、再び「賃上げを求める声」が強まり、悪循環に陥る可能性もあります。特に中小企業では、原材料費やエネルギーコストの高騰で余裕がなく、価格転嫁が難しいケースが多いのが実情です。

その結果、「インフレ対応のために給料は上げたいけど、上げられない」という板挟みに陥ってしまいます。

実際に、経営者の中には「賃上げをしたい気持ちはあるが、価格に反映できない現状では難しい」と悩む声も多く聞かれます。

賃上げとインフレの綱引きは、会社にとって非常に難しい判断です。無理をすれば経営悪化のリスクを高めますし、何もしなければ人材の流出にもつながりかねません。

ベースアップが人材戦略に与える長期的な影響

一度上げた基本給は、よほどのことがない限り下げられません。

そのため、景気が悪化したときでも固定費が重くのしかかり、柔軟に人件費を調整できなくなります。

さらに、毎年の予算の中で基本給維持に多くの費用を割く必要があるため、

  • 教育や研修への投資
  • 新しい人材の採用
  • 働きやすい環境づくり

といった“攻めの人材戦略”に使えるリソースが減ってしまうこともあります。

長期的には、ベースアップ以外の手段で「人材への還元」を考える必要があります。

ベースアップが採用活動と雇用維持に及ぼす影響

基本給を上げると、会社の魅力が高まって人が集まりやすくなる一方で、

  • 採用人数を絞らざるを得ない
  • 人件費がかさんで、結果的に雇用が維持できなくなる

といった矛盾も起こりやすくなります。

2024年には、「人手不足や人件費高騰が原因で倒産」というニュースも増えており、2025年もその傾向が続く懸念が広がっています。

ベースアップが新たな経営リスクを生むケースも出てきています。

採用と賃上げは“トレードオフ”になることが多いため、全体バランスを見て計画することが重要です。

まとめ:ベースアップのデメリットを理解し、戦略的に賃上げを進めよう

ベースアップには良い面もありますが、 その影響は会社の体力・制度・戦略にまで広がります。

単なる「給料アップ」ではなく、

  • 原資の確保
  • 制度の見直し
  • 採用とのバランス

など、全体を見渡したうえで戦略的に進めることが大切です。

無理のない形で社員の満足度を高め、かつ企業としても持続的に発展できる道を一緒に考えていきましょう。

ベースアップに関するよくある質問(Q&A)

Q1. ベースアップと定期昇給の違いは何ですか?

A. ベースアップは全社員の基本給を一律に引き上げるものです。一方、定期昇給は個々の年齢や勤続年数、評価などに基づいて毎年行われる昇給で、通常は賃金テーブルに沿って実施されます。

Q2. ベースアップの対象を一部の社員に限定することは可能ですか?

A. はい、可能です。ただし、その場合は社内の公平性や説明責任が重要になります。若手社員に限定する例もありますが、他の社員とのバランスや不満を招かない配慮が求められます。

Q3. ベースアップを実施したあとにやるべきことは?

A. 賃金水準の見直しに加え、人件費の増加に見合う生産性向上や業務効率化の取り組みが必要です。また、評価制度との整合性や昇給ルールの再構築も重要になります。

Q4. ベースアップの検討タイミングに最適な時期は?

A. 一般的には決算期前後や春闘のタイミングに合わせて検討されることが多いです。ただし、会社の財務状況や事業計画に合わせた独自のタイミングでの判断も有効です。 ベースアップには良い面もありますが、 その影響は会社の体力・制度・戦略にまで広がります。

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ABOUT ME
採用人事コンサルタント 大岩貴文
大手メディアの求人広告営業を10年経験した後、経営コンサルタント唯一の国家資格である中小企業診断士の資格を取得。採用人事に強いコンサルタントとして、採用支援、研修講師、経営改善などを中心に活動中。経済産業省認定経営革新等支援機関、福岡県商工会連合会エキスパートバンク登録専門家。

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