この記事でわかること
  • 製造業の人手不足が深刻な構造的原因(データつき)
  • 採用戦略を変えて人手不足を解消した5つのアプローチ
  • 実際に成果を出した中小製造業3社の支援事例
  • 派遣 vs 自社採用のコスト比較
  • よくある質問への回答(FAQ)

製造業の人手不足とは

製造業の人手不足とは、製造現場で必要な労働力が慢性的に不足している状態を指します。少子高齢化による労働人口の減少、若手の製造業離れ、熟練工の大量退職が重なり、中小製造業を中心に採用難が深刻化しています。

経済産業省「2022年版ものづくり白書」によると、製造業の有効求人倍率は約1.74倍(全業界平均1.27倍)。パーソル総合研究所の推計では、2030年には製造業だけで38万人の人手が不足するとされています。

はじめに

「求人を出しているのに、誰も応募してこない」——製造業を経営する方から、こうした声を毎月のように聞きます。

ただし、「時代のせい」で諦めるのは早い。採用の打ち手を変えることで人手不足を解消した中小製造業は確実に存在します。共通しているのは「もっと広く募集する」ではなく、「採用の入り口と伝え方を変えた」という点です。

この記事では、コクリエパートナーが実際に支援した製造業3社の事例をもとに、今日から実行できる5つの採用戦略を解説します。

製造業の人手不足が深刻な3つの構造的原因

原因① 労働人口の減少:20年で157万人が製造業から離れた

ものづくり白書によると、2002年から2021年の20年間で製造業の就業者数は1,202万人から1,045万人へ157万人減少しています。全産業の就業者は増えているのに、製造業だけが減っている状態です。

原因② 3Kイメージの固定化:若手が最初から候補に入れない

「きつい・汚い・危険」という製造業のイメージは、実態と乖離していても根強く残っています。発信しなければ誤解は解けません。

原因③ 情報発信力の格差:大手との差が広がる一方

今の20〜30代は仕事を探すとき、まずスマホで検索します。大手がIndeedや採用サイトに億単位の予算を投じる中、ハローワークの定型フォーマットに頼る中小製造業は「検討の土俵」に乗れていないことが多い。

採用戦略を変えて人手不足を解消した5つのアプローチ

製造業の人手不足を解消するために有効な採用戦略は、以下の5つです。

アプローチ①「誰でも歓迎」をやめると、欲しい人材だけが集まってくる

多くの中小製造業の求人票には「未経験歓迎・年齢不問・やる気がある方」と書いてあります。一見、門戸を広げているように見えますが、求職者からすると「誰に向けて書いているのかわからない」メッセージです。

「20〜30代の男性で、手を動かすことが好きで、長く働いてくれる人」という人物像を設定し、求人票・採用サイト・面接での質問をすべてその人物像に合わせて設計することが重要です。

「絞ると応募が減るのでは」という不安はよく聞きますが、実態は逆です。ターゲットが明確な求人は「自分のことだ」と刺さりやすく、応募の質と定着率が上がります。

支援事例:株式会社タダノエステック(車両製造・メンテナンス)

タダノエステックでは「誰を採りたいのか」を経営者・現場リーダーと徹底的に言語化するところから支援を開始。採りたい人物像を設定し直した結果、次世代リーダー候補となる人材の採用に成功しています。

株式会社タダノエステック 株式会社タダノエステックは、東証プライム市場上場の株式会社タダノの100%子会社として、高所作業車の製造を中心に、クレーンの再生やリニ...

アプローチ②「条件の羅列」から「働く姿が見える言葉」に変えると、応募の質が変わる

採用広報とは、求職者に「この会社で働いたらどんな毎日になるか」を伝える活動です。給与・勤務時間といった条件情報だけでなく、職場の雰囲気・先輩社員の人柄・仕事の手応えといった「空気感」を伝えることが応募率向上の鍵になります。

採用広報は予算をかけなくても始められます。社員インタビューをスマホで撮影してホームページに載せる、仕事の様子をSNSで発信する——小さな一歩が、求職者の「この会社、ちゃんと見てみよう」という気持ちを引き出します。

支援事例:有限会社カネクラ加工(家具・自動車部品製造)

長年派遣社員に頼っていたカネクラ加工は、採用広報を刷新。「うちの会社で働くとどうなるか」を現場の言葉で伝えるコンテンツを整備した結果、派遣依存から自社採用へのシフトに成功し、技術の内製化が進んでいます。

有限会社カネクラ加工
有限会社カネクラ加工 人手不足に直面したとき、多くの企業はまず派遣で対応します。それは短期的には合理的な判断ですがそれが常態化すると、組織の中核を担う自社社...

アプローチ③ 応募の入り口を増やすと、これまで出会えなかった人材に届く

ハローワークは無料で使える有効なツールですが、20〜30代の若手は「まずネットで調べる」層が多く、ハローワーク単独では若手へのリーチに限界があります。

すべての媒体に出稿する必要はありません。ターゲットが使っている場所に絞って出すこと、そして「応募→面接」という一本道だけでなく「体験→納得→採用」という入り口を設計することが有効です。

支援事例:東和機電工業株式会社(トンネル型枠製造)

ハローワーク中心で応募がほとんど来なかった東和機電工業に、スポットワーカーを活用した「体験型採用」を設計。取り組み開始から約2ヶ月で10名が現場を体験し、1名の長期採用に成功しています。

東和機電工業株式会社 東和機電工業株式会社は、全国でも珍しいトンネル工事に使用される型枠の製造を手がける企業です。インフラ整備に欠かせない製品を扱っており、...
「ハローワークで応募ゼロ」の地方工場が、3ヶ月で若手を採用するための3つの転換点ハローワークに求人を出しても応募が来ない地方の製造業へ。原因は媒体ではなく採用設計にあります。採用目的の明確化・求人票のメッセージ化・入り口の多様化という3つの転換点と、実際に若手採用に成功した製造業3社の事例を解説します。...

アプローチ④ 派遣コストを「見える化」すると、自社採用への投資判断が変わる

「派遣でなんとか回っているから、自社採用はあとでいい」——この判断は短期的には合理的に見えます。しかし数字で見ると、判断が変わります。

派遣継続 vs 自社採用投資:コスト・資産性の比較

比較項目派遣継続(3年)自社採用に投資
費用概算約864万円(月24万×36ヶ月)採用コスト50〜100万円+定着支援
技術の蓄積社内に残らない社内に蓄積される
契約終了リスク常にあるなし
採用コストの性質毎年発生する「費用」一度の「投資」
3年後の会社の状態人材依存が続く自社の戦力が育っている

※派遣単価:時給1,500円×月160時間=月24万円で試算

派遣コストは毎年かかる「費用」です。一方で自社採用は一度の「投資」であり、採用した人材が定着すれば長期にわたって会社の資産になります。採用した人材の在籍期間中の貢献(LTV)で考え直すと、投資対効果の見え方が根本から変わります。

アプローチ⑤ 離職の本当の理由を知ると、採用コストが自然に下がっていく

採用に力を入れる前に問うべきことがあります。「今いる社員が、なぜ辞めるのか」です。

離職率が高い職場に採用コストを投じ続けても、穴の空いたバケツに水を注ぐようなものです。まず既存社員にヒアリングし、離職の本当の理由を把握することが出発点です。多くの場合、辞める理由は「給与が低い」ではなく「将来が見えない」「評価が不透明」といった非金銭的な要因です。

中小製造業が「わかっていても動けない」理由と突破口

ここまで読んで「そうは言っても、うちでは難しい」と感じた方も多いはずです。その感覚は正直だと思います。

「給与を上げたのに、それでも応募が来ない」という理不尽

支援の現場でよく聞く言葉があります。「給与を上げた。それでも来ない。もう何をすればいいのかわからない」。

この悩みは理不尽に感じて当然です。給与は確かに重要な条件です。ただ、求職者が応募を決める前のプロセスを考えると、給与を上げるだけでは届かない理由が見えてきます。

求職者は応募する前に「この会社を知る」「興味を持つ」「信頼できると判断する」というステップを踏んでいます。給与はその最後の判断材料に過ぎません。そもそも「知られていない」「興味を持たれていない」段階では、給与の数字は目に入らないのです。

給与を上げても応募が来ない会社に共通しているのは、「条件を良くすること」に力を入れているが、「その条件を知ってもらう仕組み」が整っていないという状態です。発信の問題であり、設計の問題です。給与のせいでも、会社のせいでもありません。

そしてもう一つの壁が、時間とノウハウの不足です。採用担当が現場と兼務で動けない、何から手をつければいいかわからない、やっても効果が出るまでに時間がかかる——この3つが重なることで改善が止まります。

コクリエパートナーが支援した3社に共通していたのは「全部一気にやろうとしなかった」ことです。一点を変えたら、連鎖的に変わっていった——それが実態です。

採用の専門家と伴走するとどう変わるか

採用コンサルタントと伴走することで得られるのは主に3点です。現状診断の速さ(問題の所在を短期間で特定できる)、再現性(実績のある打ち手を自社の文脈に合わせて実行できる)、継続する仕組み(途中で止まらずに動き続けられる)。

コクリエパートナーが支援した3社はいずれも、「採用の入り口を変えたら結果が変わった」という共通点を持っています。

よくある質問(FAQ)

Q. 製造業の人手不足はいつまで続くのか?

A. パーソル総合研究所の推計によると、製造業の人手不足は2030年時点で38万人規模に達する見込みです。少子高齢化の進行を考えると、構造的な問題として長期にわたって続くと見られています。各社が採用・定着・省力化の対策を講じることが不可欠です。

Q. 中小製造業が採用を改善するとき、最初に取り組むべきことは何か?

A. 最初に取り組むべきは「採りたい人物像の言語化」です。ターゲットが曖昧なまま求人票を書いても誰の心にも刺さりません。「どんな人に来てほしいのか」を経営者と現場リーダーで言語化することが、採用改善のすべての起点になります。

Q. ハローワークだけで若手採用はできないのか?

A. ハローワーク単独での若手採用は年々難しくなっています。20〜30代の若手はGoogleやIndeed、SNSで情報を収集してから応募を検討するため、ハローワークだけでは「検討の土俵」に乗れないことが多い。ハローワークを活用しつつ、Indeedや採用サイト・SNS発信を組み合わせることが現実的な対策です。

Q. 採用コンサルに依頼する費用はどのくらいかかるか?

A. 採用コンサルの費用は支援内容・期間・会社によって大きく異なります。コクリエパートナーでは初回相談を無料で承っています。まず現状の課題をお聞かせいただいた上で、最適な支援内容をご提案します。

まとめ:製造業の人手不足は「採用の入り口を変える」ことで解消できる

製造業の人手不足を解消するための5つのアプローチをまとめます。

① 「誰でも歓迎」をやめる——採りたい人物像を言語化し、求人・面接設計をそろえる ② 「条件の羅列」をやめる——働く姿が見えるメッセージに変える ③ 入り口を増やす——ハローワーク一本から、複数チャネル・体験型採用へ ④ 派遣コストを見える化する——長期目線で自社採用への投資を判断する ⑤ 離職の理由を知る——採用より先に「辞めない職場」の土台をつくる

いずれも大きな予算や特別なノウハウが必要な話ではありません。現状を正確に把握し、一点から変えていくことが出発点です。

コクリエパートナーでは製造業の採用課題について初回相談を無料で承っています。「どこから手をつければいいかわからない」という方は、まず現状のヒアリングからお気軽にご相談ください。

「ハローワークで応募ゼロ」の地方工場が、3ヶ月で若手を採用するための3つの転換点ハローワークに求人を出しても応募が来ない地方の製造業へ。原因は媒体ではなく採用設計にあります。採用目的の明確化・求人票のメッセージ化・入り口の多様化という3つの転換点と、実際に若手採用に成功した製造業3社の事例を解説します。...

ABOUT ME
採用人事コンサルタント 大岩貴文
求人広告の営業として10年間、中小企業の採用現場を見続けてきました。「採用の問題は、経営の問題」と確信し、中小企業診断士(経営コンサルタント唯一の国家資格)を取得。今は採用戦略・人材育成・経営改善を手がけるコンサルタントとして活動しています。「いい人が来ない」「採っても辞めてしまう」——そんなお悩み、ぜひご相談ください。経済産業省認定経営革新等支援機関 / 中小企業基盤整備機構経営アドバイザー