CHRO(最高人事責任者)とは、会社の未来を左右する重要なポジションです。経営戦略を支える人事戦略を作り上げ、実行する役割を担い、CEOやCFOと肩を並べて経営の舵取りに関わります。組織の成長や企業文化の形成を通じて、会社全体の競争力を引き上げる要となる存在です。
事業が成長して、規模が大きくなるとどうしても人と組織の問題が発生して成長を阻害してしまうことがあります。そんな時に経営者と対等なポジションで問題解決にあたるのがCHROです。なんかかっこいいですね!
この記事では、そんなCHROとはどんな役割なのか、どんな仕事なのかについて解説します。どうぞ、最後までお付き合いください。
では、早速内容に入っていきましょう!
CHROの役割
CHROの役割とは具体的に何をすることなのでしょうか?その仕事は人や組織に関すること全般に広がりますが、特に重要なポイントを以下に説明していきます。
- 経営戦略に沿った人事戦略の作成と実行 CHROは会社の目標を達成するために、人事の観点から具体的な計画を立てて進めていきます。
- 会社の文化作り ビジョンや理念を社員に浸透させて、魅力ある会社文化を育てます。
- 人材育成と配置 優秀な人材を育てて、適切な場所に配置し、会社の成長を支援します。
- 経営会議への参加 経営陣の一員として、会社全体の課題を一緒に解決していきます。
- 人事評価制度の見直し 公平で分かりやすい評価制度を整えて、社員のやる気を引き出します。
CHROと人事部長の違い
国内の企業では、CHROがいる会社はまだ少ないのが現状です。一方で、人事部長がいる会社は比較的多いのではないでしょうか。この2つのポジションにはどのような違いがあるのか、詳しく見ていきましょう。
役職 | 役割 |
---|---|
CHRO | 経営戦略を支える人事戦略を統括 |
人事部長 | 人事部門の運営と経営の方針の実行 |
CHROは会社全体を見渡し、経営戦略に基づいた人事施策を主導する立場です。一方で、人事部長は主に自部門内の業務運営や経営方針に沿った実務を管理する役割を担っています。これにより、CHROは経営陣の一員として戦略的な視点で動き、人事部長は部門内の現場運営を重視するという違いがあります。
CHROに必要なスキル
CHROに求められるスキルについて詳しく見ていきましょう。CHROは人事の専門知識だけでなく、経営に関わる広範なスキルが必要です。特に、会社全体を見渡しながら経営戦略と人事戦略を結びつける力が求められます。
- 経営知識と人事の専門知識 CHROは、経営と人事の両方の知識を活かして仕事を進めます。
- 戦略を立てる力 会社の将来を考えた計画を作るスキルが求められます。
- マネジメント能力 人事全体をまとめて動かす力が必要です。
- 問題解決力とコミュニケーション力 経営陣や現場としっかり連携しながら課題を解決していきます。
- 調整力 経営陣と社員の間に立ち、双方の意見をまとめる役割も果たします。
CHROの必要性
これまでCHROの役割やスキルについてお伝えしてきましたが、本当にCHROは企業にとって必要な存在なのでしょうか?ここでは、CHROがなぜ企業に欠かせないのか、その理由を詳しく解説します。
- 労働力人口の減少 日本では少子高齢化が急速に進んでおり、働き手の数が減少しています。企業にとって、優秀な人材をどのように確保し、定着させるかが大きな課題です。特に、採用だけでなく、既存社員のスキル向上や多様な働き方の導入を通じて、労働力を効率的に活用する工夫が求められています。これに対応するためには、長期的な視点での人事戦略が不可欠です。
- 経営と人事戦略の連動 経営の目標を達成するためには、人事戦略と経営戦略が密接に連携している必要があります。例えば、新規事業の立ち上げにはそれを支える人材の確保やスキル向上が欠かせません。人事が経営の方向性を理解し、それに基づいて採用計画や教育制度を整備することで、目標達成に向けた基盤を作ります。また、社員一人ひとりの力を最大限に引き出す組織作りも、この連動によって可能となります。
- 時代の変化への対応 現代社会では、多様性を尊重した働き方がますます重要視されています。例えば、性別や国籍、ライフスタイルの違いを受け入れた柔軟な職場環境の整備が求められています。また、リモートワークの普及により、物理的なオフィスに縛られない働き方が一般的になりつつあります。これに対応するためには、ITインフラの整備や、リモート環境でも効果的にコミュニケーションを図る仕組みが不可欠です。さらに、時代のニーズに合った人事制度の見直しや、社員が安心して働ける環境づくりを進めることで、企業は持続的な成長を実現できるのです。
CHROの課題と重要性
CHROと同様にCFO(最高財務責任者)という役職を耳にしたことがある方も多いでしょう。では、CHROは他の経営ポジションと比べて、どのような独自の特徴を持っているのでしょうか。ここでは、CHROが直面する特有の課題と、その重要性について詳しく解説します。
- 企業ごとに異なる対応が必要 CHROは、企業ごとに異なる人事課題に対して柔軟な対応が求められる点で、CFOとは大きく異なります。例えば、CFOの業務は財務知識を基盤とし、比較的共通の手法を適用しやすいと言えます。一方で、CHROの業務は人や組織を扱うため、その企業の文化や価値観、経営方針に応じたカスタマイズが必要です。また、同じ業界であっても、従業員の特性や組織構造が異なるため、他社で成功した人事施策をそのまま適用するのは難しい場合が多いです。このように、CHROには企業独自のニーズに対応するための深い理解と柔軟性が不可欠です。
- 成果が出るまで時間がかかる 人や組織の変革は、短期的な施策では実現しにくいのが現実です。例えば、新しい企業文化を根付かせるには、従業員全体にビジョンを浸透させ、行動変容を促す必要があります。また、人材育成では、スキルアップやキャリア形成に時間を要するため、結果が見えるまでには数年を要することが多いです。さらに、こうした変革は、経営層の継続的なサポートや、従業員の意識改革も必要となるため、一歩ずつ着実に進める努力が求められます。
- 成果が見えにくい 人の成長ややる気を測るのは、財務指標のように簡単ではありません。例えば、新しいスキルを身につけた社員がどれだけ会社に貢献できるか、また組織全体のモチベーションがどれだけ生産性向上に寄与するかを具体的に示すのは難しいです。さらに、個人の成長は目に見えにくい上、長期間にわたるフォローアップが必要な場合が多いです。このため、定性的な評価方法や社員との定期的なコミュニケーションを取り入れることで、成長や成果を間接的に把握する工夫が求められます。
CHROを育てる必要性
日本の多くの企業では、安定志向の人事が一般的で、改革型のCHROがほとんど存在しないのが現状です。しかし、グローバル競争が激化する中で、企業が持続的に成長するためには、経営視点と人事視点の両方を持つCHROの育成が急務です。特に、労働力人口の減少や多様な働き方への対応が求められる中で、従来の人事部門の役割を超えて、戦略的に人材を活用できるリーダーが必要とされています。さらに、CHROは経営陣と現場をつなぐ橋渡し役として、企業の方向性を明確にし、社員の意欲を引き出す重要な存在となります。
まとめ
CHROは、会社の未来を形作る大切な役割を担っています。人と組織をしっかりとつなぎ、経営戦略を実現するための土台を作る存在です。CHROがしっかりと機能することで、企業はただ成長するだけでなく、時代の変化に対応した競争力を持つ組織に進化していくことができます。これからの日本企業が持続可能な成長を実現するためには、CHROの役割を見直し、その育成を本格的に進める必要があると言えるでしょう。