リファラル採用は、社員の家族や友人、知人などの人脈を活用した採用手法です。低コストかつ信頼できる人材を採用できる点が優れており最近注目を集めています。しかし、そうしたメリットもある反面で採用の運用を誠実に設計しないと、トラブルになって後悔するケースもあります。
よく縁故採用と同じと認識されていますが、縁故は選考を行わず入社する前提で話を進めるのに対して、リファラルは選考を行い不採用となることもあるという点が違いますね!
せっかくリファラル採用を行うのであればうまくデメリットを抑えて、メリットを最大化させたいですよね!そんな方のためにこの記事では、リファラル採用に伴う問題を事前に防ぐための注意点を解説します。
リファラル採用のメリットとデメリット
リファラル採用の基本知識
冒頭にお伝えしましたがリファラル採用は、社員が知人や友人を会社に紹介することで人材を確保する方法です。まずは、メリットとデメリットについてみていきましょう!
リファラル採用のメリット
- 採用コストの削減
リファラル採用では求人広告の費用が削減されるため、コスト効率が非常に高いです。求人広告のタイプやプランにもよりますが大手中途サイトに掲載するとなると50万円前後の費用がかかります。それに比べると社員紹介手当を払う設計にしたとしてもかなり削減できるのではないでしょうか。 - マッチング率の向上
紹介してくれる社員が会社文化や仕事内容を理解しているため、候補者と企業のマッチングが向上します。これにより、採用後の定着率が高まります。応募する前にどんな仕事内容か、職場環境なのかをわかってくれているというのは選考する側もとっても楽ですよね。 - 信頼性の高い候補者確保
社員が推薦する候補者は、一般的な応募者よりも信頼性が高い場合が多いです。全く知らない人よりも以前から知っている人だと安心しますよね。特に、業務に必要なスキルや価値観の共有がしやすい点がメリットです。 - 社員のモチベーション向上
リファラル採用に成功すると、推薦した社員自身のモチベーションが向上します。わざわざ紹介する、ということは一緒に働きたいと思える人だからです。結果として、職場全体の士気が高まる効果も期待できます。 - 迅速な採用プロセス
既存社員が推薦することで、候補者への説明や適性確認がスムーズに行え、採用プロセス全体が迅速になります。
リファラル採用のデメリット
- 候補者の偏り
リファラル採用は社員の知人や友人を中心に候補者が集まるため、候補者が限定的になりやすいです。このため、多様性が欠けるリスクがあります。 - 人間関係の悪化リスク
紹介してくれたは良いものの、不採用になった場合に候補者が推薦者との関係に影響を及ぼす可能性があります。これにより、職場内の人間関係が悪化するリスクが生じます。 - 適切な評価の困難さ
知人や友人というつながりに基づくため、候補者のスキルや適性を客観的に評価することが難しくなる場合があります。 - 法律違反の可能性
紹介料の設定や運用が労働基準法や職業安定法に抵触する可能性があり、適切な管理が必要です。 - 依存度の増加
リファラル採用に依存しすぎると、他の採用手法を活用する機会が減り、人材確保の幅が狭まる可能性があります。
次に、リファラル採用の注意点についてみてきましょう!
リファラル採用における注意点
トラブルを避けるための事前確認
リファラル採用を成功させるためには、トラブルを未然に防ぐことが重要です。以下に具体的な対策を挙げ、解説します。
- 社員にとって可視化された採用プロセス
リファラル採用では、社員が候補者を推薦する際、どのようなステップを踏むのか明確にする必要があります。採用プロセスが不透明だと、推薦する社員が不安を感じ、積極的な推薦が行われなくなる可能性があります。 - 選考基準の明確化
候補者がどのような基準で選考されるのかを社員全体に共有しましょう。選考基準が不明確な場合、推薦された候補者が不採用となった際に誤解や不満が生じるリスクがあります。 - 関係者間の情報共有
人事部門や推薦者との間で、候補者の選考状況や進捗を適切に共有することが重要です。これにより、推薦者も安心してプロセスに関与することができます。
明確なルール設定の重要性
リファラル採用を円滑に進めるためには、明確なルールを設定することが不可欠です。ルールが不明確である場合、以下のような問題が発生する可能性があります。
- 社員の混乱
推薦方法や選考プロセスについての詳細が不足していると、社員が推薦をためらう原因となります。これにより、リファラル採用の活用率が低下する可能性があります。 - トラブルの発生
推薦者や候補者との間で誤解が生じることで、信頼関係が損なわれる可能性があります。例えば、推薦者が期待した報酬が支払われなかった場合、不満を抱くことがあります。 - 公平性の欠如
明確な基準がない場合、選考が不公平に見られることがあります。これにより、社員間で不満が生じる可能性があります。
これらの問題を防ぐためには、以下の取り組みが必要です:
- 明文化されたルールの作成:推薦の流れ、報酬の条件、選考基準を文書化し、全社員に共有します。
- 社員への周知と説明:ルールを社内で周知し、必要に応じて説明会を実施します。
- 定期的な見直し:運用状況を確認し、必要に応じてルールを更新します。
リファラル採用を成功させるための配慮
リファラル採用を成功させるためには、以下のような配慮が必要です:
- 候補者の個人情報保護
候補者の個人情報が不必要に拡散されないよう、厳格な管理を徹底しましょう。推薦者以外の社員が不必要に候補者情報にアクセスできないように、システムや手続きを明確に設定することが重要です。 - 推薦者と候補者の関係性の考慮
推薦者と候補者が親密な関係である場合、不採用や選考過程での対応が推薦者との信頼関係に影響を与えないよう、透明性のあるプロセスを構築する必要があります。 - 選考の公平性の確保
リファラル採用だからといって特別扱いをせず、他の採用方法と同じ基準で候補者を評価しましょう。これにより、不公平感を防ぎ、職場全体の信頼感を維持することができます。 - 社員への適切な説明と教育
リファラル採用の意義や手続きについて社員に十分に説明し、正しい方法で候補者を推薦してもらえるよう教育を行うことが重要です。 - 推薦者へのフィードバック
候補者の選考結果や進捗について、推薦者へ適切にフィードバックを行いましょう。これにより、推薦者が安心してプロセスに関与できる環境を整えます。
これらの配慮を実施することで、社員が安心してリファラル採用に参加できる環境を整えることができます。次は制度設計についてお伝えします。
リファラル採用の制度設計
リファラル採用の成功には、制度設計が非常に重要です。以下に、制度設計を行う際の具体的な要素と注意点を詳しく解説します。
報酬制度の仕組み
報酬制度は社員のモチベーションに直結します。リファラル採用では、推薦者に適切な報酬を提供することで、社員の積極性を引き出すことが可能です。例えば、以下のような報酬形態を検討すると良いでしょう。
- 段階的報酬:候補者が面接に進んだ段階、採用が決定した段階、一定期間勤務した段階ごとに報酬を支払う。
- 非金銭的報酬:金銭以外の報酬として、特別休暇や福利厚生ポイントを付与する。
このように、報酬制度を多様化することで、社員がより積極的にリファラル採用に参加するようになります。
インセンティブの効果的な設定
インセンティブは、制度が機能するための鍵です。以下のポイントに注意して設計することが重要です。
- 公平性の確保:全社員が同じ基準でインセンティブを得られるように設計する。
- 成果に基づく支給:単なる推薦ではなく、実際に採用に結びついた場合にインセンティブを与えることで、質の高い候補者の推薦を促す。
- チームベースのインセンティブ:部門単位での成果を評価し、チーム全体に報酬を支給する方法も有効です。
職業安定法に抵触するリスクを理解
労働基準法と職業安定法には、リファラル採用の報酬制度に関連する重要な規定があります。これらの法律を適切に理解し、運用することがトラブルを防ぐ鍵となります。
労働基準法では、「何人も法律に基づいて許される場合のほか、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない」とされています。この規定に基づき、社員が業務の一環としてリファラル活動を行い、報酬を受け取る場合には、適切な許可が必要となる可能性があります。特に、以下のようなケースに注意が必要です:
- 繰り返し行われる紹介活動:社員が反復的に紹介を行い、利益を得ている場合、法律上の「業として」の定義に該当するリスクがあります。
- 紹介料の不透明性:報酬額や支払い条件が明確でない場合、違法行為とみなされる可能性があります。
また、職業安定法では、社員に対する報酬の支払いに関しても制限があります。この法律に基づき、労働者の募集を行う社員に対し、報酬を支払う場合は、その内容が賃金や給料に準じたものである必要があります。この点を無視すると、法的リスクが発生する可能性があります。
リファラル採用を適切に運用するためには、以下のポイントを押さえておきましょう:
- 法的要件の確認:労働基準法や職業安定法に基づくガイドラインを遵守し、必要に応じて専門家の助言を受ける。
- 明確な報酬ポリシーの策定:報酬額や条件を文書化し、社員に周知する。
- 透明性の確保:採用プロセス全体を透明にし、社員が安心して紹介活動に参加できる環境を整える。
これらの対策を講じることで、法律違反のリスクを最小限に抑えつつ、効果的なリファラル採用を実現することができます。
法的リスクを避けるためのポイント
リファラル採用における法的リスクを回避するためには、以下の2点が重要です。
1. 就業規則や賃金規程への明記
- 人材紹介を社員の業務の一部として位置づけ、紹介業務だけを目的とした報酬ではないことを規定します。
- 社員が人材を紹介することを正式な制度として社内規程化し、報酬額も具体的に記載しておきます。
2. インセンティブの適切な設定
- 報酬が高額すぎると、許可や届け出なしに人材紹介業を行ったと見なされるリスクがあります。
- 専門資格を有するプロの人材紹介会社への報酬額よりも低い水準に抑えることで、法的問題を回避できます。
これらのポイントを遵守することで、リファラル採用が法律に抵触するリスクを最小限に抑えることが可能です。
リファラル採用の実施手順
リファラル採用のための準備
リファラル採用を成功させるためには、十分な準備が必要です。以下のポイントを押さえることで、スムーズな運用を実現できます。
社内説明会とトレーニングの実施
社員がリファラル採用の意義や具体的な手続きについて理解を深めるために、説明会やトレーニングを行いましょう。具体的には以下の内容をカバーする必要があります:
- 候補者推薦の具体的な手順
- 報酬制度の仕組み
- 候補者選考における評価基準
特に新制度の場合、最初の段階で社員が不安を感じないよう、十分な説明を行うことが重要です。
採用プロセスの明確化と文書化
推薦から採用決定までのプロセスを明確にし、社員がいつでも参照できるようにドキュメント化します。例えば、以下の内容を詳細に記載しましょう:
- 推薦を受けた後の選考フロー
- 採用が決定した際の報酬支払いスケジュール
これにより、社員の混乱を防ぎ、推薦活動を円滑に進めることができます。
専用ツールやシステムの導入
リファラル採用を効率化するためには、専用ツールの導入が効果的です。例えば、以下の機能を備えたツールを検討すると良いでしょう:
- 候補者情報の管理
- 推薦状況や選考進捗の共有
- 推薦フォームの簡便化
これらのツールを活用することで、社員の作業負担を軽減し、推薦活動を促進できます。
具体的な実施プロセス
リファラル採用を効果的に進めるには、計画的かつ段階的なアプローチが必要です。以下に具体的なステップを挙げ、実践的なポイントを解説します。
1. 候補者紹介の促進
社員にリファラル採用の目的やメリットを再認識してもらうため、以下のような取り組みを行います:
- 社内キャンペーンの実施:報酬制度や採用成功事例を強調したキャンペーンを定期的に実施します。
- 情報の定期配信:社内ニュースやメール配信を活用し、リファラル採用の重要性や最新の進捗状況を共有します。
2. データ活用と進捗管理
採用プロセスの効果を最大化するため、データを積極的に活用します:
- 実績の可視化:推薦者数、選考通過率、採用率などを部門ごとに分析し、どの段階で改善が必要かを把握します。
- 改善のための施策:データ分析に基づいて報酬制度や選考プロセスを適宜見直します。
3. 候補者を惹きつけるメッセージの提供
社員が候補者に送る推薦メッセージをサポートすることで、候補者の興味を引き付けます:
- テンプレートの提供:企業の魅力や強みを効果的に伝えるメッセージ例を共有します。
- 具体的な内容の提案:職場環境や仕事のやりがいなど、候補者に響く具体的なポイントを盛り込んだメッセージを推奨します。
4. 広範な社内協力の確保
リファラル採用の成功には、社員全体の協力が不可欠です。以下の方法で協力体制を強化します:
- 専任チームの設置:リファラル採用をサポートする専任チームを編成し、推薦者や候補者とのコミュニケーションを円滑にします。
- 社内成功事例の共有:過去の成功事例を社内SNSや会議で紹介し、モチベーションを高めます。たとえば、「〇〇さんが推薦した△△さんが即戦力として活躍中」といった具体例が効果的です。
- 表彰制度の導入:優れた推薦活動を行った社員を表彰し、特別報酬や休暇を提供することで、全体の士気を向上させます。
これらのプロセスを通じて、リファラル採用を効果的に運用し、質の高い人材を継続的に採用できる体制を整えましょう。
不採用リスクとその対策
ミスマッチを防ぐための工夫
候補者と企業のミスマッチを防ぐためには、事前の準備と明確な基準が重要です。まず、企業が求める人材像を具体化し、候補者の価値観やスキルとの適合度を測る仕組みを整えます。例えば、採用プロセスの中で価値観テストやスキルチェックを導入することで、応募者が会社に合うかどうかをより正確に判断できます。
また、面接の際には具体的な職務内容や職場環境について十分に説明し、候補者の期待と現実のギャップをなくす努力も欠かせません。
候補者選定の基準
候補者選定では、評価基準を明確に設定し、全社員が同じ解釈で選考を進められるようにします。具体的には、以下のようなポイントを含む情報プロファイルを作成します:
- 必要なスキルや経験
- 企業文化や価値観との適合性
- チームワークやコミュニケーション能力
これらの基準を選考の各ステップで確認し、主観的な判断を避けるように努めましょう。また、選考基準は定期的に見直し、時代や業界の変化に対応することも大切です。
不採用時の適切なフォローアップ
不採用となった候補者に対しても、丁寧な対応を心掛けることが重要です。以下のような施策を取り入れることで、企業イメージの向上や将来的な採用機会の創出につなげることができます:
- フィードバックの提供
選考結果の理由や改善点を具体的に伝え、候補者の今後の成長に役立ててもらいます。 - 関係維持の工夫
候補者に対して感謝の意を伝えるとともに、将来的なポジションが空いた際に再度応募を検討してもらえるよう、適切な関係を維持します。 - ポジティブな印象の残し方
最終選考まで進んだ候補者には特別なお礼状を送るなど、企業としての誠実さを示すことで、候補者からの信頼を得ることが可能です。
これらの取り組みによって、不採用が与えるネガティブな影響を最小限に抑えつつ、企業の評判を高めることができます。
成功事例から学ぶリファラル採用
企業や社員の成功体験
リファラル採用を通じて優秀な人材を採用した企業の成功事例をいくつかご紹介します。
- 株式会社クレディセゾン:変革人材の採用を目的にリファラル採用を導入。内定式での案内やリファラル採用の意義を伝えるコンテンツ作成など、社員への周知を徹底しました。その結果、多くの紹介があり、内定者の意識が向上しました。
- Ubie株式会社:全メンバーが採用にコミットする体制でリファラル採用を推進。技術スキルよりもカルチャーフィットを重視し、社員一人ひとりがnoteで採用広報を行うなど、現場の声を起点とした採用活動を展開。その結果、内定者の7割以上がリファラル経由となりました。
- 株式会社メルカリ:リファラル採用を強化するため、社員向けの説明会やワークショップを開催。また、紹介者へのインセンティブ制度を整備し、社員の積極的な関与を促進しました。これにより、質の高い人材の獲得に成功しています。
リファラル採用による長期的な影響
リファラル採用は短期的な採用だけでなく、長期的な視点で企業文化やエンゲージメント向上に寄与します。例えば、社員が積極的に採用活動に参加することで、企業内での信頼感や結束力が高まり、組織全体のパフォーマンス向上にもつながります。また、社員が推薦することで職場環境の良さが伝わりやすく、定着率の向上が期待できます。
具体的な改善策とケーススタディ
失敗を活かして成功につなげた事例をもとに、リファラル採用を改善する方法をご紹介します。
- 報酬制度の見直し:インセンティブを段階的に設定し、採用後の定着期間に応じて追加報酬を支払う仕組みを導入。
- 社員向けトレーニングプログラム:推薦方法や選考プロセスについて社員が理解を深められるよう、定期的なトレーニングを実施。
- ツール活用の強化:採用プロセス全体を可視化できる専用ツールを導入し、推薦状況や進捗を社員と共有。
これらの事例から学び、貴社のリファラル採用に活かしていきましょう。
まとめ
リファラル採用は、適切に運用することで企業に大きなメリットをもたらします。一方で、事前に注意点を押さえ、制度設計や運用方法を慎重に整えることが重要です。社員の協力とエンゲージメントを高めることで、採用活動全体がより円滑に進みます。この記事で紹介したポイントを参考に、貴社に合ったリファラル採用の実現を目指してください。