高校新卒採用では、応募前職場見学が高校生の応募先選びに大きな影響を与えます。しかし、企業の採用担当者からは、次のような相談を受けることが少なくありません。
- 職場見学では何をすればよいのか
- 会社説明では何を話せばよいのか
- 高校生に質問してもよいのか
- どの社員に対応してもらえばよいのか
- どのくらいの時間で実施すればよいのか
職場見学を成功させるために大切なのは、当日の説明を上手に行うことだけではありません。まず「高校生に何を知ってもらい、見学後にどのような状態になってほしいか」を決め、その目的に合わせて職場見学全体を設計することが重要です。
株式会社コクリエパートナーでは、高校新卒採用を支援する中で、応募前職場見学の企画やプログラムづくり、時間割の作成、対応する社員への事前共有などをご支援しています。
動画でも解説しておりますので合わせてご覧ください。
この記事では、実際の支援経験をもとに、企業が準備しておきたいこと、当日の進め方、対応時の注意点を解説します。
応募前職場見学とは?
応募前職場見学とは、高校生が応募先を決める前に企業を訪問し、仕事内容や職場環境への理解を深めるための機会です。
求人票や会社案内だけでは分からない、
- どのような場所で働くのか
- 社員がどのように仕事をしているのか
- 職場にはどのような雰囲気があるのか
- 入社後にどのような仕事を担当するのか
- 安全面や教育体制はどうなっているのか
といった情報を実際に見て、聞いて、感じてもらうことが目的です。
企業にとっては、「この会社で働く自分」を高校生に具体的にイメージしてもらうための大切な機会になります。
応募前職場見学は採用選考ではありません
応募前職場見学で最も重要なことは、採用選考ではないという点です。
高校生の態度や受け答えを評価したり、応募意思を確認したりする場ではありません。
労働局でも、応募前職場見学では本人への質問やアンケートなど、事前選考につながる行為を行わないよう示されています。
また、見学への参加・不参加を採用選考の判断材料にすることもできません。
採用担当者だけでなく、当日対応する社員全員が、この考え方を理解しておくことが重要です。
なお、応募前職場見学の運用や様式は地域によって異なる場合があります。実施前には管轄のハローワークや高校へ確認しましょう。
職場見学は「何を感じてもらいたいか」から設計する
職場見学を企画するとき、最初に会社説明資料を作る必要はありません。
まず考えたいのは、
高校生に何を感じてもらいたいか
です。
例えば、
- 働くイメージを持ってもらう
- 社員や会社の雰囲気を知ってもらう
- 未経験でも成長できることを伝える
- 安全に働ける会社だと感じてもらう
- 求人票だけでは伝わらない魅力を知ってもらう
などです。
目的が決まれば、
- 何を説明するか
- どこを見学するか
- 誰に話してもらうか
も自然と決まってきます。
会社説明、現場見学、座談会を単に並べるのではなく、一つのプログラムとして設計することが重要です。
企業側が事前に準備する5つのこと
1.学校と実施条件を確認する
学校から職場見学の相談があったら、まず実施条件を確認します。
例えば、
- 実施日時
- 参加人数
- 引率者の有無
- 来社方法
- 緊急時の連絡先
- 当日の服装
- 必要な保護具
- 写真撮影の可否
- 地域や学校で必要な書類
などです。
企業と高校生が直接調整するのではなく、原則として学校を通じて進めます。
2.まず時間割を作る
支援先で職場見学を企画するときは、会社説明資料よりも先に時間割を作成しています。
まず開始時刻と終了時刻を決め、その間を
- 会社説明
- 現場見学
- 社員との交流
- 質疑応答
などに分けます。
さらに、
「この時間では何を伝えるのか」
「高校生に何を感じてもらいたいのか」
まで整理すると、職場見学全体に一貫性が生まれます。
3.見せる場所と説明内容を決める
現場見学を行う場合は、事前に見学ルートを歩いて確認します。
例えば、
- 危険な場所はないか
- 説明しやすい場所か
- 音が大きすぎないか
- 個人情報や機密情報が見えないか
- 雨天時の代替案はあるか
などです。
仕事内容だけでなく、仕事のやりがいや大変さも伝えることで、入社後のミスマッチを防ぎやすくなります。
4.対応する社員を決める
採用担当者だけではなく、
- 高校新卒で入社した若手社員
- 現場社員
- 事務スタッフ
- 管理職
など、さまざまな立場の社員と話せる機会を作ることをおすすめします。
高校生は「会社」を知りたいだけではありません。
「どんな人と働くのか」を知りたいと思っています。
5.対応ルールを社内で共有する
職場見学当日に関わる社員には、事前にルールを共有します。
特に重要なのが、
職場見学は選考ではない
という共通認識です。
支援先でも、職場見学の前には担当する社員と読み合わせを行っています。
また、高校生にも最初に、
「今日は選考ではありません。答えにくい質問があれば、無理に答えなくても大丈夫です。」
と伝えるよう提案しています。
企業だけでなく、高校生も安心して参加できる環境づくりが大切です。
高校新卒の職場見学はどう進める?約3時間のモデルスケジュール
支援先では、午前10時頃から職場見学を開始し、会社説明や現場見学、社員との交流を行った後、昼食を一緒に取り、13時頃に終了する約3時間程度のプログラムをご提案することがあります。
| 時間 | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 10:00~10:10 | 受付・あいさつ・当日の説明 | 緊張を和らげ、見学の流れを理解してもらう |
| 10:10~10:35 | 会社・仕事内容の説明 | 会社と仕事の全体像を伝える |
| 10:35~11:35 | 現場見学 | 実際の仕事や職場環境を見てもらう |
| 11:35~12:00 | 若手社員との座談会・質疑応答 | 入社後の働き方をイメージしてもらう |
| 12:00~13:00 | 昼食・交流 | リラックスした雰囲気で社員と交流する |
| 13:00頃 | 解散 | – |
この時間割は一例です。
仕事内容や移動時間に合わせて調整してください。
重要なのは時間ではなく、それぞれの時間に目的を持たせることです。
昼食も職場見学の大切なプログラム
支援先では、昼食も職場見学の一部として設計することをご提案しています。
会社説明や現場見学では緊張していた高校生も、食事になると自然と会話が増えてきます。
社員も普段に近い雰囲気で話ができるため、
- 職場の人間関係
- 社員同士の距離感
- 会社の空気感
が伝わりやすくなります。
また、高校生も、
- 飲み物を取り分ける
- 箸や調味料を取る
- 社員との何気ない会話を楽しむ
など、自然なコミュニケーションが生まれます。
これは評価するためではなく、お互いを知るための時間です。
昼食は高級なお店である必要はありません。
近くの定食屋でも、お弁当でも十分です。
「何が食べたい?」と希望を聞いてみるのも、緊張をほぐすきっかけになります。
会社説明は「読む」のではなく写真・動画で見せる
会社説明でよくあるのが、スライドに書かれた文章をそのまま読み上げてしまうケースです。
高校生は会社や仕事についての前提知識が少ないため、専門用語や抽象的な説明だけでは、働く姿をイメージしにくいものです。
そこで、できるだけ視覚的に伝えます。
例えば、
- 社員が働いている写真
- 仕事の流れが分かる動画
- 実際の製品や施工事例
- 入社後の一日のスケジュール
- 若手社員の成長事例
- 研修や資格取得の流れ
- 使用する道具や制服
などがあります。
「幅広い事業を展開しています」と説明するより、実際の仕事の写真や製品を見てもらう方が具体的に伝わります。
会社の歴史や売上の説明に時間を使いすぎず、高校生が入社した場合の仕事内容や一日の流れに多くの時間を使うとよいでしょう。
現場がある会社は実際の仕事を見てもらう
製造業、建設業、物流業、介護・福祉など、実際の仕事を見学できる会社では、できる限り現場へ案内することをおすすめします。
現場では、会社説明だけでは伝わらない次のような情報があります。
- 社員同士のコミュニケーション
- 安全への取り組み
- 仕事のスピード感
- 整理整頓の状況
- 職場の音や温度
- 社員の表情や雰囲気
見栄えのよい場所だけではなく、可能な範囲で実際に配属される可能性がある場所を見てもらうことが重要です。
安全上の理由などで現場へ入れない場合は、動画や写真、実物の道具などで補足する方法もあります。
若手社員との座談会は担当者選びが重要
座談会は、高校生が入社後の働き方を具体的にイメージするための重要な時間です。
担当者は単に年齢が近ければよいわけではありません。
例えば、
- 高校生の立場に合わせて話せる
- 仕事の良い面と大変な面の両方を伝えられる
- 面倒見がよく、質問に丁寧に答えられる
- 会社から伝えてほしい内容を理解している
といった社員が向いています。
高校新卒で入社した社員がいる場合は、
- 入社前に不安だったこと
- 入社を決めた理由
- 入社後に感じたこと
- 最初に苦労した仕事
- 先輩からどのような指導を受けたか
- できるようになった仕事
- 現在感じているやりがい
などを話してもらうと、高校生にとって参考になります。
事前に話すテーマを共有しておくと、社員ごとの説明内容のばらつきも抑えられます。
応募前職場見学では高校生への質問やアンケートを行わない
応募前職場見学は採用選考ではないため、企業側から本人への質問やアンケート等は行わないようにします。
例えば、次のような内容を確認するのは避ける必要があります。
- 当社へ応募する予定はありますか
- 当社の志望順位は何番目ですか
- 他にどの会社を見学しましたか
- 成績や学校生活について教えてください
- 家族は応募についてどう言っていますか
- 家庭環境について教えてください
雑談のつもりでも、本人の情報を把握したり、応募意向を確認したりすると、事前選考につながるおそれがあります。
見学者から会社や仕事について質問された場合は、できる限り回答します。
また、安全衛生やセキュリティ上必要な確認など、職場見学を安全に実施するための対応は別です。
当社では、見学の冒頭で、
「今日は選考ではありません。皆さんを評価する場ではないので、気になることがあれば質問してください。」
といった説明を入れることもあります。
高校生が緊張して質問できない場合に備えて、企業側から「よく聞かれる質問」を紹介する方法もあります。
職場見学後に保護者や学校へ伝わる資料を用意する
高校生は職場見学が終わった後、学校の先生や保護者とも相談しながら応募先を検討します。
見学から帰宅すると、保護者から「どうだった?」と聞かれることもあるでしょう。
しかし、見学で聞いた内容を高校生だけですべて説明するのは簡単ではありません。
そこで、学校や家庭でも会社について確認できる資料を持ち帰ってもらいます。
例えば、
- 写真を使った会社紹介
- 仕事内容と一日の流れ
- 若手社員の紹介
- 教育・研修制度
- 福利厚生や休日に関する案内
- 公式サイトや採用動画へのQRコード
- 求人票と内容が一致した会社資料
- 経営者からのメッセージ
などがあります。
製造業であれば、自社で作っている製品やちょっとした制作物など、高校生が帰宅後に会社について話すきっかけになるものを持ち帰ってもらう方法も考えられます。
大切なのは、過度な宣伝をすることではありません。
高校生だけでなく、保護者や進路指導の先生にも、どのような会社なのかを正確に理解してもらえる状態をつくることです。
職場見学でよくある失敗と改善策
職場見学では、少し準備するだけで防げる失敗も少なくありません。
| よくある失敗 | 改善策 |
| 社長や採用担当者が一方的に話す | 現場見学や社員との対話を増やす |
| スライドを読み上げるだけになる | 写真、動画、製品、実例を使う |
| 会社の良い面しか説明しない | 仕事の大変さや必要な努力も伝える |
| 実際の配属先を見せていない | 可能な範囲で働く場所を見てもらう |
| 若手社員と話す時間がない | 短時間でも座談会を設ける |
| 社員が高校生へ質問してしまう | 事前に職場見学のルールを共有する |
| 担当者によって説明が変わる | 共通の時間割と進行表を作る |
| 見学後に内容が残らない | 学校や家庭で確認できる資料を渡す |
職場見学は、担当者の話術よりも事前準備が重要です。
応募前職場見学の実施前チェックリスト
職場見学の前日までに、次の項目を確認しておきましょう。
- 見学の目的が社内で共有されている
- 学校と日時、人数、引率者などを確認している
- 当日の時間割と担当者が決まっている
- 見学ルートの安全確認が完了している
- 現場社員に見学者の来社を知らせている
- 対応社員に「職場見学は選考ではない」と説明している
- 高校生への質問やアンケートを予定していない
- 写真や動画などの説明素材を用意している
- 若手社員などとの交流時間を設けている
- 高校生からの質問に答える時間がある
- 配布資料の内容が求人票と一致している
- 緊急時の対応方法が決まっている
- 地域や学校で定められた職場見学の手続きを確認している
応募前職場見学に関するよくある質問
高校生に質問してもよいですか?
応募前職場見学は採用選考ではないため、本人への質問やアンケート等は行わないようにします。
高校生から会社や仕事内容について質問された場合は、できる限り丁寧に回答しましょう。
安全衛生やセキュリティ上必要な確認については、職場見学を安全に実施するために必要な範囲で対応します。
引率の先生は必ず来ますか?
必ず引率されるとは限りません。
地域や高校、職場見学の実施方法によって異なるため、事前に高校へ確認してください。
職場見学に参加しなかった生徒を不利にしてもよいですか?
職場見学への参加・不参加を理由に、採用選考で不利益な扱いをすることは避ける必要があります。
労働局でも、日程などの事情で参加できなかった生徒について、参加しなかったことを理由に採用選考結果を左右しないよう求めています。
職場見学は何分くらい実施すればよいですか?
全国一律の適切な時間が決まっているわけではありません。
仕事内容や現場への移動時間、安全面などを考慮し、必要な内容を無理なく伝えられる時間を設定しましょう。
60~90分程度でも十分な会社もあれば、複数の現場を見るためにさらに時間が必要な会社もあります。
時間の長さより、それぞれの時間に何を伝えるかを明確にすることが重要です。
まとめ|職場見学は当日の対応より事前設計が重要
高校新卒採用の応募前職場見学は、単に会社を案内するイベントではありません。
高校生が実際の仕事内容や職場環境を知り、自分が働く姿を具体的にイメージするための機会です。
そのためには、
- 見学の目的を明確にする
- 最初に時間割と進行表を作る
- 写真や動画、実物を使って説明する
- 実際の仕事や職場を見てもらう
- 若手社員など複数の社員と接する機会をつくる
- 対応社員全員に職場見学のルールを共有する
- 高校生への質問やアンケートを行わない
- 学校や家庭でも確認できる資料を用意する
といった準備が重要です。
また、職場見学で会社について知るのは高校生だけではありません。
高校生が持ち帰った情報を通じて、保護者や進路指導の先生も会社について理解していきます。
だからこそ、その場の対応だけではなく、誰に何を伝えるのかまで考えて職場見学を設計することが大切です。
当社では、高校新卒採用の求人票作成や学校訪問だけでなく、応募前職場見学の企画、時間割の作成、会社説明の整理、対応社員への事前説明なども支援しています。
現在の職場見学を見直したい、高校生に自社の仕事や魅力がうまく伝わっていないと感じている企業様は、高校新卒採用全体の進め方も含めてご相談ください。
参考情報
- 厚生労働省「公正な採用選考の基本」
- 福岡労働局「新規学校卒業者の募集・採用手続きについて」
- 福岡労働局「令和8年度 応募・推薦前に行う職場見学及び企業独自の会社説明会に関する申合せ」
- 大阪労働局「令和9年3月新規高等学校卒業予定者の『応募前職場見学会』『応募・推薦の取扱い』について」
※応募前職場見学の具体的な運用や様式は地域によって異なる場合があります。実施前に管轄のハローワークや高校の最新情報をご確認ください。

