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法改正で進む女性活躍推進|中小企業が今すべき対応とは?

近年、労働市場での多様性(ダイバーシティ)推進が注目されています。特に、女性が活躍しやすい環境を整えることは、企業経営の重要な課題としてクローズアップされています。2025年の法改正で、多くの中小企業も「女性活躍推進法」への対応が求められるように法改正案が進められています。

採用コンサルタント:大岩

女性の登用はかなり進んできたと思いますが、実際には管理職比率は伸び悩み、賃金も改善していません。まだまだ課題が残っているのが現状です。

この記事では、女性活躍推進法の概要や背景、企業が今すぐ取り組むべき具体策についてわかりやすく解説します。

そもそも、女性活躍推進法とは

女性活躍推進法を初めて聞く方のために、そもそもこの法律がなぜ作られたのか、その背景から簡単に説明します。日本では長年、女性の社会進出が課題とされてきました。特に、少子高齢化による労働力不足が深刻化する中で、女性が職場で活躍できる環境を整えることが重要視されるようになったのです。

また、国際的にも日本の女性管理職比率や男女賃金格差が問題視されており、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中でも日本の順位は低いままでした。こうした背景を受け、政府は2016年に女性活躍推進法を制定し、企業に具体的な行動を求めるようになりました。この法律により、企業は以下の取り組みを行うことが求められています。

  • 女性の採用や登用についての目標設定
  • 行動計画の策定と公表
  • 職場環境の改善に向けた具体策の実行

しかし、企業に行動計画を義務付けたものの、女性管理職の数は依然として少ないのが現状です。長時間労働や、家事・育児の負担が女性に偏ることがその大きな要因とされています。女性活躍推進法が施行されてから10年が経過した今、政府は法改正を通じて女性登用のさらなる拡大を目指しています。

なぜ今、女性活躍推進が注目されるのか

政府が法改正を目指す背景には、女性の登用が想定通りには進んでいない現状があります。たとえば、フルタイムで働く女性の賃金は男性を100とした場合、2022年時点で78.7にとどまり、法が成立した2015年の74.3からわずかな改善しか見られていません。国際的に見ても、経済協力開発機構(OECD)の平均は88.6であり、日本の低さが際立っています。

また、世界経済フォーラム(WEF)が発表した2024年版の「ジェンダー・ギャップ指数」では、日本は146カ国中118位という低順位にとどまっています。特に、男女の賃金差や管理職比率など、経済分野での遅れが顕著です。

政府は賃金格差の主因を女性管理職の少なさと捉えています。2023年における管理職に占める女性の割合は14.6%であり、法成立前の2014年の11.3%からの改善幅は限定的です。一方で、内閣府のデータによれば、米国やフランスでは約4割、ドイツでも約3割を女性が占めており、日本との差が明確です。

これらの状況を踏まえ、政府は女性活躍を推進するためのさらなる法改正が必要だと判断しています。

法改正のポイントと影響

改正内容の概要

  • 対象企業の拡大:従業員101人以上の企業にも適用されることで、約1.7万社から5.1万社へと対象が広がります。これにより、これまで法対応が求められていなかった中小企業も取り組む必要が出てきました。
  • 賃金格差の公開:企業は男女間の賃金格差データを分析し、公表することが義務化されます。これにより、従業員や求職者に対して透明性を高め、格差の是正を促進します。
  • 女性管理職比率の目標設定:これまでは選択肢の一つだった女性管理職比率の開示が必須となり、経営層における多様性の推進が求められます。
  • 女性の健康課題への対応:行動計画に女性特有の健康課題を含めるよう促されます。生理休暇の取得のしやすさや健康支援制度の整備が期待されています。

中小企業が直面する変化

中小企業は今回の法改正によって、これまで対応が求められていなかった新たな課題に直面しています。

  • 自社のデータ分析の必要性:多くの中小企業では、これまで賃金や昇進状況の詳細なデータを収集・分析していなかったため、新たにシステムを導入したり、既存の情報を整理する作業が必要になります。このプロセスは、経営資源の負担となる場合もあるため、優先順位を明確にすることが重要です。
  • キャリアアップ支援体制の整備:女性社員の管理職登用を進めるためには、研修プログラムやメンター制度の導入が必要です。しかし、これらの施策を実行するためには、予算の確保や社内リソースの見直しが必要になります。
  • 柔軟な働き方への対応:フレックスタイムやリモートワークといった柔軟な働き方の導入には、技術的なインフラの整備や労務管理の見直しが伴います。特に、小規模な企業では、これが大きな負担となることが考えられます。
  • 社内意識の変革:多くの中小企業では、トップダウンでの指導だけではなく、従業員一人ひとりが女性活躍の意義を理解し、協力することが必要です。そのため、社員研修や意識改革に向けた取り組みが欠かせません。

これらの課題に対応することで、中小企業は新たな成長の機会をつかむことができます。同時に、女性活躍推進を通じて、企業の社会的評価や競争力も向上させることが可能です。

中小企業が今すべき具体的アクション

中小企業が女性活躍推進に取り組むためには、具体的かつ実行可能なステップを明確にする必要があります。これにより、企業全体での効果的な対応が可能となります。

賃金格差を見える化する

賃金格差の見える化は、企業の透明性を高めるだけでなく、信頼を得るための重要なプロセスです。

  • データの収集と分析:従業員の給与や昇進状況を詳細に調査し、男女間での格差を明確化します。どの部門や役職で問題が発生しているかを特定することが重要です。
  • 結果の共有:分析結果を社内外で公開することで、信頼性を高めるとともに、改善に向けた具体的な目標を設定します。
  • 具体的な改善策の策定:格差が見られる分野については、昇給や昇進の基準を見直し、公平性を確保します。

女性管理職を増やす工夫

女性管理職の割合を増やすためには、企業内でのキャリア形成支援と具体的な取り組みが求められます。

  • 管理職育成プログラムの実施:女性社員を対象にリーダーシップ研修を実施し、管理職への道をサポートします。研修には実務的なスキルやマネジメント能力を含めると効果的です。
  • ロールモデルの活用:既に活躍している女性管理職の成功事例を紹介し、他の社員が目指すべきモデルを示します。これにより、キャリアアップへのモチベーションが高まります。
  • 採用戦略の見直し:管理職候補として外部から優秀な女性人材を積極的に採用することで、内部の人材と組み合わせて多様性を促進します。

働きやすい環境を整える

女性が働き続けやすい職場環境を整備することで、離職率の低下や採用競争力の向上が期待できます。

  • 柔軟な働き方の導入:フレックスタイムやリモートワークの導入は、特に子育て世代や介護を担う女性社員にとって重要です。これにより、仕事と生活のバランスを取りやすくなります。
  • 育児・介護支援の強化:企業内での託児所設置や育児・介護休暇の取得を推進することで、社員が家庭と仕事の両立をしやすくなります。
  • 職場文化の改善:意見を自由に言える環境や、多様性を尊重する文化を醸成することで、女性社員の働きやすさが向上します。

継続的な改善プロセス

女性活躍推進の取り組みは、一度で完了するものではなく、継続的な改善が求められます。

  • KPIの設定と測定:女性管理職比率や賃金格差の縮小など、具体的な目標を設定し、定期的に進捗を測定します。
  • 定期的な評価と見直し:施策の効果を検証し、必要に応じて改善策を導入することで、取り組みを進化させていきます。

これらの具体的なアクションを実行することで、中小企業は女性活躍推進を進めるだけでなく、企業全体の競争力を高めることができます。

支援事例と専門家の視点

女性活躍推進の専門家としての意見

私自身、福岡県で女性活躍推進を支援してきた中で、多くの企業が直面する課題を目の当たりにしてきました。例えば、勤務条件の柔軟性や職場環境の改善が進んでいない企業が多い現状があります。

ある中小企業では、フレックスタイムを導入し、育児中の女性社員が復職しやすい体制を整えた結果、離職率が大幅に改善しました。こうした成功事例は、他の企業にも参考になるでしょう。

経営者と社員の意識改革がカギ

女性が働き続けられる職場を作るには、経営者だけでなく社員全体の協力が欠かせません。小さな取り組みから始めても、社員全体で取り組む姿勢が、結果的に大きな変化をもたらします。

まとめとこれから

これまで女性活躍推進法のことをお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか。女性活躍推進法への対応は、企業にとって課題であると同時に成長のチャンスでもあると個人的には考えています。

現実的には課題が多いかと思いますが、地道に取り組むことで確実に人材確保が進むでしょう。まずはできることから始めて、女性が活躍できる環境を作り上げていきましょう。

ABOUT ME
採用人事コンサルタント 大岩貴文
大手メディアの求人広告営業を10年経験した後、経営コンサルタント唯一の国家資格である中小企業診断士の資格を取得。採用人事に強いコンサルタントとして、採用支援、研修講師、経営改善などを中心に活動中。経済産業省認定経営革新等支援機関、福岡県商工会連合会エキスパートバンク登録専門家。

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