募集・広報

タクシー免許が最短3日に?ドライバー採用のハードルが変わる制度改正とは

タクシー業界では、ドライバーの高齢化と若年層の就職離れが進み、人手不足がますます深刻になっています。特に地方では移動手段が限られており、交通インフラの維持は地域の大きな課題です。

採用コンサルタント:大岩

そんな中、警察庁は2025年9月を目処に、タクシー運転手に必要な「普通2種免許」の教習時間を3割削減するという大きな制度改正を発表しました。

本記事では、この制度改正が企業の採用活動に与える影響と、その活かし方について解説します。

教習時間が3割削減、最短3日で取得可能に【改正の概要】

これまで、普通2種免許の取得には合計40時限(学科19時限+技能21時限)が必要でした。しかし今回の改正では、学科は17時限、技能は12時限へと見直され、合計29時限に短縮。これにより、教習期間はこれまでの6日から最短3日へと大幅に短縮されます。

この制度変更は、2024年6月に政府が閣議決定した「規制改革実施計画」に基づいており、ドライバー不足に悩むタクシー業界を後押しするものです。特に、地方都市や過疎地域では公共交通機関の担い手が減少しており、地域住民の移動手段を確保する観点からも、制度の見直しが急務とされてきました。

また、今回の教習時間短縮は、警察庁による実証実験に基づいており、教習内容の見直しによって安全性や運転技能の習得に支障がないことが確認されています。たとえば、普通免許と重複する項目(運転姿勢や坂道走行など)は省略し、その分効率的なカリキュラムに再構成されています。

加えて、大型・中型2種免許でも教習時限の見直しが進んでおり、業界全体として運転手の確保を目的とした規制緩和が段階的に進行しています。今回の普通2種免許に関する見直しは、その中でも特に即効性が高く、企業の採用活動に直接的な影響を及ぼす改革として注目されています。

採用現場にどう影響する?人事担当者が押さえるべき3つのポイント

今回の制度改正は、単に教習時間が短縮されるという話にとどまりません。採用活動を行う企業にとっては、これまでリーチできなかった層へのアプローチが可能になる「チャンス」です。同時に、短期間での免許取得が可能になることで、これまで以上に”育成”の力が問われる時代になります。ここでは、人事担当者が特に注目すべきポイントを3つに絞って紹介します。

1. 採用ハードルの低下

これまで免許取得の時間とコストがネックだった層にも門戸が開かれ、より広い人材プールから採用が可能になります。未経験者や転職希望者もチャレンジしやすくなります。

2. 外国人採用の可能性拡大

2024年から2種免許の試験が20言語に対応。さらに地理試験の廃止により、言語や地理の壁が下がり、外国人採用がより現実的になります。

3. 社内研修の重要性が増す

教習時間が短くなることで、運転技術や接客スキルを補完する社内研修の充実が不可欠に。採用後の「育成力」が企業の競争力を左右します。

【事例紹介】規制緩和を追い風に変える企業の取り組み

東京都のタクシー会社「日の丸交通」では、外国人乗務員の採用に積極的に取り組んでいます。制度改正によって、これまで高かった免許取得のハードルが下がることで「人材の裾野が広がる」と期待を寄せています。

実際に同社では、外国人ドライバーの免許取得から乗務開始までをサポートする専用の研修カリキュラムを用意しており、日本語が得意でない人材でも理解しやすいよう、動画教材や視覚的な資料を多用しています。また、地理試験が廃止されたことにより、地理知識のインプットは社内研修にシフトし、実際の走行ルートやカーナビの活用法を中心に現場でのOJTを行っています。

さらに、採用後もメンター制度を導入し、先輩乗務員が定期的にフォローアップ。入社後の悩みや不安を早期にキャッチし、離職を防ぐ取り組みも強化されています。このように、制度改正を単なる追い風として受け取るだけでなく、それを活かすための企業努力が伴ってこそ、採用と定着の成果につながっているのです。

制度改正を活かす採用戦略とは?

この制度改正を活かすには、企業側も積極的な採用戦略を取ることが重要です。制度自体は“採用のチャンス”を広げるものですが、それを生かすためには、企業側が「受け皿」としての体制を整える必要があります。以下のような具体策を講じることで、より多くの人材にアプローチし、入社後の定着まで見据えた採用活動が可能になります。

  • タクシー免許取得支援制度の導入:免許取得にかかる費用負担を会社側が一部負担することで、求職者の心理的・経済的ハードルを下げられます。例えば「免許取得後に返済免除」や「勤務継続で補助額アップ」といった制度設計も有効です。
  • 求人広告でのアピール:「最短3日で免許取得可」「地理試験不要」「外国人歓迎」など、改正内容をしっかり盛り込んだ訴求がカギとなります。特にハローワークや求人サイトでは、タイトルと最初の数行が勝負です。
  • 外国人・若年層向けの採用強化:言語対応や文化理解を意識したコミュニケーション研修など、採用後のサポート体制も含めた発信が必要です。また、SNSなどを活用して若年層に刺さる情報発信も効果的です。
  • 自社研修の整備:免許取得後すぐに現場で活躍できるよう、走行シミュレーターや先輩との同乗研修を組み合わせた研修制度があると安心感につながります。安全運転や接客マナーの教育にも注力することで、利用者満足度の向上にもつながります。

このように、制度改正は「入口」を広げる力がありますが、「中身」が伴っていなければ人は定着しません。いかに企業として準備を整えられるかが、競争力の差を生み出します。

私の見解:採用コンサルタントとして感じる可能性と注意点

この改正は、中小企業にとってまさに採用のチャンスです。ただし、免許取得が簡略化された分、現場での育成が重要になります。求人段階で仕事内容や期待値を明確に伝えること、入社後にしっかりとフォローアップできる体制を整えることが、ミスマッチの防止につながります。タクシー業界に限らず、運転を伴う業務全般において、育成力のある企業が今後さらに選ばれる時代になるでしょう。

私自身、タクシー会社の採用支援をした経験がありますが、本当に「求人を出しても応募が来ない」現状に直面しました。Indeedやハローワークに掲載しても、閲覧数は一定あるものの、応募にはなかなかつながらない。ようやく応募が来ても、面接前に辞退されたり、連絡が取れなくなったりといったケースが続出しました。

現場の方からは「とにかくタクシーというだけで敬遠されている気がする」といった声もあり、タクシー業界に対するネガティブな先入観が強いことを痛感しました。高齢化、長時間労働のイメージ、収入の不安定さなど、実態とギャップがあるにもかかわらず、誤ったイメージが独り歩きしている部分もあります。

このような背景から、ただ制度が緩和されたからといって人が集まるわけではありません。むしろ、今まで以上に「働く魅力」「職場の安心感」「成長機会」などを丁寧に伝える必要があると強く感じました。

だからこそ、制度改正という“外的変化”を活かしつつ、企業側が“内的価値”──たとえば働きやすさ、研修の充実、安全面の配慮、地域に根ざしたやりがいなど──を積極的に発信していくことが不可欠です。免許が取りやすくなっても「その先にある仕事」の魅力を伝えられなければ、人は集まりません。いま求められているのは、単なる募集ではなく“共感を得る採用広報”です。

まとめ:タクシー免許制度の改正は人材戦略の転換点

今回の制度改正は、単に教習時間の短縮にとどまらず、企業の採用戦略を見直す大きな転換点となり得ます。人材の裾野が広がる中で、いかに優秀な人材を見つけ、早期に戦力化するかが問われる時代に突入しています。

特に注目すべきは、「免許取得支援制度」「多様な人材へのアプローチ」「育成体制の整備」の3つの柱です。これらをバランスよく設計・運用することで、採用後の定着率や業務パフォーマンスにも好影響を与えます。

  • 2025年9月より、普通2種免許の教習時間が大幅短縮
  • 地理試験の廃止、多言語対応などにより、採用対象が拡大
  • 採用戦略+育成戦略の両輪が成功のカギに
  • 今のうちから制度改正を見越した求人設計・研修体制の整備を

タクシー業界の未来を担う人材を確保するために、いま企業にできる準備を始めましょう。先手を打った企業こそが、これからの人材確保競争をリードしていくことになります。

よくある質問(Q&A)

Q. 今すぐ採用活動に活かせることは?
A. 制度改正の内容を踏まえて、求人票や採用ページの見直しを行いましょう。免許取得支援の制度や、社内研修制度の整備も効果的です。

Q. 教習が短くなると運転技術が心配では?
A. 警察庁の検証で、17時限の学科と12時限の技能で必要な基準に達するとされています。企業としては、入社後の教育・同乗研修で実務スキルをフォローする体制を整えることが求められます。

Q. 外国人を採用する場合、どんな配慮が必要ですか?
A. 言語対応はもちろん、文化的背景の理解や研修内容のビジュアル化、簡易な日本語での説明が有効です。社内での相談窓口を設けることも安心材料になります。

Q. 若年層にどうアプローチすればいいですか?
A. SNSや動画コンテンツでの情報発信が効果的です。また、「免許取得支援」「短期間で活躍できる」など若者が関心を持つ訴求ポイントを明確にすることが大切です。

Q. 教習費用の支援制度を導入する際の注意点は?
A. 支援制度を導入する際は、条件や返済免除の有無を明確にし、契約書などでトラブルを防ぎましょう。継続勤務を条件にするなど、制度設計に工夫を凝らすことで定着率向上にもつながります。

Q. 地理試験がなくなったことで接客への影響は?
A. 地理試験の廃止で地名の知識は問われなくなりましたが、カーナビの活用力やお客様対応力の強化が求められます。OJTで地元の特徴を学ばせることがカギとなります。

【無料】採用人事に役立つメルマガ配信中!

毎週火曜・金曜の11時30分ごろに最新情報をお届けしています。ブログでは書けない、ここだけの話や実践的な採用ノウハウも盛り込んでいます。

不要になった場合は、いつでも簡単に解除可能です。まずは気軽にご登録ください!

ABOUT ME
採用人事コンサルタント 大岩貴文
大手メディアの求人広告営業を10年経験した後、経営コンサルタント唯一の国家資格である中小企業診断士の資格を取得。採用人事に強いコンサルタントとして、採用支援、研修講師、経営改善などを中心に活動中。経済産業省認定経営革新等支援機関、福岡県商工会連合会エキスパートバンク登録専門家。

【無料プレゼント!採用活動でAIを活用しよう】

採用活動を効率化したい、AIが便利って聞いたけど、具体的にどうすれば良いの?

そんな疑問を解決するためのEbookを、無料でプレゼントしています!チャットGPTを使って採用戦略から実務まで効率化する具体的な方法を解説。さらに、欲しい回答を引き出すプロンプト集も収録しています。

AI活用のポイントを今すぐ知りたい方は、ぜひチェックしましょう!