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自爆営業の実態と問題点:企業はどう向き合うべきか

あなたは「自爆営業」という言葉を聞いたことがありますか?これは、企業の営業活動において、従業員が自己負担で自社の商品やサービスを購入し、売上を上げる行為を指します。特に、営業ノルマを達成できない社員が自腹での契約をする、もしくは強要される形で行われることが多く、”自爆契約”や”自腹契約”とも呼ばれることがあります。

採用コンサルタント:大岩

販売や営業を経験された方は、一度は頭をよぎったことがあるのではないでしょうか?今日はそんな自爆営業についての話題です。

このような行為は、一見すると売上を上げるための手段かもしれませんが、従業員に大きな負担を強いるため、多くの問題を引き起こす可能性があります。今回の記事では、この自爆営業について詳しくお伝えします。

自爆営業の原因とは?背景とその要因

自爆営業はなぜ発生するのでしょうか?従業員が自社の商品やサービスを自分で契約することは、大きな負担となる行為です。その背景には、次のような要因が存在します。

過度なノルマの設定

企業が現実的ではない過度なノルマを設定してしまうと、従業員はその達成が困難になり、自爆営業に追い込まれることがあります。達成できるように頑張ったけどダメだったから最後は自分で…という流れです。特に、具体的な戦略やサポートが欠如している場合、従業員は自己責任で結果を出さざるを得ない状況に陥りがちです。無理な目標は従業員の士気を下げるだけでなく、精神的・経済的な負担を増大させる原因にもなります。結果として、職場全体のパフォーマンスが低下し、離職率が上昇するなどの悪循環を招く可能性があります。

管理職からのプレッシャー

成果を重視するあまり、管理職が従業員に過度なプレッシャーをかけることも、自爆営業を招く要因の一つです。例えば、目標達成に必要なリソースの提供や、営業手法のサポートが欠けている場合、従業員は「どうしても結果を出さなければならない」という心理的負荷を強く感じることがあります。このような状況では、自腹で売上を作ることが最終的な手段として選ばれることが多く、結果として従業員は経済的負担や精神的ストレスを抱えることになります。また、こうした圧力は職場全体の士気低下や退職率の上昇を招く可能性があります。

社内文化の問題

「結果至上主義」や「売上第一主義」といった社内文化があると、従業員は無理をしてでもノルマを達成しようとする傾向が生まれます。特に、成果が重視され過ぎると、通常の手段での達成が難しい場合に、自爆営業が選択される可能性が高まります。このような社内のプレッシャーは「自分の責任で何とかしろ」というメッセージにつながり、自爆営業を助長するだけでなく、従業員の精神的なストレスを加重し、長期的には労働環境の悪化を導くことになりかねません。以上のような社内文化は悪循環を効き互いに互動的に強化する要因になりえるのです。

自爆営業に対する筆者の体験

私は、大手求人メディアの営業として働いていました。その中で、自爆営業の話を耳にすることがありました。例えば、求人広告を出しても応募が全くこなかった場合、営業担当者が責任を感じて自腹で広告料を払ってしまうケースです。私は実際に経験はありませんでしたが、新人研修の際にそのような事例が紹介されていたため、実際に行う人も少なくないのでしょう。

自分で提案した施策が結果につながらなかった時の不安やプレッシャーは、営業として避けられないものです。しかし、本来それは追加のフォローや次の提案でお客様に貢献することによって挽回するべきものです。自爆営業は一見責任感から来る行動に見えますが、実際には組織全体のサポート不足や、過度なプレッシャーが背景にあることが多いと思います。

経営者や人事担当者としては、社員が結果に対して適切に向き合い、健全な方法で業務に取り組めるような文化を築くことが重要です。

自爆営業の影響とは?従業員と企業への悪影響

では、自爆営業が発生すると、どのような問題が具体的に生じるのでしょうか?企業が目先の売上にとらわれるあまり従業員に負担を強いることは、単なる個人の問題にとどまらず、組織全体の健全な成長を妨げる可能性があります。ここでは、その問題点を詳しく見ていきましょう。

従業員の経済的負担

自爆営業は、従業員に大きな経済的負担を強いるため、家計に深刻な影響を与えることがあります。中には家族から借金をしなければならないケースも報告されています。

精神的ストレス

自爆営業のプレッシャーは従業員に多大な精神的ストレスを与えることがあります。過度なノルマが精神的な負担となり、最悪の場合、自殺に至ることもあるのです。

労働環境の悪化

自爆営業が横行する企業では、従業員のモチベーションが低下し、職場全体の労働環境が悪化することがあります。この結果、企業全体の生産性が低下するリスクもあります。

自爆営業の具体例

自爆営業は、単なる概念にとどまらず、実際に多くの企業で問題として発生しています。現場での具体的な事例を見ることで、この問題の深刻さをより理解できるでしょう。以下では、いくつかの実際の自爆営業の事例を紹介します。

農協(JA)

農協(JA)の職員が、共済の掛け金を自己負担するよう強要されるケースが実際に報告されています。例えば、特定のノルマを達成できなかった場合に、共済契約を自分で引き受けることが起きています。

自動車販売業界

ある自動車販売店では、社員が車両の値引き分を自腹で負担するケースが報告されています。

日本郵便

日本郵便では年賀状の販売ノルマを達成するため、従業員が自腹で年賀状を購入する事例があります。

アパレル業界

アパレル業界では、従業員が自社ブランドの制服や商品を自腹で購入するよう強要されるケースがあります。

コンビニエンスストア

コンビニエンスストアでは、季節商品(おせち、恵方巻き、クリスマスケーキなど)の購入を従業員に強制するケースが報告されています。

自爆営業を防止するために企業が取るべき対策

自爆営業は一時的な売上向上につながることがありますが、長期的には企業にとって大きなリスクを伴います。従業員が自腹で売上を補うことは、結果的に士気の低下や離職率の増加を招き、企業の成長を阻害する要因となるのです。そこで、企業が自爆営業を防ぐためには、以下のような対策が重要です。

透明性のあるノルマ設定

企業は、現実的で達成可能なノルマを設定することが大切です。無理のない目標設定は、従業員の負担を軽減するだけでなく、企業全体の生産性向上にもつながります。

コミュニケーションの強化

従業員とのコミュニケーションを強化し、現場の状況や意見を反映したノルマ設定を行うことが重要です。従業員の声を尊重することで、無理のない営業活動が可能になります。

パワハラ防止の徹底

企業は、パワハラスメント防止策を徹底し、違法行為の根絶に努める必要があります。具体的には、社内研修の実施や相談窓口の設置などが効果的です。

まとめ:自爆営業の防止が企業の健全な成長につながる

自爆営業は一時的に企業の売上を向上させることがありますが、従業員に過度な経済的・精神的負担を強いる深刻な問題行為です。例えば、2023年に報告された事例では、ある企業の従業員が月間ノルマを達成するために20万円以上の自腹購入を強いられた結果、家計が圧迫され生活に支障をきたしたケースがあります。このような行為は労働基準法やパワーハラスメント防止法に抵触するリスクが高く、長期的には離職率の上昇や企業全体の士気低下を招くことが指摘されています。

そのため、企業は透明性のある現実的なノルマ設定や、従業員が安心して働ける環境を整えることが重要です。具体的には、従業員の声を取り入れた目標設定、パワハラ防止策の徹底、健全な職場文化の構築が求められます。こうした取り組みを通じて従業員の負担を軽減することで、職場のモチベーション向上や企業全体の生産性向上につながるのです。

ABOUT ME
採用人事コンサルタント 大岩貴文
大手メディアの求人広告営業を10年経験した後、経営コンサルタント唯一の国家資格である中小企業診断士の資格を取得。採用人事に強いコンサルタントとして、採用支援、研修講師、経営改善などを中心に活動中。経済産業省認定経営革新等支援機関、福岡県商工会連合会エキスパートバンク登録専門家。

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