こんにちは。採用人事に強い中小企業診断士の大岩です。

採用活動を強化しているのに、なかなか楽にならない。そんな会社は少なくありません。求人を出して、面接をして、ようやく採用できても、数か月後に辞めてしまう。すると、また募集をかけて、現場は教え直しになり、管理職の負担も増えていきます。

こうした状態が続くと、採用はできているのに、人手不足が解消しない会社になります。特に今は、採用市場そのものが厳しくなっているため、「辞めたらまた採えばいい」とは考えにくい状況です。帝国データバンクによると、2025年の人手不足倒産は427件で過去最多、そのうち「従業員退職型」の倒産は124件で初めて100件を超えました。さらに、人手不足倒産の77.0%は従業員10人未満の小規模企業でした。

そこで今回は、採用と定着を別々に考える会社がなぜ苦しくなりやすいのか、その理由を整理します。あわせて、中小企業がまず見直したいポイントもお伝えします。

採用と定着を別々に考えると、なぜ苦しくなるのか

結論からいうと、採用できても定着しなければ、採用活動は何度もやり直しになるからです。

採用活動には、求人作成、媒体掲載、応募対応、面接、社内調整など、目に見える以上の工数がかかっています。そこに教育や引き継ぎまで加わると、1人の離職が与える影響はかなり大きくなります。特に中小企業では、採用担当が専任ではなく、現場責任者や経営者が兼ねていることも多いため、採用のやり直しがそのまま現場負荷につながりやすいです。

しかも、離職の影響は採用コストだけではありません。仕事を覚えた人が抜けることで、周囲の業務量が増え、教育担当の時間も奪われます。その結果、残った社員の負担が増え、さらに辞めやすくなる。こうした悪循環に入ると、採用と定着を別々に考えていては立て直しにくくなります。

いま採用と定着を一体で考えるべき背景

いま採用と定着を一体で考えるべきなのは、採用市場の厳しさと、離職ダメージの大きさが同時に進んでいるからです。

厚生労働省の2026年2月の一般職業紹介状況では、有効求人倍率は1.19倍、新規求人倍率は2.10倍でした。求人が求職者を上回る状況が続いており、企業側にとって採用しやすい環境とは言えません。

中途採用でも競争は強まっています。マイナビキャリアリサーチLabの調査では、2026年に中途採用に積極的な企業は91.1%、経験者採用に積極的な企業は74.2%でした。しかも、退職者がいた企業ほど経験者採用に積極的という傾向が出ています。つまり、離職が起きるほど、企業はさらに厳しい採用競争に入っていく構造です。

加えて、帝国データバンクの調査では、従業員退職型倒産は建設業、サービス業、製造業などで目立っています。人が辞めることが、そのまま納期遅延や受注減、外注費増加につながる業種ほど、採用と定着を分けて考える余裕はありません。

採用と定着がつながっている会社の特徴

採用と定着がつながっている会社には、いくつか共通点があります。

まず、入社前に仕事のリアルをきちんと伝えていることです。仕事内容の大変さや求める役割まで含めて共有できている会社は、入社後のギャップが小さくなります。きれいな面だけを見せるより、合う人に来てもらう発信ができているかが大切です。

次に、受け入れ体制や初期教育が整理されていることです。採用までは頑張っても、入社後は現場任せという会社は少なくありません。ただ、誰が何を教えるのか、最初の1週間・1か月・3か月で何を期待するのかが曖昧だと、本人も不安になります。定着しやすい会社は、入社後の流れまである程度見える化されています。

さらに、上司や現場任せにせず、仕組みで支えていることも重要です。フォロー面談の実施、役割の明確化、困りごとを拾う場づくりなど、属人的にしない工夫がある会社は安定しやすいです。

採用と定着を分断してしまう会社のよくある状態

逆に、採用と定着が分断している会社には、よくある状態があります。

ひとつは、求人票と入社後の実態にズレがあることです。たとえば、募集時には柔らかく見せていたのに、入社してみると求められる役割がかなり重い。あるいは、聞いていた働き方と実際の運用が違う。こうしたズレは、早期離職につながりやすいです。

ふたつ目は、採用担当と現場の認識がそろっていないことです。会社としてどんな人を求めているのか、どこまでを期待するのか、現場でどう育てるのか。このあたりが共有されていないと、採用時の説明と入社後の扱いにズレが出ます。

三つ目は、入社後フォローが属人化していることです。面倒見の良い上司がいる部署では定着するけれど、そうでない部署では続かない。これは個人の問題に見えて、実際には仕組みの問題です。

中小企業がまず見直したい3つのこと

では、何から見直すべきか。最初に確認したいのは次の3つです。

1. 採用時に何を約束し、何を伝えるか

最初に見直したいのは、採用時の伝え方です。仕事内容、期待する役割、評価の考え方、働き方、厳しさも含めて、どこまで伝えているかを整理します。採用は入社してもらうためだけではなく、合う人に来てもらうための活動でもあります。

2. 入社後3か月の受け入れ設計

次に、入社後3か月の流れを見直します。誰が教えるのか、何をいつまでに覚えてほしいのか、どのタイミングでフォローするのか。ここが曖昧だと、本人も現場も負担が増えます。全部を制度化しなくても、最低限の流れを決めておくだけで違います。

3. 離職理由を感覚ではなく言葉で整理する

最後に、辞めた理由を曖昧なままにしないことです。「最近の若い人は続かない」で終わらせると、改善につながりません。仕事内容のミスマッチなのか、教育体制なのか、人間関係なのか、期待値のズレなのか。離職理由を言葉にして整理することが、採用改善にもつながります。

まとめ

採用と定着を別々に考える会社が苦しくなりやすいのは、離職が採用活動のやり直しだけでなく、現場負荷、教育負担、売上機会の損失まで引き起こすからです。

いまは採用市場そのものが厳しく、採用競争も強まっています。その中で、「辞めたらまた採えばいい」は通用しにくくなっています。だからこそ、採用は入口、定着は出口と分けて考えるのではなく、一つの流れとして設計することが大切です。

採用を少しでもラクにしたいなら、求人票や媒体選びだけでなく、入社後に続く仕組みまで含めて見直してみてください。そこが整うと、採用の質も変わってきます。

採用活動は、試行錯誤しながら進めている会社も多いと思います。今回の内容が、少しでも整理の参考になれば嬉しいです。

FAQ

採用と定着はなぜ一緒に考えるべきですか?

採用できても早期離職が続けば、採用活動を何度もやり直すことになるからです。採用コストだけでなく、教育負担や現場の疲弊も増えるため、一体で考えた方が改善しやすくなります。

中小企業は採用と定着のどちらを優先すべきですか?

どちらか一方ではなく、まずは「採用時の伝え方」と「入社後の受け入れ」をつなげて考えるのがおすすめです。採用だけ強化しても、定着が弱ければ成果が積み上がりません。

採用しても辞める会社は何から見直せばいいですか?

採用時の説明内容、入社後3か月の受け入れ設計、離職理由の整理から見直すと進めやすいです。特に、求人票と実態のズレがないかは確認したいところです。

定着率を上げるには福利厚生を増やせばよいですか?

福利厚生も一つの要素ですが、それだけで解決するとは限りません。仕事内容の明確さ、教育体制、上司の関わり方、期待値のすり合わせなど、日々の運用も大きく影響します。

ABOUT ME
採用人事コンサルタント 大岩貴文
大手メディアの求人広告営業を10年経験した後、経営コンサルタント唯一の国家資格である中小企業診断士の資格を取得。採用人事に強いコンサルタントとして、採用支援、研修講師、経営改善などを中心に活動中。経済産業省認定経営革新等支援機関、中小企業基盤整備機構経営アドバイザー、福岡県商工会連合会エキスパートバンク登録専門家。