新人を育てるうえで、会社としてどのようなサポートが効果的なのでしょうか?多くの企業では、OJT(On-the-Job Training)を通じて人材育成を行なっていますが、昨今ではOJT担当に適さない人に新人を任せてしまったばっかりに早期退職につながってしまうケースも少なくありません。OJTは現場で実際の業務を通じて指導を行うため、指導者の役割が重要です。
名選手は名監督にあらず、という言葉があるようにすべての人がOJTに適しているわけではありません。
この記事では、OJTに向いていない人の特徴や、失敗しない育成計画のポイントをわかりやすく解説します。
OJTに向いていない人の特徴6つ
まずは、OJTで新人をうまく育てられない人の特徴を挙げていきます。どれか一つでも思い当たったら要注意です!しっかりと育成を任せられる担当者を見極めましょう。
1. 否定的な態度が多い
新人が何か意見を言ったり、質問をしてきたときに「それは違う」とすぐ否定してしまうタイプ。これでは新人がやる気をなくしてしまいます。指導者として言うべきことは言うことはもちろん必要ですが、相手に声に耳を傾けることも重要です。
2. 「見て覚えろ」という考え方
「仕事は見て覚えるものだ」と具体的な説明を省く人も、OJTには向いていません。新人が自分で試行錯誤するのは大切ですが、最初は手取り足取り教えることも必要です。新人の成長度合いに合わせて関与度を調整していきましょう。
3. コミュニケーションが苦手
新人と話すのが苦手で、指示が曖昧になりがちな人も問題です。何をどうしてほしいのか、しっかり伝えることが大事です。新しく入社した人はこちらが思うよりもずっと、周りに気を遣っているものです。相手の緊張をほぐしたり場の雰囲気を明るくすることは非常に重要です。
4. 自分の仕事だけに集中しすぎる
「自分の業務が忙しいから」と、新人のフォローを後回しにしてしまう人。指導者には、新人の成長を見守る余裕が求められます。
5. 自分のやり方を押し付ける
「私のやり方が正しい」と自分のやり方だけを押し付ける人も問題です。新人一人ひとりの特性を理解して、それに合わせた指導をすることが大切です。
6. 愛情の欠如
新人に対する関心や愛情が欠けている人も、OJTには向いていません。新人の立場に立ち、彼らの成長を本気で願う姿勢がなければ、信頼関係を築くことは難しいでしょう。新人が躓いたときに寄り添い、励ます姿勢がある指導者が求められます。
OJTがうまくいかないとどうなる?
次に、OJTがうまくいかない場合のリスクについて考えてみましょう。OJTが機能しないと、新人にも既存社員にも深刻な悪影響が出てしまいます。最悪のケースでは、新人が早期に退職してしまい、以下のような悪循環に陥る可能性があります。
- 採用コストの無駄:採用や教育にかけた時間や労力がすべて無駄になり、企業の資源が浪費されます。
- 職場の疲弊と士気低下:新人が辞めることで、既存社員のモチベーションが低下し、職場全体の士気が下がります。
- 業務負担の増加:人手不足が発生し、既存社員の業務負担が増えることで、さらなる離職リスクが高まります。
- 追加採用コストの発生:再度の採用活動が必要になり、コストや時間がさらに増大します。
これらのリスクは、職場全体の生産性や業績にも影響を及ぼしかねません。特に、早期退職が続くと「働きにくい職場」という評判が広まり、将来的な採用活動にも悪影響が出る恐れがあります。
こうした問題を防ぐためにも、指導者の適性をしっかり見極め、OJTの進め方や育成計画を根本から見直すことが重要です。
効果的なOJTのために育成計画を立てよう
リスクを把握したら次はOJTを成功させるための育成計画を立てましょう。何も考えずに現場任せにしてしまうと問題が発生しやすい傾向にあります。事前に関係者を集めてしっかりとした育成計画が必要です。以下のステップを参考にしてください。
- 目標を決める 「どのスキルをいつまでに身につけるか」を明確にして、新人と共有しましょう。具体的には、「1か月で基本業務を理解」「3か月で業務の流れを把握」といった目標設定が効果的です。
- 具体的な手順を用意する 明確な行動計画を立てましょう。例えば、「最初の1週間は先輩社員と同じ業務を観察」「次の2週間でその業務を一部担当」「1か月目には全体を通して業務を実践する」など、具体的なステップを提示することで、新人も安心して取り組めます。
- 進捗をチェックする 育成計画を見える化し、どの段階まで進んでいるかを定期的に確認しましょう。週次または月次での面談を設け、フィードバックを行うことも重要です。例えば「タスク完了率」「理解度チェック」などの指標を用いると、客観的に進捗を把握できます。
指導の基本ステップ:SHOW-DO-CHECK-ACT
では、OJTをうまく進めるための4段階職業指導法をご紹介します。次の4つのステップを実践することがポイントです。
- SHOW(やって見せる) 指導者自身が業務を実際に行い、その過程を新人に見せることで業務の流れを視覚的に理解させます。この際、手順や目的を分かりやすく説明することが重要です。「なぜこの手順が必要なのか」を言葉にすることで、新人の理解度が深まります。
- DO(やらせてみる) 新人に実際の業務を任せてみましょう。初めての作業は時間がかかるのは当たり前なので、焦らせず、細かいところまで観察しながらサポートします。このステップでは、新人の成長度合いを確認しながら、必要に応じて追加の指導を行います。
- CHECK(振り返る) 実際に新人が行った作業を一緒に振り返ります。うまくできた点を具体的に褒め、改善が必要な点については丁寧にフィードバックを行いましょう。この際、「どこをどう改善すれば良いのか」を具体的に伝えることで、新人が次に同じ作業を行う際に意識しやすくなります。
- ACT(改善につなげる) フィードバックを基に、新人が改善に取り組めるようアドバイスをします。次回同じ業務を行う際に活かせるよう、具体的な改善策を提案しましょう。また、必要であれば指導者が再度手本を示すことで、新人の理解をさらに深めることができます。
具体例として、新入社員が初めて資料作成を任される場合を考えてみましょう。まず指導者が手本を見せて、資料作成の進め方やポイントを分かりやすく説明します。その後、新入社員に実際に資料を作らせながら、途中で疑問点やミスがあれば都度アドバイスを行います。そして完成した資料を一緒に確認し、良かった点や改善点を具体的にフィードバックします。この一連の流れがOJTにおける理想的なプロセスです。
ここで参考にしたいのが、山本五十六の有名な格言です。「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」。この言葉は、現代の職場でも十分通じる指導の本質を示しています。この精神を意識しながら指導にあたることで、新人の成長をより効果的にサポートできるでしょう。
OJTに向いていない人への対策と代わりの方法
どうしてもOJTに向いていないと思われる指導者がいる場合、どのように対応すれば良いでしょうか?そのような場合には、以下の対応策を検討することをお勧めします。社内で解決が難しい場合は、社外のリソースを活用して、自社の不足を補うことも視野に入れるべきです。
- 別の指導者を選ぶ OJTの指導者には、適切なスキルやコミュニケーション能力が不可欠です。指導スキルが高い社員や、新人の成長に意欲的な社員を選ぶことで、教育の質を大きく向上させることができます。さらに、指導者の適性を見極めるためには、過去の育成実績や社員からのフィードバックを参考にするのが効果的です。また、指導者を選ぶ際には、指導対象となる新人との相性も考慮することで、より良い関係性を築くことができます。
- OJT以外の教育方法を活用する 指導者の負担を軽減し、教育体制を補完するために、OJT以外の教育手段を活用することも重要です。具体的には、次のような方法があります:
- 研修プログラム:外部講師を招いた研修や、専門的なスキルを学べるセミナーを定期的に実施する。
- オンライン学習:Eラーニングや業務の基本的な流れを説明する動画教材を提供することで、新人が自分のペースで学習できる環境を整える。
- グループディスカッション:新人同士で意見を交換する場を設け、互いに学び合う機会を作る。
- メンター制度:新人にメンターを割り当て、日々の悩みや課題を相談できる体制を構築する。
これらの方法を組み合わせることで、指導者に過度な負担をかけず、新人がスムーズに成長できる環境を作ることが可能です。
新人の早期離職を防ぐには?
最後に、新人が早期離職しないための職場作りのポイントをご紹介します。
- 新人と話す機会を増やす 定期的に1on1ミーティングを行い、不安や悩みを聞く場を設けましょう。この際、業務に関する問題だけでなく、職場環境や人間関係についても意見を聞くことで、新人が安心して働ける雰囲気を作ることができます。
- 職場の雰囲気を良くする 新人が安心して働ける環境を整えることが離職率低下のカギです。例えば、歓迎会やランチ会など、気軽に交流できる場を設けることで、チームの一体感を高めることができます。また、社員間のコミュニケーションを活性化する仕組みを導入するのも効果的です。
- キャリアの道筋を示す 新人が「ここで成長できる」と感じられるよう、キャリアパスを具体的に示しましょう。例えば、入社1年目はどのようなスキルを習得し、2年目以降はどのような役割を担う可能性があるのかを明確に伝えることで、将来のビジョンを描きやすくなります。また、目標達成に向けた研修やスキルアップの機会を提供することで、新人の成長意欲を高めることができます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
OJTを成功させるためには、指導者の適性を見極め、しっかりとした育成計画を立てることが重要です。新人の教育には、単に仕事を教えるだけでなく、信頼関係を築き、安心して成長できる環境を整えることが不可欠です。また、OJTの成果を高めるには、以下のような要素をバランスよく組み合わせる必要があります。
- 適切な指導者の選定:新人の成長を支えるためには、指導スキルやコミュニケーション能力に優れた社員を選ぶことが大切です。
- 育成計画の明確化:具体的な目標や行動計画を立て、進捗を定期的に確認する仕組みを作ることで、新人の成長をサポートします。
- フォローアップ体制の構築:1on1ミーティングやフィードバックを通じて、新人が抱える不安や課題に寄り添い、適切な解決策を提供します。
- 愛情を持ったサポート:新人の立場に立ち、彼らの成長を本気で応援する姿勢が、長期的な定着と活躍につながります。
これを機に、効果的なOJT体制を整え、会社全体の成長を目指していきましょう。