最近、Uber EatsやAmazonのような宅配サービスで働く人たちがニュースになる機会が増えています。 一見、彼らは「フリーランス」や「個人事業主」として企業と契約しているように見えますが、実はその働き方が「労働者」として扱われるべきなのでは?という議論が高まっているのです。
タイミーやメルカリの「ハロ」など、スキマバイトのプラットフォームも増え、ギグワーカーという言葉も話題になることが多いですね。
厚生労働省もこうした流れを受けて、40年ぶりに「労働者性」の定義を見直す動きに入りました。 この見直しは、ギグワーカーやフリーランスに限らず、あらゆる業種の企業にとって無関係ではありません。 この記事では、そもそも「労働者性とは何か?」をやさしく解説し、企業として今後備えるべきポイントを整理していきます。
労働者性とは?法律上の定義と現行の判断基準

「労働者性」とは、労働者として法的に保護されるか否かを分ける境界線です。 労働者と認められると、労働基準法や労働組合法などの保護対象となり、企業側は労働時間・賃金・安全衛生などについて法的義務を負います。
現行の基準は1985年に旧労働省の研究会がまとめた報告書がベースになっており、 主に「企業が指揮監督しているか」「報酬が労働の対価であるか」が重視されています。
当時はトラック運転手や一人親方、自宅でワープロ入力を行う人が議論の対象でした。 しかし現在は、AIやアルゴリズムによって配達ルートを決められるようなギグワーカーが増えており、 既存の基準だけでは判断が難しいケースが増えています。
まずはこの「労働者性」という概念が何を意味するのかを、基礎知識として押さえておきましょう。
なぜ今「労働者性」の見直しが必要なのか

社会構造や働き方の変化に、法制度が追いついていないからです。
宅配やライドシェアなど、プラットフォーム型のギグワークが急増。 総務省の2022年調査では、フリーランスを本業とする人が209万人、就業者全体の約3.1%を占めています。
形式上は業務委託契約であっても、実態としては企業の指揮命令を受けて働いているケースも多く、 「労働者として扱うべきでは?」という声が強まっています。
たとえば、Uber Eatsの配達員が労働組合をつくり団体交渉を申し入れた件では、 東京都労働委員会が「労働組合法上の労働者」と認める判断を下しました。 Amazonの荷物を請け負うドライバーも同様の申し入れをしています。
また、厚労省の別の研究会では、 「企業が社会保険料などの負担を逃れるため、雇用すべき人を請負契約にしている」ことを問題視しています。
こうした実態が、労働者性の再検討を後押ししているのです。
見直しの方向性と企業が注目すべき論点

今回の研究会では、新たな判断基準として以下のような論点が議論される予定です。
- 経済的依存の有無
- 労使の交渉力の格差
- 指揮命令系統の実態
- 「労働者ではないこと」の立証責任を企業側に負わせるか
これにより、形式的には業務委託契約でも、実態として労働者と判断される可能性が高まります。
海外でも同様の動きがあり、EUでは2024年10月に新たな指令を採択。 「事業者が働く人を支配・指揮する要素があれば、雇用関係が推定される」と定められました。
日本でもこうした潮流を受けて、企業側の責任や立場が厳しく問われることになるでしょう。
企業が今から備えるべき3つの対応策

将来的な法改正や裁判リスクに備え、企業は次の3点に取り組むことが重要です。
1. 契約内容と業務実態の定期的な見直し
形式だけの請負契約になっていないか、実態として労働者性が強く出ていないかを棚卸ししましょう。 特に業務指示の出し方や、勤怠管理の有無などに注意が必要です。
2. 指揮命令系統の曖昧さをなくす
業務委託であれば、発注と成果物のやりとりに留め、細かな働き方の指示や時間管理は避けるべきです。 場合によっては業務フローそのものを見直す必要があります。
3. 顧問社労士・弁護士との連携を強化
最新の法改正情報をキャッチアップし、自社のリスクを定期的に評価する体制を整えましょう。 とくに労務問題に詳しい専門家と連携しておくことが、トラブル予防につながります。
まとめ:労働者性の見直しは“経営者の責任”として捉えるべき
「うちは関係ない」と思っている企業ほど、リスクに気づくのが遅れがちです。
ギグワーカーやフリーランスとの取引が少しでもある企業は、 このタイミングで契約実態と働き方を見直すことが重要です。
働き方の多様化が進む中で、ルールも大きく変わろうとしています。
この変化を“労務リスク”としてではなく、“組織を健全に保つ機会”として捉え、 経営者としての責任ある対応を進めていきましょう。
よくある質問(Q&A)
Q1. ギグワーカーでも労働者と認定されることはありますか?
はい、実際にUber Eatsの配達員が「労働組合法上の労働者」と認められた事例があります。形式ではなく実態で判断されるため、企業からの指揮命令が強い場合は労働者性が認定される可能性があります。
Q2. フリーランスと契約しているが、どこまで業務を指示してよい?
基本的には成果物の完成を前提とした業務委託であれば、働き方や労働時間まで細かく指示するべきではありません。必要に応じて顧問社労士に確認し、指揮命令の境界線を明確にすることが重要です。
Q3. 今後、労働者性に関するルールはいつ変わりますか?
現在、厚労省の研究会で議論が進められている段階です。明確な法改正時期は未定ですが、EUの指令など海外の動きも踏まえ、数年以内に見直される可能性が高いと予想されます。
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