「新卒でもない、中途採用でもない、でも即戦力になり得る。」そんな特徴を持つのが第二新卒です。新卒で一度就職したものの、1—3年以内に転職を考える20代前半から半ばの若手社会人を指し、この層は柔軟性と成長ポテンシャルを兼ね備えた人材として注目されています。
中小企業で若手を採用しようと思ったら、まずは第二新卒層ですよね!でも、最近では大企業が第二新卒採用を拡大しており、中小企業での若手確保がますます厳しくなる見通しです。
これまで第二新卒は、新卒採用で激しい競争を強いられる中小企業にとって、優秀な人材を確保するための重要なターゲットでした。しかし、2024年現在、その市場が大きく変わろうとしています。2022年と比べて約2倍に拡大した第二新卒の求人件数は、従来の中小企業だけでなく、大企業からも注目されるようになっています。この変化は、中小企業の採用戦略にどのような影響を及ぼすのでしょうか。本記事では、第二新卒市場の背景と中小企業が取るべき対策について詳しく解説します。
第二新卒市場の変化——大企業の進出
中小企業が第二新卒を採用してきた背景
新卒採用を行なっているものの、なかなか中小企業では苦戦してしまい、採用が厳しいケースが多いです。そんな時は中途採用で第二新卒層を狙うことはよくあることだと思います。そんな中小企業がこれまで第二新卒を積極的に採用してきた背景には、いくつかの明確な理由があります。
- 採用コストの低さ 中小企業は予算に制約がある場合が多く、新卒採用には多額の広告費やリクルーターの時間がかかります。一方で、第二新卒はすでに一度就職を経験しているため、採用時のミスマッチリスクが比較的低く、その分コストパフォーマンスが高いと評価されています。また、求人媒体やエージェントを利用する際にも、新卒採用よりも割安なプランが利用できることが多いです。
- 即戦力としての可能性 第二新卒はすでに社会人経験を持っており、基礎的なビジネスマナーや職場での振る舞いを身に付けています。そのため、入社後の研修期間を短縮できるというメリットがあります。特に即戦力が求められる中小企業にとって、早期に業務を任せられる人材は非常に魅力的です。
- 柔軟な採用環境 新卒採用市場では、大企業と中小企業が同じタイミングで競争を繰り広げるため、知名度の低い中小企業が新卒を採用するのは難しいことがあります。一方、第二新卒市場は通年採用が一般的であり、中小企業は自社の採用スケジュールに合わせて柔軟に採用活動を行うことができます。この柔軟性が、中小企業にとって大きな利点となっています。
- 高い定着率への期待 一度就職を経験した第二新卒は、初めて社会人となる新卒に比べて、自身のキャリアに対する具体的なイメージを持っている場合が多いです。そのため、自分に合った企業を慎重に選ぶ傾向があり、中小企業側にとっても長く定着してもらえる可能性が高い人材とみなされています。
- 地域密着型企業との相性 第二新卒層の中には、地元へのUターンやIターンを希望する人も多くいます。地域に根ざした中小企業にとって、地元志向の第二新卒を採用することで、企業と地域社会の結びつきを強めることができます。
大企業が第二新卒市場に参入する理由
しかし、この第二新卒市場に大企業が参入する動きが活発化しています。その背景には以下の要因があります。
- 少子化による若年層人口の減少 新卒採用だけでは若手人材を十分に確保できないため、大企業が第二新卒市場にも手を伸ばしています。
- キャリアチェンジ志向の若者の増加 第二新卒層が転職を通じてキャリアチェンジを目指す動きが広がり、大企業もこの層を重視するようになっています。
- 柔軟な採用手法の普及 大企業が転職フェアやオンライン説明会などを活用し、積極的に第二新卒層を採用しています。
中小企業への影響
従来は中小企業がメインしていた第二新卒層ですが、大企業との競争が激化したことで、採用難易度が上がっています。特に、大企業はブランド力や福利厚生の充実などで優位に立ちやすく、中小企業にとって新たな課題となっています。
中小企業が取るべき対策
1. 自社の魅力を明確にする
中小企業ならではの強みを明確にし、採用PRに反映させることが重要です。
- 幅広い業務経験:若手社員が様々な業務に携わる機会が多い。
- 早期キャリアアップ:裁量を持って活躍できる環境。
例えば、「若手が自らプロジェクトをリードできる職場」や「社長との距離が近く、学べる環境」といった具体的な魅力をアピールしましょう。
また、採用活動においては、実際の社員の声や成功事例を積極的に共有することも有効です。例えば、社員インタビュー動画やSNSを活用した日常風景の発信など、企業のリアルな姿を伝えることで求職者の興味を引きやすくなります。
2. スピード採用を強化する
大企業に比べて意思決定のスピードが速い中小企業の特性を活かし、面接から内定までのプロセスを短縮することが有効です。
例えば、
- 応募から初回面接までの期間を短縮。
- 最終面接をオンラインで実施。
- 内定通知を即日発行可能にする。
これにより、求職者が他社と比較検討する前に自社を選んでもらうチャンスを増やせます。
3. オンボーディングで差別化する
入社後のフォローアップを充実させ、第二新卒層が安心して働ける環境を整備しましょう。
- メンター制度:新人社員に対して先輩社員が個別指導を行い、業務面やメンタル面をサポートします。
- スキルアップ研修:特に第二新卒層が成長を実感できるような研修プログラムを提供。
- 入社後3—6ヶ月の定期的なフォローアップ面談:課題や悩みを解消し、早期離職を防ぎます。
また、歓迎会やチームビルディングイベントを実施することで、職場への適応をスムーズにします。
4. ローカル採用戦略を活用する
地域密着型の採用活動を行い、地元志向の若手人材をターゲットにすることで、大企業との差別化を図ります。
具体的には:
- 地域の大学や専門学校との連携強化。
- 地元企業が集まる合同説明会やイベントへの参加。
- 地域特化型の求人媒体やSNSを活用したPR。
さらに、地元での暮らしやすさをアピールすることで、UターンやIターン希望者を引き寄せることも効果的です。
5. 社内制度の見直し
福利厚生や働き方の柔軟性を見直し、求職者にとって魅力的な環境を整えることも重要です。
- リモートワークの導入:フルリモートやハイブリッド勤務の選択肢を提供。
- 有給休暇の取得率向上:働きやすさを具体的な数値で示す。
- キャリアパスの明確化:入社後の昇進・昇格の道筋を明示。
第二新卒採用の成功事例
ある中堅製造業の企業では、地域密着型の採用活動を強化。例えば、地元の大学と提携して合同説明会を開催し、地域特化型の求人媒体やSNSを活用して第二新卒層への認知を広げました。また、採用時に企業が提供するキャリアパスの透明性や、ワークライフバランスの良さを明確にアピールすることで、応募者の興味を引きつけました。その結果、地元の若手人材に特化した採用イベントを通じて第二新卒層を積極的に採用し、さらに、入社後のフォローアップを充実させたことで、定着率が90%を超える成果を達成しています。具体的には、メンター制度やキャリア相談の場を設けることで、社員一人ひとりが安心して働ける環境を整えました。
また、大企業の事例として、JTBや三菱電機が第二新卒層をターゲットにした採用活動を積極的に展開。例えば、JTBでは若手社員が自ら採用イベントに登壇し、現場のリアルな声を伝える取り組みを行いました。一方、三菱電機では、第二新卒向けのスピーディな採用プロセスを導入。応募から内定までの期間を短縮することで、優秀な人材を効率的に確保しています。これらの事例から、大企業と中小企業の双方において、ターゲット層の明確化と具体的な採用戦略の実行が成功の鍵であることがわかります。
まとめ——中小企業が今こそ考えるべきこと
第二新卒市場は、これまで中小企業にとって重要な採用領域でしたが、大企業の進出により競争が激化しています。しかし、中小企業には大企業にはないスピード感や柔軟性、地域密着性といった強みがあります。
これらを最大限に活かし、採用メッセージやプロセスを見直すことで、第二新卒層にとって魅力的な選択肢となることが可能です。今こそ自社の採用戦略を強化し、未来の成長を支える若手人材を確保しましょう!