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【2025年版】再雇用制度と給与設計ガイド|経営者・人事担当者のための実務対応と法的リスク

2025年4月、高年齢者雇用安定法の経過措置が終了し、「希望者全員の65歳までの雇用確保」が企業の義務になりました。

採用コンサルタント:大岩

人生100年時代、60代になっても働く方も多いですよね。定年もどんどん引き上げられています。私の母も70歳近いですが、保育園で働いています。単純にお金だけではなく、社会とのつながりも持っていたいのでしょうね。

人手不足が続く中、ベテラン人材を再雇用して戦力化することは経営上の重要なテーマですが、「再雇用後の給与設計」については、いまだに議論が絶えません。特に問題となるのが「仕事は同じなのに給与が3割減」という“再雇用の壁”です。官公庁データや判例を読み解きつつ、今後企業が取るべき実務対応について解説します。

再雇用制度の基本と現状

高年齢者雇用安定法では、企業は65歳までの雇用確保を義務づけられています。その方法は、大きく3つに分類されます。

雇用確保措置の3つの手法

  1. 定年の廃止
  2. 定年の延長
  3. 再雇用制度の導入

実際、企業の7割は「再雇用制度」を選択しています。その理由は、定年延長や廃止と比較して、雇用契約や報酬を柔軟に設計できるためです。具体的には、再雇用者の業務量や責任範囲に応じた給与調整がしやすく、結果として人件費の最適化や戦力配置の自由度が高まることが挙げられます。また、必要に応じて短時間勤務や業務内容の見直しを行うことで、現場の生産性を維持しやすい点も再雇用制度が選ばれる大きな理由となっています。

再雇用後の給与はどのくらい下がるのか?

厚生労働省や各種統計によれば、60歳定年後の再雇用時には、給与が約3割減少することが一般的です。例えば、定年前に月給40万円だった場合、再雇用後は28万円前後まで下がるケースが多く見られます。これは、再雇用時に非正規雇用(嘱託社員や契約社員)が多くなることや、役職手当などがなくなることが主な要因とされています。

現状の給与減少の実態

  • 大企業では「60歳を境に約3割の賃金減」が標準化
  • 公務員も「60歳以降は俸給7割」が規定され、官民ともに「3割減」が常態化

【参考データ】

  • 労働政策研究・研修機構調査では、60歳以降も「仕事内容は同じ」が44%、責任の軽減ありでも38%に達しています。
  • つまり、仕事内容は変わらないのに給与は減るという状況が8割以上のケースで発生しています。

賃金減額は合法なのか?判例とリスクの整理

再雇用者の賃金を減額すること自体は違法ではありません。しかし、その妥当性や水準を巡る議論は続いています。

長澤運輸事件(2018年 最高裁判決)

  • 再雇用者は長期雇用を前提としないため、賃金減額は「その他の事情」として合理性があると判断。

名古屋自動車学校事件(2023年 最高裁判決)

  • 減額幅が大きすぎる場合は「分析不足」を理由に審理差し戻し。
  • 水準論については、未だに最終判断が確定していない状態。

企業としては「業務内容」「責任範囲」「配置変更」の実態を明確にし、それを基に再雇用者との雇用条件や賃金の合理性を丁寧に説明する必要があります。特に、現役時代と比較してどのような業務変化や責任軽減があるのか、具体的な根拠を示すことで納得感を高めることが求められます。また、説明を怠ることで労務トラブルに発展するリスクがあるため、社内ルールやドキュメントの整備も欠かせません。

実務で押さえるべき給与設計のポイント

再雇用後の給与水準や待遇に関しては、企業の信頼性や従業員のモチベーションを左右する重要なテーマです。法令遵守はもちろん、組織の透明性と公平性を確保するために、給与設計には慎重な判断と戦略が求められます。ここでは、実務で押さえておくべき具体的なポイントを整理します。

同一労働同一賃金の原則を踏まえた説明責任

  • 賃金の合理性は「職務内容」「配置範囲」「その他の事情」の3点で判断される。
  • 再雇用時の役割定義、責任範囲を具体的に記載する。

再雇用契約書の作成・見直し

  • 賃金減額の理由を明記
  • 契約更新の条件、評価項目を明確にする

社内コミュニケーションの徹底

  • 若手社員への公平性説明(ポスト・昇進機会への影響)
  • シニア社員への処遇説明とモチベーション維持策

再雇用後の給与設計は、法令を守るだけでなく、企業の信頼性と組織全体のモチベーションを維持するために極めて重要です。給与水準や待遇については、根拠のある説明と公平性を確保することで、シニア社員からの納得を得ることができます。また、若手社員とのバランスを考えた人事施策が、職場全体の安定と成長につながります。

次に、再雇用者の収入を支援するために活用できる公的な給付制度について、具体的に解説します。

給与減少を補う公的制度の活用

再雇用後、給与が現役時代に比べて大幅に減少することは避けられないケースが多くあります。そのため、企業としては、従業員の収入を下支えする公的制度について十分に理解し、適切に案内することが求められます。ここでは、代表的な給付制度を紹介し、実務に役立つ情報をお伝えします。

高年齢雇用継続給付金

  • 賃金減少分を最大15%補填
  • 再雇用後の収入安定に貢献

高年齢再就職給付金

  • 別企業に再就職する場合も一定の給付あり

企業としては、これらの情報を積極的に周知することで、従業員の安心感を高めることが可能です。特に、再雇用者本人やその家族にとっては、収入減少に対する不安が大きいため、公的な給付制度の存在を知らされるだけでも心理的な負担が軽減されます。また、企業がこうした支援情報を丁寧に提供することで、「シニア社員を大切にする企業」というイメージを社内外に発信することにもつながり、結果として人材定着や企業ブランディングの強化にも寄与します。

私の体験談:自らキャリアを切り開くことの重要性

私は中小企業診断士という経営コンサルタントの資格をベースに仕事をしています。中小企業診断士協会に入会すると、同じ資格を持った方々と交流する機会が多くあります。

その中には、定年退職を見据えて資格取得をし、独立した人も多くいらっしゃいます。やはり、雇用延長で同じ仕事をしても給与が下がることに違和感を抱く方は多いようです。

一方で、会社にぶら下がることなく、これまでのキャリアを活かしながら、さらに資格を取得して仕事の幅を広げ、独立後も成功している尊敬すべき方々も数多く見てきました。

人生100年時代、自分自身でキャリアの舵を取ることが欠かせないということを、改めて実感しています。

65歳以降の雇用戦略とその実務

2021年の法改正により、「65歳〜70歳」の就業確保措置は企業にとって努力義務となっています。これは、従来の65歳までの雇用確保義務に加え、さらに5年間の就業機会を提供することを求める制度です。具体的には、雇用契約の継続だけでなく、業務委託やフリーランス契約、さらには起業支援や社会貢献活動への参加など、多様な選択肢を提示することが求められています。これにより、企業は柔軟な働き方を提案する一方で、シニア人材の活躍の場を広げる責任も担うことになります。

就業確保措置の導入状況

  • 業務委託や起業支援など、多様な選択肢が可能
  • 2024年時点で、導入済み企業は32%

実務上の留意点

  • 労務管理や安全配慮義務は継続
  • 最低賃金遵守や年休取得義務も対象

65歳以降の雇用は、単に雇用期間を延ばすだけでなく、働き方の多様化や柔軟な雇用形態の導入が求められています。企業は、業務委託や起業支援などの選択肢を積極的に検討し、シニア人材が持つ知識や経験を最大限に活かせる環境を整えることが重要です。また、安全配慮や労務管理の徹底は、企業の信頼を守るためにも欠かせないポイントです。

まとめ|企業が今すぐ取り組むべき対応

この記事のまとめです。以下の3点を意識して対応しましょう。

判例や法改正を踏まえた給与水準の再検討

法的な動向や判例を確認し、適正な給与設定を行うことで、トラブルを未然に防ぎます。

契約書と業務設計の見直しによるトラブル予防

業務内容や責任範囲を明確にした契約書の作成と、実態に即した業務設計が不可欠です。

シニア人材の戦力化とモチベーション向上策

経験やスキルを活かせるポジションへの配置や、適切な評価制度を通じて意欲を引き出します。

今後、再雇用制度は単なる「人員確保手段」ではなく、企業競争力を高めるための重要な戦略の一つです。経営者・人事担当者は、制度設計と実務対応の両面でスピーディーかつ的確なアクションが求められています。

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ABOUT ME
採用人事コンサルタント 大岩貴文
大手メディアの求人広告営業を10年経験した後、経営コンサルタント唯一の国家資格である中小企業診断士の資格を取得。採用人事に強いコンサルタントとして、採用支援、研修講師、経営改善などを中心に活動中。経済産業省認定経営革新等支援機関、福岡県商工会連合会エキスパートバンク登録専門家。

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