2025年4月から、雇用保険法が改正され、働き手にとってさまざまな重要な変更点が導入されます。この改正では、失業給付の給付制限期間短縮をはじめ、教育訓練支援の拡充や新たな制度の創設が行われます。具体的には、教育訓練給付金の給付率の引き上げや、自己都合退職者に対する支援強化が含まれています。
特に自己都合退社に対する支援強化は、企業側にしたら退職するハードルが低くなるとも捉えられますね。
本記事では、これらの改正内容を分かりやすく整理し、働き手にとってのメリットを解説します。
そもそも雇用保険とは?
雇用保険は、失業時や育児休業時の給付、能力開発や雇用安定を支援する仕組みです。主な特徴として、雇用保険は働き手が生活の安定を確保し、キャリア形成を進めるための重要な制度です。
加入条件
以下の条件を満たす場合、雇用保険に加入することができます:
- 31日以上働く見込みがあり、
- 週の所定労働時間が20時間以上
非正規雇用(パートタイムやアルバイト)の方も、この条件を満たせば加入対象となります。ただし、学生の場合は一部条件に該当しないケースがあります。
時系列で見る直近の変化
ここでは、直近の雇用保険の変更についてまとめています。
2024年10月:教育訓練給付金の給付率引き上げ
教育訓練給付金の給付率が以下のように変更されました:
- 特定一般教育訓練:再就職や早期キャリア形成の支援
- 専門実践教育訓練:中長期的なキャリア形成を支援(例:看護師資格取得)
特に専門実践教育訓練では、受講費用の給付率が従来の最大70%から**80%**に引き上げられました。
2025年4月:失業給付の給付制限期間短縮
従来、自己都合で退職した場合、2カ月間の給付制限がありましたが、2025年4月から1カ月に短縮されます。さらに、以下の条件を満たす場合、制限が解除されます:
- 失業期間中に教育訓練を受講
- 退職から遡って1年以内に教育訓練を受講
この改正により、転職を検討しやすくなることが期待されます。
2025年10月:教育訓練休暇給付金の創設
新たに“教育訓練休暇給付金”が創設されます。在職中に無給で休暇を取得し、教育訓練を受ける場合に、失業給付と同額の給付金が支給される仕組みです。これにより、生活費の心配を減らし、スキルアップに集中できる環境が整います。
2028年10月:雇用保険の適用拡大
雇用保険の加入対象が以下のように変更されます:
- 労働時間の条件:週20時間以上 → 週10時間以上
総務省の調査によれば、週10–19時間働く人は約506万人。この改正により、多くの人が雇用保険の恩恵を受けられるようになります。
雇用保険料と負担の見直し
雇用保険料は事業主と従業員が負担し合う仕組みで、その負担割合は給与や賞与の総額に基づいて算出されます。2025年度には、労働者側の負担率が引き下げられる予定です。具体的には、従業員が負担する保険料が現行の0.6%から低下する見込みです。一方で、雇用保険の給付や支援の内容は引き続き拡充され、特に教育訓練支援や失業給付が強化される方向です。
この改定により、事業主や従業員にとって経済的な負担が軽減されると同時に、雇用保険がもたらす安心感や利便性がさらに高まることが期待されています。
企業への影響と課題
今回の改正により、転職がしやすくなる一方で、企業側では労働力不足の懸念が高まる可能性があります。この問題に対処するためには、企業が魅力的な雇用環境を整えることが不可欠です。
- 柔軟な働き方の導入: テレワークやフレックスタイム制度を導入することで、多様な働き方を可能にし、幅広い人材を受け入れやすくなります。
- スキルアップ支援の提供: 社員が自身のキャリアを伸ばせるよう、研修や教育制度を充実させることが求められます。
- 働きやすい職場環境の構築: 健康管理やワークライフバランスの推進など、従業員が安心して働ける環境づくりが重要です。
企業にとっても、選ばれ続ける環境づくりが急務であり、これらの取り組みが企業の持続可能性を左右する重要な要素となるでしょう。
まとめ
雇用保険法の改正は、働く人々にとって多くの恩恵をもたらします。例えば、失業給付の給付制限が短縮されることで、転職のハードルが下がり、より多くの人がキャリアチェンジを積極的に検討できるようになります。また、教育訓練支援の拡充により、在職中でもスキルアップを目指すことが容易になります。
一方で、企業側には競争力を維持するための取り組みが求められます。働き手に選ばれるためには、柔軟な働き方やスキルアップ支援の提供に加え、安心して働ける職場環境の整備が重要です。今回の制度改正を最大限活用し、企業と働き手が共に成長できる社会を目指していきましょう。