コロナ禍をきっかけに、フリーランスが増加しているというニュースをご覧になったことはありませんか?しかし、最近では逆にフリーランスから会社員へ転職する人が急増しています。
独立する!と最初は勢いがあっても、色々経験する中で考えが変わることがあります。フリーランスという働き方が広まった反面、やっぱり会社員が良いと考える人も増えています。
人材大手のリクルートやパーソルキャリアのデータによれば、2024年4~9月の期間におけるフリーランスから会社員への転職実績は、5年前の同時期と比較してそれぞれ2.8倍、2.7倍にまで増加しました。このような動きの背景には、フリーランス側と企業側の両方に複雑な要因が絡み合っています。
採用担当者として、この市場の変化を「機会」として捉えることが、人手不足の解決に繋がる鍵となるでしょう。
この記事では、フリーランスから会社員への転職が進む背景を紐解き、企業が取るべき具体的な採用戦略について考えてみます。
そもそも、フリーランスはなぜ増加した?
フリーランス増加の背景
フリーランスが増加した理由には、以下のような社会的な背景が挙げられます。
- コロナ禍によるリモートワークの普及 コロナ禍において多くの企業がリモートワークを導入し、従業員が自宅で働く機会が増えました。この流れの中で、働き方に柔軟性を求める人々がフリーランスという選択肢に目を向けるようになりました。
- デジタル化の進展 インターネットやクラウドサービスの普及により、個人が企業に頼らず仕事を受注したり、プロジェクトを完結させたりする環境が整備されました。特にIT分野では、フリーランスとしての働き方が可能な職種が増えたことが影響しています。
- 仕事の多様性と自由の追求 自身のスキルを活かしながら自由な働き方を追求したいと考える人が増えています。特に若い世代を中心に、決まった時間や場所に縛られずに働けるフリーランスという選択が支持されています。
- 副業解禁の流れ 日本国内では、副業を許容する企業が増えたことで、会社員がフリーランスとしての活動を始めるケースが増加しました。この流れが、完全にフリーランスへ移行する人の増加にも寄与しています。
こうした背景を踏まえ、フリーランスとして働く人々の数は増加傾向にあります。ランサーズ株式会社の調査によれば、2021年のフリーランス人口は約1,577万人と推計されており、2018年と比較して約1.5倍に増加しています。一方で、競争の激化により、多くのフリーランスが案件獲得の難しさや報酬の減少といった現実的な課題も生まれています。
フリーランスから会社員への転職が進む背景と理由
フリーランス側の状況
競争激化と受注の不安定さ
フリーランスの働き方には自由ならではの魅力がありますが、この数年で競争が急速に激化しています。例えば、ITスキルを持つフリーランスの場合、ギークスの調査では作業を求める人の数が1年間で前年比28%増加した一方で、案件数の増加率は17%にとどまりました。その結果、1人あたりの案件数が減少しているという状況です。
さらに、受注の不安定さもフリーランスにとって大きな課題となっています。ランサーズの調査によれば、「受注が安定しない」という点がフリーランスの不安要素の一つとして挙げられています。これに加え、物価高の影響もフリーランスの生活に重くのしかかっています。
フリーランス新法の影響
2024年11月に施行された「フリーランス新法」は、フリーランスの働き方を保護するために設けられた新しい法律です。他の主要な目的は「報酬の透明性向上」や「不当な受注条件の防止」です。これにより一部のフリーランスには安心感が生まれたものの、「発注者の立場が不利に変わった」という指摘や「要望を言えば仕事がなくなりそう」という不安も聞かれます。この現状が、会社員への回帰の動きを促進させている側面もあると考えられます。
企業がフリーランス人材を活用するメリットと課題
企業側の状況
人手不足を解決する機会
人手不足は企業に大きな負担をかけています。例えば、帝国データバンクの調査によると24年10月時点で「正社員が不足している」と感じている企業は51.7%に上るとのこと。このような背景から、フリーランスからの転職者に強い関心が向けられています。特に、ジョブ型雇用やリモートワークなど、新しい働き方を採用する企業が増加しており、フリーランスのスキルや経験を活かす場が広がっています。
採用でフリーランス人材を活用する方法
- スキル重視の採用 フリーランス体験者は、すでに専門知識や実践的なスキルを持っている場合が多いです。これにより既存の能力を最大限に活用できる採用形態を検討することが重要です。
- 安定した働き方を提示 「安定した働き方」や「専門性の向上」を提示することで、フリーランスから転職を考えている人材に重点的な問題解決策を提供できます。
- 他企業例の参考にする 成功例を体系的に記事や会議で使用し、チーム全体で共有することで、他社の成功事例から学びを得られます。例えば、ジョブ型雇用を導入してフリーランス経験者を採用した企業の具体的な施策を分析することで、自社の採用戦略に活かすことができます。
フリーランス新法が採用市場に与える影響
フリーランス新法のポイントとその影響
フリーランス新法とは?
フリーランスの働き方を保護するために2024年11月に施行された法律です。この新法の主な目的は以下の通りです:
- 報酬の透明性向上:契約内容や報酬体系を明確化し、フリーランスが安心して働ける環境を整備。
- 不当な取引条件の防止:過度な納期や不公平な契約条件を抑制し、フリーランスの権利を守る。
新法がフリーランスに与える影響
- ポジティブな影響
- 報酬額や取引条件の改善が期待され、フリーランスにとってより透明性のある労働環境が整います。
- 一部のフリーランスには、安定した取引条件が提供されることで安心感が向上しました。
- 課題として残る問題
- 現状では、「発注者の立場が依然として強い」という指摘が多く、交渉力の差が埋まらないケースも。
- トラブルの完全解消には至っておらず、フリーランスの中には「要望を伝えることで仕事を失うのでは」という不安を抱える人もいます。
企業が今すぐ実行すべき採用戦略
今まで、フリーランスが会社員に転職する背景や状況をお伝えしましたが、では企業としてどのようにこの市場の動きを捉えたらいいでしょうか?ここからは個人的にお勧めする採用戦略についてお伝えします。
業務の外注化とフリーランスとの関係構築
企業にとって、従来の雇用する前提の考え方から、外部人材へ業務を依頼する外注化を進める転換が重要です。特に以下のような施策が有効です。
- 業務を切り分けて外注化する
業務の中で専門的なスキルを必要とする部分や、一時的な需要に応える作業をフリーランスに依頼することで、リソースの効率的な活用が可能になります。例えば、デザインやプログラミングといったクリエイティブ分野の仕事をフリーランスに依頼することで、社内の負担を軽減できます。 - 多様なフリーランスとの関係を築く
フリーランスとの仕事を通じて、自社の価値観や働き方を理解してもらう機会を増やします。この関係構築を通じて、フリーランスが会社員に戻りたいと考えた際に、自社を「選びたい企業」として印象づけることが可能です。 - フリーランス向けの魅力的な提案を用意する
フリーランスが再び会社員として働きたいと考えた時のために、「この会社ならスキルを活かせる」「成長できる」と感じられる環境を整備します。仕事のやり取りをすることで、相性はわかるはずです。外注を一つのインターンシップと捉えて、相手を口説く準備もしておきましょう!
これらの戦略を実行することで、フリーランスという多様な人材を活用しつつ、将来的な採用活動にもつなげることができます。
フリーランスから会社員に戻る人への考察
実は私も会社員から独立して今はフリーランスとして働いています。私はフリーランスという働き方が自分に合っているので会社員に戻る考えはありませんが、フリーランスとして仕事をしていく現実を考えると、会社員に戻る人を理解できます。ここでは少し私の体験をお伝えします。
私の実体験
- 自由の難しさ フリーランスは時間や働き方の自由が大きな魅力ですが、反面、自己管理の難しさがつきまといます。たとえば、締切に追われる中でのタスクの優先順位付けや、プライベートと仕事の境界を適切に保つことが課題になることが多いです。
- 収入の不安定さ 次に収入面です。収入はプロジェクト単位で変動するため、安定的な生活設計が難しいと感じる人が少なくありません。例えば、1か月に複数の案件をこなして高収入を得られる月があっても、次の月には案件が途絶えるリスクがあります。これが、会社員の安定した収入の魅力に目を向ける理由の一つです。
- 価値観の合う取引先との出会い 一方で、フリーランスの仕事を通じて多くの企業や担当者と接する機会が増え、その中には価値観が合うクライアントや企業と出会える楽しさもあります。例えば、「この会社の経営者の考えは共感できるし尊敬できる、自分のスキルが十分に活かせて成果も出ている」という時もあり、そんな会社とは一緒に仕事をしたいと思うものです。
税務署に開業届を出せば誰でもすぐにフリーランスになれます。でも、そこからどうやって食べていくかはその人次第です。やってみた結果、別の道が自分に合っていると気づくことも当然あります。企業側としてフリーランス増加の動きは優秀な人材が採用市場に出てくるチャンスとして前向きに捉えるといいのではないでしょうか?
フリーランス人材を活用する採用戦略まとめ
フリーランスから会社員への回帰が進む背景には、競争の激化や収入の不安定さ、そしてフリーランス新法の影響が挙げられます。この動きは、採用市場の変化を象徴するものであり、企業にとっては大きなチャンスと捉えるべきです。この採用市場の変化をいち早く捉え、行動に移すことで、人手不足解消に向かうことができるでしょう。