少子化が進むなか、企業がどのように子育て支援に取り組むべきか、多くの経営者や人事担当者が頭を悩ませています。そんな中、徳島県に本社を構える日亜化学工業は、発光ダイオード(LED)分野の大手企業でありながら、もう一つの顔として「子だくさん企業」とも呼ばれるほどの子育て支援に力を入れている企業です。
なんと、2023年には徳島県で生まれた赤ちゃんの約10%が日亜化学の社員の子どもだったという驚きの事実も。この背景には、男性の育休取得率の高さや、出産祝い金の厚さ、働きやすい時短制度など、数々の取り組みがあります。
今回は、日亜化学工業の取り組みを具体的に見ながら、他の企業が参考にできる子育て支援策について考えていきましょう。
【取り組み1】出産祝い金は最大100万円!子育て世帯を家計面から支援

まず注目すべきは、日亜化学が導入している出産祝い金制度です。
2018年までは一律1万円だった祝い金が、現在では子どもの人数に応じて最大100万円まで支給される仕組みになっています。例えば:
- 第1子:30万円
- 第2子:60万円
- 第5子以降:100万円
この制度は2019年以降段階的に強化され、2023年には支給総額が約1億8000万円にのぼりました。2024年も1億5000万円と、会社としての本気度が伝わります。
もちろん、「祝い金があるからもう一人産もう」と単純にはならないかもしれませんが、家計の支援になることは間違いありません。社員の心理的・経済的な安心感につながっています。
【取り組み2】男性の育休取得率73%|誰もが使える子育て支援制度

次にご紹介するのは、男性の育児休業取得率の高さです。
2022年は30%だった取得率が、2023年には53%、2024年には**73%**と急上昇。女性の育休取得率は100%を維持しており、まさに全社員が取りやすい育休環境が整っています。
しかも、2024年に育休を取った男性の41%が1カ月以上、16%が3カ月以上の育休を取得しています。これは単なる制度の存在にとどまらず、**「使える環境」**が整っている証拠です。
【取り組み3】時短勤務制度が柔軟|2時間短縮でも1時間分を会社が補填

育休後の復職支援として重要なのが時短勤務制度。日亜化学では、子育て世帯の社員が前後1~2時間の時短勤務を選べるようになっており、たとえば保育園の送迎など家庭との両立がしやすい環境が整えられています。
さらに、2時間短縮した場合でも1時間分の給与を会社が補填する仕組みがあり、経済的な負担を最小限に抑えています。これは多くの企業が見習うべき制度設計と言えるでしょう。
【取り組み4】社長自ら「イクボス宣言」|企業文化としての子育て支援

どんな制度も、経営トップの姿勢が伴わなければ定着しません。日亜化学では、2025年に小川社長自らが**4項目の「イクボス宣言」**を公表し、管理職にも「子育て支援の理解と実行」を求める取り組みをスタートしました。
- 「困った人の側に立つ」
- 「有給・育児介護休暇を取得しやすい社風をつくる」 など
課長級以上の管理職を対象に「イクボス研修」も始まり、宣言書には社長からの応援コメントも添えられます。トップが率先することで、制度の利用が心理的にも後押しされているのです。
子育て支援の成功が採用力・定着率・地域貢献につながる

日亜化学工業のような取り組みは、単に社員の福利厚生という側面にとどまりません。以下のような波及効果が期待できます。
- 採用時の企業アピールポイントになる
- 社員の定着率向上につながる
- 地域とのつながりを深め、企業の信頼性が高まる
実際に、社員の平均年齢が上がりつつある中で、こうした施策が若手人材の採用にも貢献していると言えます。
採用現場から見た子育て支援の効果

私は採用コンサルタントとして、これまで多くの企業の福利厚生制度を見てきました。その中で、ある製造業の企業では、日亜化学工業ほどではありませんが、第三子以降の出産手当を50万円に設定していました。
この施策は、特に「地元で安定して働きたい」と考える層に強く響き、採用の現場でも非常に強力な訴求ポイントとなっています。特に女性からの評価が高く、安心して長く働ける職場として認識されているようです。
今は人口減少社会です。企業も「安心して子どもを産み育てられる場所」としての信頼を得なければ、人は集まりません。
私自身、3人の子どもがいますが、正直なところ、子育てには経済的・時間的にも大きなプレッシャーを感じています。だからこそ、子育て支援に積極的な企業がもっと増えてほしいと、心から願っています。
中小企業でも実践できる子育て支援のヒント

日亜化学工業の事例は、一見すると大企業ならではに見えるかもしれませんが、子育て支援の考え方や姿勢そのものは、企業規模に関係なく取り組めるものです。
- 少額でも祝い金制度を設ける
- 男性社員の育休取得を推奨する社内メッセージを出す
- 時短勤務に柔軟に対応する
といった部分は、中小企業でも取り入れやすい工夫です。
子育て支援は、人材の採用・定着、そして企業の信頼構築に直結する「未来への投資」です。経営者や人事担当者の皆さんも、ぜひ一歩踏み出してみてはいかがでしょうか?
よくある質問(Q&A)
Q. 子育て支援に取り組むと、コストがかさむのでは?
A. 確かに一時的なコストは発生しますが、社員の定着率向上や採用力強化による長期的な経営効果は大きく、結果的にコスト削減につながることもあります。
Q. 中小企業でも男性育休を推進できますか?
A. 制度の周知とともに、上司からの声がけや社長からのメッセージがあることで、取得率は大きく改善します。日亜化学でも経営トップの姿勢が大きな後押しになっています。
Q. 出産祝い金制度はどの程度の金額から始めるべき?
A. 必ずしも高額である必要はありません。1万円〜5万円の支給からでも「会社が祝ってくれる」という文化が根づき、社員のモチベーション向上につながります。
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