新卒社員が最初にどこへ配属されるか——。 それは彼らのキャリアの出発点であり、期待と不安が入り混じる大事な瞬間です。しかし最近では、その初任配属が「ハズレだった」と感じた新入社員が早期に辞めてしまうケースも見られます。 いわゆる“配属ガチャ”問題です。
ある調査によると、2024年春入社の新入社員のうち、「配属ガチャに外れた」と感じた人は約11.1%。 つまり、10人に1人は「希望していなかった部署に配属された」と不満を抱いているのです。
もちろん、すべての希望を通すことは難しいのが現実です。 とはいえ、希望を聞いたうえでの配属かどうかによって、納得感やエンゲージメントには大きな差が出ます。この“納得感のなさ”が、結果として早期離職につながる可能性があるのです。では、こうした配属ミスマッチを防ぐにはどうすれば良いのでしょうか?
今、企業に求められる「納得感」のある配属とは?

新卒市場は今、学生優位の売り手市場。 そのため、学生は“希望が通る企業”を選ぶ傾向が強まっています。
実際、配属希望を出せた学生は6割以上。 勤務地も部署も希望通りだった人は約6割、逆にどちらも通らなかった人はわずか5.6%という調査もあります。特に「自分のキャリアを自分で決めたい」と考える若者が増えており、ファーストキャリアの第一歩である初任配属にこそ主体性を感じたいのです。
そこで注目されているのが「コース別採用」や「職種別採用」。 キリンホールディングスのように、営業・マーケティング・法務など10以上のコースを設け、選考や説明会を分けて行う企業も出てきています。配属に納得感を持ってもらうことが、企業と個人の関係性をよりフラットにし、離職防止にもつながっていくのです。
では、企業はどのように制度や運用を工夫すべきなのでしょうか?
配属ガチャによる早期離職を防ぐ5つの対策

1. 配属希望の事前ヒアリングと記録
採用面接や内定者フォローの段階で、本人の希望する職種・勤務地・働き方について丁寧にヒアリングしましょう。「希望は出せたけど、活用されなかった」と感じさせないために、記録と共有を徹底することが大切です。
2. 職種別・勤務地別のコース別採用の導入
営業・技術・事務など、職種や勤務地をあらかじめ限定した採用を行うことで、入社後のミスマッチを大きく減らすことができます。
3. 初任配属の「事前開示・確約」
可能な範囲で、内定段階もしくは内定後早期に初任配属先を伝えるようにしましょう。 企業によっては、複数内定の中から「配属先を確約してくれた企業」を選ぶ学生も少なくありません。
4. 入社後のフォローアップ体制の整備
「思っていたのと違った…」というギャップを感じたときに、相談できる仕組みがあるかどうかで、その後の展開は大きく変わります。 メンター制度や定期的な1on1面談が有効です。
5. 異動希望を出せるキャリア面談の定期開催
配属後すぐには異動できなくても、将来的な希望を伝えられる場があるだけで、社員のモチベーション維持につながります。 キャリア面談を制度化し、異動のチャンスを見える化しましょう。
こうした取り組みが、どのような企業成長につながるのかを最後に確認しましょう。
個の主体性を尊重する組織が選ばれる時代へ

かつて企業が従業員を大切にするとは、「雇用を守ること」でした。 そのために、本人の希望に反した異動も当然という価値観が支配的だったのです。
しかし今は違います。 重視されているのは「社員一人ひとりの主体性」や「強みを生かせる環境」。その背景には、働き方の多様化とともに、人生観やキャリア観の変化があります。
自分のキャリアを自分で選べることで、社員のエンゲージメントが高まり、仕事へのモチベーションや生産性も向上します。
企業が「配属の納得感」に配慮することは、単なる離職防止ではなく、中長期的な事業成長のための投資なのです。
私の支援現場での経験から

私は採用コンサルタントとして、中小企業の新卒採用支援を行っています。
ある支援先の企業では、複数の事業を展開しており、それぞれ関連性はあるものの、学生から見た人気には偏りがあります。
毎年5〜10名の新卒を採用しており、多くの学生が人気事業部への配属を希望しますが、全員の希望を通すのは難しいのが実情です。
ある年、希望通りの配属にならなかった方がいて、ショックで泣いてしまったと聞きました。 それでも「3年は続けよう」と決めて入社されており、前向きに取り組む姿勢を見せてくれたことで、今ではその部署で充実して働いています。
希望していた配属先ではなかったけれど、やりがいを見出して定着してくれたのです。
もちろん、人気やイメージの偏りが出るのは避けられません。 だからこそ採用担当者は、それぞれの事業にどんな魅力があるのかを丁寧に伝える努力が求められると実感しています。
まとめ:配属ガチャは運ではなく、設計で防ぐ
最後にこの記事のまとめです。
- 配属ガチャで「ハズレた」と感じる新卒は約1割。
- 納得感のない配属は、モチベーション低下や早期離職の原因に。
- 希望を聞くだけでなく、制度として配属の透明性を高めることが重要。
- 主体性を尊重する配属は、社員の成長と企業の成長を両立させる。
採用は入社がゴールではありません。 “最初の配属”こそが、その後の定着と活躍を左右する最初の分岐点。
あなたの会社でも、ぜひこの機会に配属のあり方を見直してみてください。
よくある質問(Q&A)
Q. 配属ガチャを完全に無くすことは可能でしょうか?
A. 完全に無くすことは難しいですが、コース別採用や希望のヒアリング・反映を制度化することで「納得感のある配属」は実現可能です。
Q. 初任配属を確約すると、逆にリスクはありませんか?
A. 在学中の専門性や適性を見極める難しさはありますが、本人の納得感や定着率の向上というメリットが勝るケースが多く見られます。
Q. 中小企業でもコース別採用は可能ですか?
A. はい。職種や勤務地を絞った採用枠を設けるだけでも、十分な効果があります。少人数でも透明性ある運用を心がけましょう。
Q. 配属に不満が出た場合、どう対応すればよいでしょう?
A. 入社後のフォローアップ(面談・メンター制度)を通じて声を拾い、将来的な異動の可能性やキャリアパスを提示することが有効です。
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