「求人を出しているのに、誰も応募してこない」

地方で製造業を経営する方から、こうした声をよく聞きます。ハローワークに無料で掲載できるのだから、とりあえず出しておこう——そう思って出し続けているうちに、気がつけば数ヶ月、ゼロ応募が続いている。

でも、これは決してあなたの会社だけの話ではありません。

厚生労働省の統計によると、2025年11月時点の有効求人倍率は1.18倍と、2024年(1.25倍)から低下しています(出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和7年11月分)」)。数字だけを見ると「採用しやすくなった」と思えるかもしれません。

しかし、これは全体の平均値に過ぎません。

現場の実態はまったく異なります。求職者が増えた分、向かう先は知名度や条件面で有利な大手企業や人気職種に集中しており、地方の中小製造業にはなかなか人が回ってこない構造は変わっていません。しかも製造業の新規求人数は前年同月比12.1%減と落ち込む中、採用予算を持つ大手はIndeedやスカウト型サービスに積極投資しており、ハローワーク頼みの中小との情報格差はむしろ広がっています。

「数字の上では採りやすいはずなのに、うちには誰も来ない」——この感覚こそが、地方中小製造業の採用の現実です。

この記事では、ハローワークを使っているのに応募が来ない根本的な理由と、実際に3ヶ月〜半年で若手採用を実現した地方製造業の事例をもとに、今日から変えられる3つの転換点をお伝えします。

そもそも、なぜハローワークだけでは厳しくなったのか

ハローワークは、無料で求人を出せる公的な仕組みです。これ自体は今でも有効なツールです。ただ、2010年代以降に起きた「求職者の行動変化」が、ハローワーク単独での採用を難しくしています。

若手ほど「まずネットで調べる」

今の20代・30代は、仕事を探すときにまずGoogleやIndeed、あるいはSNSで情報を集めます。ハローワークの窓口に出向くのは、すでにある程度調べて「この会社に応募しようか」と思った後、もしくは失業給付の手続きのタイミングであることが多い。

つまり、若手が求職活動をする最初の段階——「どの会社にするか検討する」フェーズで、あなたの会社はまだ視界に入っていないことがほとんどです。

求人票だけでは「伝わらない情報」がある

若手の求職者が応募を決める際に見ているのは、給与や勤務時間といった条件だけではありません。

  • 職場の雰囲気はどんな感じか
  • 入社後どんなスキルが身につくか
  • 先輩社員はどんな人たちか
  • 経営者はどんな人物か

こうした「空気感」は、ハローワークの定型フォーマットの求人票では伝えきれません。同じ条件の会社が並んでいれば、若手はより多くの情報を発信している会社に引き寄せられます。

ハローワークの利用者層が変化している

ハローワークには今でも多くの求職者が登録していますが、積極的に転職活動をしている若手の多くは、IndeedやリクナビNEXT、あるいはスカウト型のサービスを主に使っています。ハローワークに来る層は、どちらかといえばすぐにでも仕事が必要な人や、年配の求職者が多い傾向があります。

20〜30代の若手をターゲットにしている場合、ハローワーク単独ではそもそもリーチしにくいのが現状です。

「応募が来ない」には、3つのパターンがある

応募が来ない状態には、原因によって大きく3つのパターンがあります。自社がどれに当てはまるかを把握することが、対策の第一歩です。

パターン①:「そもそも存在を知られていない」

求人票を出しているだけで、採用に関する情報発信が一切ない状態です。求職者がGoogleで会社名を検索しても、採用ページがない、あるいはあっても「募集中」の一行しかない。これでは、応募を検討する以前に選考から外れてしまいます。

パターン②:「見てはいるが、刺さっていない」

求人票は読まれているのに、応募に至らないケースです。原因のほとんどは、伝える内容ではなく、伝え方にあります。「アットホームな職場です」「未経験歓迎」「やる気がある方を歓迎」——こういった言葉は、残念ながら求職者の心を動かしません。似たような言葉があふれているため、差別化できていないのです。

パターン③:「応募はあるが、ミスマッチで続かない」

数は来ているが採用に至らない、または採用しても早期離職が多いパターンです。この場合は「誰に来てほしいのか」というターゲット設計と、実際に発信しているメッセージがずれていることが多い。採用したい人物像が社内で明確になっていないため、来た人を「いいか悪いか」で判断する基準も曖昧になっています。

3つの転換点:実際の支援事例から学ぶ

ここからは、コクリエパートナーが実際に支援した地方製造業の事例をもとに、応募が来なかった会社が変わるための「3つの転換点」を解説します。

転換点①:採用の目的とターゲットを言語化する

「誰でもいい」が最も採用を難しくする

多くの地方製造業が抱えている問題のひとつが、「採用する人物像が社内で統一されていない」ことです。欠員が出るたびに「とりあえず誰かに来てほしい」という状態では、求人票の言葉も、面接の評価基準も、ぼんやりしたままになります。

実例|株式会社タダノエステック様(車両製造・メンテナンス、社員209名)

高所作業車の製造を手がけるタダノエステックは、ハローワークや検索エンジン型のサイトで募集をかけていましたが、「応募が集まらない」「選考途中で辞退される」という状況が続いていました。

コクリエパートナーとのプロジェクトでは、求人の出し方を変える前に、採用の土台から整理しました。

  • 何のために採用するのか(採用目的の整理)
  • どんな人に来てほしいのか(ペルソナ設計)
  • どこに共感してもらうのか(求職者目線での整理)
  • どう伝えるのか(採用メッセージの言語化)

半年かけてこの土台を整えた結果、2025年には年間87名の応募を獲得し、12名の採用に成功。しかも、狙い通り20代・30代の若手を中心に採用することができました。

担当者の牟禮様は、こう振り返ります。「採用ターゲットを明確にしてペルソナをつくったことで『どんな人を採用するのか』がはっきりし、社内の目線も揃いました。採用の判断で迷うことがなくなりました」

ポイント:最初に「誰を採りたいか」を決める

採用活動を変えたいと思ったとき、多くの経営者は「どの媒体を使うか」から考えます。しかし本当に先に決めるべきなのは、採る人物像です。ターゲットが明確になれば、求人票の言葉も、アピールすべき魅力も、自然と定まってきます。

転換点②:「求人票」から「採用メッセージ」へ変える

求職者が読みたいのは「条件」ではなく「物語」

給与・勤務時間・休日数——これらの条件は確かに大事ですが、他社と横並びで比べられたとき、中小企業が大手に勝てる条件面は限られています。だとすれば、条件面で勝負するのではなく、「この会社で働く意味」を伝えることに力を入れるべきです。

実例|三木鋼業株式会社様(リサイクル業、社員70名)

金属スクラップの回収・加工を手がける三木鋼業は、いわゆる「3K(きつい・汚い・危険)」のイメージが先行しやすい業種で、応募がなかなか集まらない状態が続いていました。欠員が出るたびに募集をかけるという、場当たり的な採用の繰り返しでした。

支援では、求人の出し方そのものではなく、「採用の進め方」を見直しました。自社の強みや働く魅力を求職者目線で整理し直し、採用メッセージとして言語化。求人票の見直しと採用ホームページの整備を行い、応募につながる導線を整えました。

結果、半年間で13件の応募を獲得し、現場スタッフ2名・事務職1名の計3名を採用。採用コストはほぼゼロで実現しています。

執行役員の伊藤様は、こう語っています。「採用情報をプロの目線で整理してもらえたことで、自分たちでは当たり前になっていた内容も見直すことができ、伝えたいことが明確になりました。文章ひとつで結果が変わることを実感しています」

ポイント:「当たり前」の中に、魅力がある

自社の中にいると気づきにくいのですが、長年続けてきた仕事のやり方、社内の雰囲気、ものづくりへのこだわり——こうした「当たり前」こそ、求職者には魅力的に映ることがあります。外からの目線で自社の魅力を掘り起こし、言葉にする作業が、採用メッセージの出発点です。

転換点③:「応募→面接」の一本道から、複数の入り口をつくる

ハードルが高いから、応募されない

「履歴書を送って、面接に来てください」——この流れが当たり前になっていますが、未経験の若手にとってはかなりハードルが高いプロセスです。特に地方の小さな製造業の場合、「どんな職場かわからない会社に、履歴書を書いて応募する」という行為のハードルは、都市部の大企業と比べて相当高い。

実例|東和機電工業株式会社様(製造業、社員15名)

トンネル工事に使われる型枠の製造という、全国でも珍しい仕事を手がける東和機電工業。ハローワーク中心に求人を出していましたが、応募が集まらず、仕事内容とのミスマッチも課題でした。

支援では、「スポットワーカー(単発・短時間で働ける人材)」の活用という、これまでとはまったく異なる採用の入り口を設計しました。いきなり採用するのではなく、まず実際に働いてみてもらう「体験→納得→採用」というプロセスに切り替えたのです。

具体的には、未経験でも取り組みやすい作業を切り出し、1日単位で参加できる体験型の募集設計を行い、現場での受け入れ体制を整えました。

結果、取り組み開始から約2ヶ月で10名程度が現場を体験し、1名の長期採用につながりました。

代表の福田様は、こう話しています。「実際に働いてもらった上で採用につながったため、お互いに納得した状態でスタートできています。採用も柔軟に入り口を設計することで、成果が変わることを実感しました」

ポイント:採用の「入り口」は一つでなくていい

インターンシップ、職場見学会、スポットワーカーからの長期雇用——求人票に応募してもらう以外にも、会社を知ってもらうための入り口はたくさんあります。特に地方の製造業は「会社の中が見えにくい」と思われがちなので、まず見てもらう・体験してもらう機会をつくることが、応募増加への近道になります。

3つの転換点まとめ

転換点変える前変えた後
①採用目的とターゲット「誰でもいいから来てほしい」「この人材を採るために活動する」
②求人票とメッセージ条件の羅列、定型文の繰り返し求職者目線の「物語」で伝える
③採用の入り口「応募→面接」の一本道体験・見学など複数の接点を設計

よくある質問

Q. 求人票を変えるだけで効果はありますか?

求人票の改善は有効ですが、それだけでは限界があります。どんな人を採りたいのか(ターゲット)が明確でないと、求人票をどう書いても軸がぶれます。まずは「誰に来てほしいか」を決めることが先決です。

Q. ハローワークはもう使わなくていいですか?

そんなことはありません。ハローワークは今でも有効な採用チャネルのひとつです。ただ、ハローワーク単独で若手を採用しようとするには、工夫が必要です。Indeedとの連携や、採用ホームページへの誘導などを組み合わせることで、ハローワーク経由の応募も増やしやすくなります。

Q. 予算をかけずに採用改善はできますか?

できます。三木鋼業株式会社様の事例でご紹介したように、採用コストをかけずに採用メッセージを整えるだけで、半年間で3名の採用につながった事例があります。お金よりも先に「何を・誰に・どう伝えるか」を整理することが、コストをかけない採用改善の出発点です。

まとめ:「ハローワークで応募が来ない」は、解決できる

ハローワークに求人を出し続けても応募が来ない——この状態は、媒体の問題ではなく、採用の設計の問題であることがほとんどです。

今回ご紹介した3つの転換点を整理すると、次のようになります。

  1. 採用目的とターゲットを明確にする(誰を採りたいかを先に決める)
  2. 求人票を「採用メッセージ」に変える(条件ではなく、働く意味を伝える)
  3. 採用の入り口を複数つくる(応募→面接の一本道以外のルートを設ける)

どれも、すぐに大きな予算をかけて始める必要はありません。まずは「自社が採りたい人物像は誰か」を経営者と現場で話し合うことから、採用改善は始まります。採りたい人物像は誰か」を経営者と現場で話し合うことから、採用改善は始まります。

採用の土台づくりから一緒に考えます

コクリエパートナーでは、地方の中小製造業を中心に、採用の設計から実行まで伴走型でご支援しています。

「何から手をつければいいかわからない」「求人票を見直したいけど、どう変えればいいか」——そんな段階からご相談いただけます。

まずは採用に関する情報や事例を定期的にお届けするメルマガにご登録ください。現場で実際に起きている採用の変化や、すぐに使えるノウハウを月2〜4回お届けしています。

👉 メルマガ「採用人事の処方箋」登録はこちら(無料)

初回のご相談も無料で承っています。お気軽にお問い合わせください。

ABOUT ME
採用人事コンサルタント 大岩貴文
求人広告の営業として10年間、中小企業の採用現場を見続けてきました。「採用の問題は、経営の問題」と確信し、中小企業診断士(経営コンサルタント唯一の国家資格)を取得。今は採用戦略・人材育成・経営改善を手がけるコンサルタントとして活動しています。「いい人が来ない」「採っても辞めてしまう」——そんなお悩み、ぜひご相談ください。経済産業省認定経営革新等支援機関 / 中小企業基盤整備機構経営アドバイザー