近年、企業が社員のスキルを活用し、さらなる成長を目指す「社内副業」が注目を集めています。社内副業は単なる人材活用の枠を超え、社員のキャリアアップや組織全体のイノベーションに繋がる可能性を秘めています。本記事では、経営者や採用担当者に向けて、社内副業のメリットや成功事例、導入の際に注意すべきポイントを詳しく解説します。事例として名古屋鉄道の取り組みも取り上げ、実践的なヒントをお届けします。
社内副業とは?
そのそも、社内副業とはなんなのでしょうか?
社内副業とは、社員が所属部署以外の業務やポジションに携わることを可能にする制度です。この仕組みは、社員の離職防止やモチベーション向上を図るだけでなく、スキルの再開発(リスキリング)を促す目的で導入されています。通常、所定労働時間の一部を他部署の業務に充てる形式が多く見られます。たとえば、KDDIやサイバーエージェント、パナソニックなどの大手企業がすでに導入しており、社外での副業が難しい業種や副業管理の課題に対応するため、こうした制度の需要が高まっています。
社内副業のメリット
そんな社内副業ですが、メリットがたくさんあります。実例を交えてお伝えしますね。
- 社内副業を始める利点
- キャリアパスの多様化:社員に新たなスキルを開拓する機会を提供します。
- 人材の定着:社内副業制度を通じて社員の満足度が高まり、離職率の低下につながります。
- 組織の連携:異なる視点や専門知識を持つ社員が集まることで、新しいアイデアが生まれやすくなります。
- イノベーションの促進:社内副業を通じて組織の横の連携が生まれ、イノベーションが促進されます。
- 業務効率化:社内業務の属人化を防ぎ、会社全体の業務効率化につながります。
- 名古屋鉄道の実例
- 名鉄は社員がグループ会社で副業できる制度を整備し、週の労働時間の2割を上限に子会社で働く環境を構築しています。この取り組みにより、副業手当を支給しながら、名鉄バスで事務職の採用担当として社員の能力を活用。社員の経験や知見を活かし、技術革新や新規事業の推進を図る仕組みを提供しています。
さらに、2023年度には希望制のグループ内異動を開始し、2025年度からは不動産やホテルといった事業ごとの異動を導入予定です。また、一度退職した社員を再雇用する「ウェルカムバック採用」を開始し、中途採用人数を増加させています。加えて、名鉄バスでは時短勤務のバス運転士制度を導入し、1日約4時間の勤務形態を可能にするなど、フレキシブルな働き方の実現にも取り組んでいます。
社内副業の実施における注意点
社内副業を成功させるために、以下のポイントに注意することが重要です:
- 業務のバランス:本業と副業の配分が偏ると、全体の業務効率が低下する可能性があります。事前に優先順位を整理し、無理のない計画を立てることが大切です。
- 相互理解を深める:所属部署や副業先の上司とのコミュニケーションをしっかり行い、期待値をすり合わせておく必要があります。
- 時間管理を徹底する:副業に費やす時間が過剰にならないよう、適切な管理体制を整えましょう。
- 適切な仕事内容の選定:副業として取り組む業務が、社員のスキルや興味に合ったものかを見極め、明確な成果目標を設定します。
- 公平な評価制度の整備:副業での成果が正当に評価されるような仕組みを導入することで、社員のモチベーション向上につながります。
社内副業を実現するためのステップ
社内副業を成功させるためには、事前の準備や適切な運用が欠かせません。以下に具体的なステップを示します。
社内資源の分析と創出可能性の検討
まず、社内でどのようなリソースを活用できるかを分析することが重要です。以下の観点で検討を進めると効果的です:
- 追加リソースの必要性:どの部署が追加リソースを求めているかを特定。
- スキルの活用可能性:社員が持つスキルや経験を、他部署でどのように活かせるかを評価。
- 新たな価値創出:副業として取り組むことで、どのような新たな価値が生まれるかを検討。
これにより、社内副業の導入に向けた具体的な方向性を明確化できます。
社内求人の集約と希望者の募集
次に、グループ会社や部署内での求人案件を集約し、社員に公開します。具体的なプロセスは以下の通りです:
- 各部署やグループ会社からの求人案件の収集。
- 社員が簡単に応募できる仕組み(オンラインプラットフォームや掲示板など)の整備。
- 募集条件や業務内容を明確にし、社員がスキルや興味に基づいて選択できる環境を提供。
名古屋鉄道の事例では、DX推進や店舗企画・開発といった専門的な求人案件を共有し、希望者を募る仕組みが構築されています。
適切な配属とサポート体制の整備
社員が副業にスムーズに取り組めるよう、適切な配属とサポートを提供することが重要です。具体的な対応は以下の通りです:
- フォローアップ体制:配属後の定期的な面談や進捗確認を実施。
- トレーニングプログラム:新しい業務に必要なスキルを習得する機会を提供。
- 課題解決の支援:業務中に直面する困難に迅速に対応するサポート体制の整備。
実施後の追跡と改善
社内副業の効果を最大化するためには、導入後の評価と改善が欠かせません。以下のプロセスを実行します:
- 定期的なレビュー:副業が本業や社員のパフォーマンスに与える影響を確認。
- データの収集と分析:副業を通じて得られた成果や課題を数値化し、次の施策に反映。
- 社員フィードバックの収集:実際に副業を経験した社員の意見を聞き、制度改善に役立てます。
特定の課題に対する活用事例
名古屋鉄道では、繁忙期や育児休暇取得者の穴埋めとして社内副業を活用しています。このような柔軟な運用により、企業全体の生産性向上に寄与しています。
まとめ:社内副業の将来性を考える
社内副業は、社員のスキルを広げるだけでなく、企業全体の成長を後押しする大切な取り組みです。この制度を取り入れることで、組織内で新しい価値を生み出し、生産性や競争力を高めることができます。
社内副業を取り入れることで、次のような将来が期待できます:
- 企業の成長エンジンになる:社員が副業を通じて得たスキルや経験を本業に活かすことで、会社全体の成長につながります。
- 社員と会社の相乗効果:名古屋鉄道の例のように、社員一人ひとりの成長が企業全体の発展とリンクする仕組みをつくることが重要です。
- 大規模プロジェクトへの柔軟な対応:たとえば、名古屋駅前の再開発プロジェクトのような場合、社内副業を活用して必要なスキルを持つ人材を適材適所に配置することで、効率的かつ効果的に対応できます。
これからの時代、社内副業はただの人材活用策ではなく、企業が成長戦略を描くうえで欠かせないツールになるでしょう。他社の成功事例を参考に、自社に適した方法で取り入れることで、企業も社員もより良い将来を築けるはずです。