新卒採用の話をしていると、最近よく出てくるのが「今の学生は安定志向が強い」という言葉です。
実際、学生の会社選びでは、やりがいや成長機会だけでなく、「安心して働けそうか」「生活の見通しが持てるか」といった視点が以前より重視されるようになっています。マイナビの2026年卒大学生就職意識調査では、企業選択のポイントとして「安定している会社」が51.9%で初めて5割を超え、7年連続で最多でした。「給料が良い会社」も4年連続で増加しています。
ただ、ここで考えたいのは、学生が言う「安定」が何を意味しているのかです。
大手企業であることや知名度が高いことだけを指しているわけではありません。給与、事業の継続性、育成環境、働き方、職場の雰囲気など、複数の要素が重なって「この会社なら安心して働けそう」と感じているケースが多いです。
そこで今回は、安定志向が強まる今、学生に伝えるべき会社情報とは何かを整理します。中小企業が採用広報や会社説明で何を見直したいかまで、実務に引きつけてお伝えします。
今の学生は会社選びで何を重視しているのか
結論からいうと、今の学生は、会社の魅力より先に「安心して働けるか」をかなり見ています。
マイナビの2026年卒大学生就職意識調査では、企業選択のポイントとして「安定している会社」が51.9%で最多でした。さらに、「給料が良い会社」は4年連続で増加しています。一方で、行きたくない会社としては「ノルマがきつそう」が38.2%で最も多く、「転勤が多い会社」も31.0%で5年連続増加でした。つまり、学生は会社の将来性や待遇だけでなく、働くうえでの負担感や生活への影響まで見ています。
また、就活の進め方そのものも変わっています。マイナビの2027年卒調査では、インターンシップ等のキャリア形成プログラム参加率は85.6%で高水準でした。学生はかなり早い段階から企業に触れ、比較しながら絞り込んでいます。つまり、企業側は「うちの魅力を語る」だけでなく、「安心して働ける理由をどう見せるか」を早い段階から考える必要があります。
学生が感じる“安定”とは何か
学生が感じる安定は、ひとつの要素ではありません。
給与、事業の継続性、働き方、育成環境、職場の雰囲気などが合わさって生まれるものです。
給与や待遇への安心感
まずわかりやすいのが、給与や待遇です。
「給料が良い会社」を重視する学生が増えているのは、初任給や物価高、生活コストへの意識が高まっていることとも関係しています。学生にとって給与は、単なる条件ではなく、「生活が成り立ちそうか」という安心材料でもあります。
事業の継続性や将来性
次に大きいのが、会社がこの先も続いていきそうかという感覚です。
これは上場企業かどうかだけではありません。何を強みにしている会社なのか、どんなお客様に支えられているのか、地域や業界でどんな役割を果たしているのか。こうした情報があると、学生は「この会社には仕事がありそうだ」と感じやすくなります。
働き方や職場環境への安心感
働き方も重要です。
学生は、休日数、残業、転勤、働く場所、休みの取りやすさなどをかなり見ています。「転勤が多い会社」が敬遠される傾向からも、将来の生活がイメージできるかどうかが会社選びに影響していることがわかります。
育成やサポート体制への安心感
新卒採用では、入社後にきちんと育ててもらえるかも大きな安心材料です。
未経験で入る以上、「最初からできる人」を求められていないか、「教えてもらえる環境があるか」は気になりやすいポイントです。ここが見えない会社は、不安が残りやすくなります。
なぜ学生の安定志向が強まっているのか
安定志向が強まっている背景には、経済環境の変化と就活の早期化があります。
まず、物価上昇や将来不安の影響は大きいです。
給与や生活コストへの関心が高まる中で、「働いたあとに無理なく生活できるか」は以前より現実的なテーマになっています。だからこそ、「給料が良い会社」が重視される割合も増えています。
次に、初任給引き上げや賃上げの話題が増えていることも影響しています。
学生はニュースや企業情報を通じて、企業ごとの差を以前より比較しやすくなっています。初任給を上げた企業が話題になれば、「給与は会社選びの判断材料になる」という意識も強まりやすいです。
さらに、就活が早期化していることで、学生は早い段階から多くの企業情報に触れています。インターンシップ等への参加率が高いのは、その表れです。接点が増えるほど、理念のきれいさだけではなく、「実際どうなのか」を見極めようとする傾向も強くなります。
中小企業が学生に伝えるべき会社情報とは
ここで大事なのは、中小企業でも“安定”は十分に伝えられるということです。
大企業と同じ条件をそろえることではなく、学生が安心して働けそうと思える情報を具体的に見せることが重要です。
会社の強みより、安心して働ける理由を伝える
会社の強みや差別化ポイントを伝えることは大切です。
ただ、それだけでは学生にとって遠い話になりやすいことがあります。そこで、強みをそのまま語るのではなく、「なぜ安心して働けるのか」に変換して伝える方が届きやすくなります。
たとえば、
- 長年取引があるお客様が多い
- 特定業界で必要とされる技術がある
- 地域で継続的に仕事がある
- 景気変動があっても一定の需要がある
こうした情報は、学生にとって「この会社は続いていきそう」という安心感につながります。
制度一覧より、実際の働き方を伝える
福利厚生や制度を一覧で並べるだけでは、学生には伝わりきらないことがあります。
それよりも、
- 実際に有給を取りやすいか
- 残業はどのくらいか
- 転勤はあるのか
- 未経験で入った人がどう育っているか
といった、働く実感に近い情報の方がわかりやすいです。
社員の様子や育成の流れを見せる
学生は「どんな人と働くのか」を気にしています。
社員インタビュー、仕事の1日、入社後の流れ、先輩の成長ストーリーなどは、安心材料としてかなり有効です。特に中小企業では、制度の量よりも人の顔が見えることの方が差別化になる場面も多いです。
採用広報で見直したいポイント
安定志向の学生に向けて採用広報を見直すなら、安心材料が具体的に伝わる構成にすることが大切です。
採用サイトや会社案内の見直し
採用サイトや会社案内では、理念や事業内容だけでなく、学生が知りたい不安解消情報が入っているかを見直したいところです。
たとえば、
- どんな人が働いているか
- 入社後にどう育つか
- どんな仕事から始まるか
- どんな人が向いているか
こうした情報があるだけで、かなり見え方が変わります。
インターンシップや仕事体験で伝える内容
インターンシップ等の参加率が高い今は、体験の中で何を伝えるかも重要です。
会社説明だけではなく、「どんな仕事で、どんな人がいて、どんな雰囲気なのか」が伝わる設計にした方が、学生は安心しやすくなります。
学校訪問や説明会での話し方
学校訪問や説明会でも、企業の言いたいことだけでなく、学生や先生が知りたい安心材料を意識した方が伝わりやすくなります。
「うちの会社はすごい」ではなく、
「こういう理由で安心して働きやすい」
「こういうサポートがある」
という話し方に変えるだけでも印象は変わります。
まとめ
今の学生が重視する“安定”は、知名度や会社規模だけではありません。
給与、事業の継続性、働き方、育成環境、職場の雰囲気など、安心して働けると感じられる情報の積み重ねです。マイナビの調査でも、「安定している会社」は企業選択のポイントとして51.9%で最多、「給料が良い会社」も増加していました。
だからこそ、企業は理念や抽象的な魅力だけでなく、学生が安心材料として受け取れる情報を具体的に伝える必要があります。
中小企業でも、何をもって安定と感じてもらうかを整理して見せることで、伝わり方は変わってきます。
採用活動は、試行錯誤しながら進めている会社も多いと思います。今回の内容が、少しでも整理の参考になれば嬉しいです。
FAQ
学生が言う「安定している会社」とは何ですか?
会社規模や知名度だけではなく、給与、事業の継続性、働き方、育成環境、職場の雰囲気などを含めて「安心して働けそう」と感じる状態を指していることが多いです。
中小企業でも安定感を伝えることはできますか?
できます。長く続く取引先があること、地域での役割、育成体制、働き方の実態などを具体的に伝えることで、安心材料は十分に示せます。
学生に安心してもらうには何を伝えればよいですか?
給与や休日数だけでなく、入社後の育成、仕事の始め方、職場の雰囲気、どんな人が働いているかなど、実際に働くイメージが持てる情報を伝えることが大切です。
採用広報で給与以外に見せたい情報は何ですか?
事業の安定性、働き方、育成環境、社員の人柄、職場の雰囲気などです。制度一覧より、実際の働き方が伝わる情報の方が安心材料になりやすいです。

