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副業詐欺の最新手口とは?企業が知っておくべきリスクと社員を守る対策

副業ブームの裏で、社員が詐欺被害に遭うケースが増えています。「人生相談に乗るだけで報酬がもらえる」といった甘い誘いに乗ってしまい、被害額は1人あたり平均111万円にも及ぶことも。

採用コンサルタント:大岩

中小企業でも副業にチャレンジする人は増えています。しかし、副業をきっかけに思わぬトラブルになることもあります。特に副業関連の詐欺事件も増えているため、企業としてしっかり対策を講じる必要があります。

企業として、社員をどう守り、どんな制度を整えるべきか。採用コンサルタントの視点から解説します。

急増する副業詐欺の実態|SNS・チャット型の巧妙な手口に注意

副業詐欺は、SNS広告やDMから始まるケースが多く、内容は「相談に乗るだけ」「いいねを押すだけ」など一見簡単そうなものばかりです。中にはチャット形式で“相談者役”とやり取りをするという形式で、徐々に個人情報や手数料を名目にお金をだまし取られるケースも。

警視庁の発表によると、2023〜2024年に被害者は約1万人、被害総額は53億円以上に上りました。特に主婦や副業初心者がターゲットになりやすく、被害額の平均は111万円と高額です。企業にとっても他人事ではありません。

副業詐欺が企業にもたらす3つのリスク|放置すると会社の信用も危うい

副業詐欺は個人の問題に見えがちですが、実際には企業にとっても無視できないリスクが存在します。特に副業を容認している企業においては、制度整備や対応方針が不十分であると、社内外からの信用を損なう事態になりかねません。以下の3つの視点から、企業が受けるリスクを明確にしておきましょう。

1. 業務への影響
詐欺被害に遭った社員は、精神的ショックや経済的な損失から、仕事に集中できなくなる場合があります。遅刻・欠勤の増加、業務のパフォーマンス低下といった直接的な影響に加え、周囲の社員への心理的影響も無視できません。

2. 企業イメージの悪化
副業トラブルがSNSや口コミで拡散された場合、「社員管理が甘い企業」としてレッテルを貼られる可能性があります。また、採用時にも「この会社は副業に寛容だけど、その後のサポートがない」という印象を持たれれば、応募者の離脱要因にもなり得ます。

3. 対応の混乱と法務リスク
詐欺トラブルが起きた際に、就業規則やマニュアルが整備されていないと、部署ごとに対応が異なり、被害拡大や社内混乱につながることがあります。また、相談体制が機能していない場合は、企業としての対応責任や安全配慮義務を問われる可能性もあります。

これらのリスクを防ぐためにも、企業は副業制度と合わせて、万が一の際の対応フローや社内体制の整備を進める必要があります。

副業制度を見直すべき理由|企業が取り組むべき3つの安全対策

副業を許可している企業は2023年時点で約60.9%と過半数を超えています。一方で、社員が副業先で問題を起こした場合、企業の対応力が試されます。以下のような対策が重要です。

1. 就業規則に副業の届出ルールを明記する どんな副業でも事前申請・承認制とすることで、リスクの高い副業をあらかじめ排除できます。

2. 副業内容のリスクチェック 業種、業務内容、契約形態(業務委託かアルバイトか)、報酬体系などをチェックし、明らかに不自然な場合は差し戻す運用にしましょう。

3. 社内研修や情報提供 「副業詐欺に遭わないために」というテーマで定期的な社内周知や教育を行うことで、被害予防につながります。

なぜ副業詐欺が広がるのか?|背景にある時代の変化と人手不足

副業詐欺が増えている背景には、社会全体の働き方の変化があります。

  • スキマ時間を有効に使いたい
  • 一つの会社に依存せず、収入源を増やしたい
  • 自己実現やキャリアアップを求めたい
  • 副業OKの企業が増え、心理的ハードルが下がっている
  • SNSやインフルエンサーの影響で「楽に稼げる副業」の情報が氾濫している

こうした環境の変化により、特に副業に不慣れな主婦層や若年層が詐欺のターゲットにされやすくなっています。副業という言葉に「前向きなイメージ」や「夢」が先行しがちですが、そこに詐欺グループが巧みに入り込んでいるのです。

また、企業側の対応が追いついていないケースも多く、「副業解禁はしたものの、詳細な制度や相談窓口がない」状態では、社員が自己判断で危険な副業に巻き込まれるリスクが高まります。

企業が副業を認めるのであれば、こうした背景を踏まえた上で、リスクマネジメントの整備も並行して進める必要があります。

副業詐欺から社員を守る!企業ができる5つの具体策

  1. 副業ガイドラインを策定・公開する
    副業を容認するなら、どのような副業がOKで、どのような内容はNGなのかを明文化しましょう。たとえば「反社会的勢力と関係のある副業」「マルチ商法的な構造があるもの」は禁止対象にするなど、判断基準を明示することで、社員も安心して判断できます。
  2. 副業相談窓口を設ける
    社員が不安に思ったときにすぐ相談できる窓口があることで、トラブルの早期発見・防止につながります。人事部や総務部に専門の問い合わせ先をつくるのが理想です。
  3. 外部の副業紹介サービスの利用基準を設定する
    信頼できる副業サービスを企業側でリストアップし、利用を推奨するのも一つの手です。詐欺的なサービスを社員が自力で見抜くのは難しいため、企業が先回りして調査・提案することが重要です。
  4. 定期的な研修や注意喚起メールを実施する
    年に1〜2回程度、実際に起きた副業詐欺の事例を交えた研修や、注意喚起の社内メールを送るとよいでしょう。危機感を持ってもらうだけでも十分な抑止力になります。
  5. 採用時点で副業に対する方針を明示する
    採用面接や内定通知のタイミングで、副業に関する会社の考え方やルールを丁寧に伝えることで、入社後のトラブルを防げます。副業を認めていること自体が応募者にとって魅力になる場合もあります。

これらは、社員の安心感を高めるだけでなく、企業ブランディングにも寄与します。

まとめ|副業詐欺は他人事ではない。企業の信頼を守る副業管理を

副業の自由が拡大する時代において、社員の自由と企業の信頼をどう両立するかが問われています。「副業OK」にするだけでなく、「安全な副業環境づくり」も企業の責任です。特に、社員が副業詐欺に巻き込まれた場合の影響は、本人だけでなく職場環境全体に及ぶ可能性があります。

副業制度の整備は、採用力の強化や従業員満足度の向上にも直結します。副業を単なる「自由な働き方」として捉えるのではなく、企業全体で伴走し、リスクとメリットの両面に目を向ける姿勢が求められます。

採用広報の場でも、副業制度の明確な方針や、社員の安全を守る取り組みを打ち出すことで、応募者に安心感を与え、自社の魅力を伝える有効な手段となるでしょう。

よくある質問|副業詐欺と企業対応に関するQ&A

Q. 社員が副業詐欺に遭った場合、企業は責任を問われますか?

A. 法的責任は基本的に個人にありますが、企業として相談体制が整っていなかった場合、社内外から批判を受ける可能性があります。早期対応と再発防止策が重要です。

Q. 副業は禁止にしたほうが安全ですか?

A. 一律禁止は人材確保や従業員満足度の観点から現実的ではありません。むしろリスクを可視化し、企業としてガイドラインを整備することで、安全な副業環境をつくる方が効果的です。

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ABOUT ME
採用人事コンサルタント 大岩貴文
大手メディアの求人広告営業を10年経験した後、経営コンサルタント唯一の国家資格である中小企業診断士の資格を取得。採用人事に強いコンサルタントとして、採用支援、研修講師、経営改善などを中心に活動中。経済産業省認定経営革新等支援機関、福岡県商工会連合会エキスパートバンク登録専門家。

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