就職活動において定番となっている「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」ですが、これは学生側のアピールポイントであると同時に、企業側が“将来の活躍人材”を見極める重要な手がかりでもあります。
新卒採用は中途採用と違い、ポテンシャル重視の採用です。自社との相性や今後の成長を推しはかるには、過去の体験談を聞くのが鉄板ですね。
とはいえ、学生側の模範解答やテンプレートも多く、本質的な見極めが難しくなっているのも事実です。本記事では、経営者や採用担当者の方に向けて、ガクチカの本質と、選考でどのように活用すべきかを採用の専門家の視点から解説します。
ガクチカとは?企業が学生の人物像を見極めるために聞く理由

「ガクチカ」とは、応募者が学生時代に取り組んだ経験を通じて、その人の行動の傾向や価値観を探るための質問です。企業にとっては、スキルや知識以上に、「どのように課題に向き合い、乗り越えてきたか」という行動の過程に注目することで、将来の活躍度を測る判断材料となります。
応募者からよく挙がるテーマには、サークル活動、アルバイト、ゼミ、ボランティアなどがありますが、評価すべきポイントは活動内容そのものではありません。「なぜその活動を選び、どのような工夫や苦労を経て成果を得たか」というプロセスが重要です。
ガクチカで見抜くべき能力とは?企業が重視する3つの評価軸

企業がガクチカを通じて見極めたいのは、単なる努力の有無ではなく、「入社後に再現可能な行動特性」です。つまり、学生時代の行動や思考のクセが、仕事においても同様のパフォーマンスを発揮できるかという点を評価しています。
以下の3つの観点は、特に注視すべき評価軸です。
- 再現性:成果や成功体験が、偶然ではなく再現性のある行動に基づいているか。たとえば「情報収集して仮説を立てて行動する」「目標を定めてPDCAを回す」など、社会人になっても通用する行動習慣を持っているかを確認します。
- 行動力:待ちの姿勢ではなく、自ら課題を見つけて取り組む姿勢。与えられた役割にとどまらず、自分なりの工夫やリーダーシップを発揮した経験があれば、評価のポイントになります。
- レジリエンス:失敗や逆境に直面したときの反応と回復力。たとえば、部活動でレギュラー落ちしたが練習を工夫して復活した、アルバイト先でトラブル対応に奔走したなど、粘り強くやり抜く力があるかどうかを見ます。
この3点はいずれも、職場での成果や成長に直結する要素です。ガクチカの中からこれらの要素を丁寧に引き出すことで、将来活躍する可能性の高い人材を見極めることができます。
挫折経験を聞く理由とは?レジリエンス重視の採用視点

近年、ガクチカに加えて「挫折経験」や「困難を乗り越えた経験」に注目する企業が増えています。これは、どの仕事でも想定外の出来事や失敗は避けられず、それにどう向き合うかで人材の“忍耐力”が測れるからです。
特に中小企業では、変化や予期せぬ課題への対応力が求められる場面も多く、単に真面目に頑張れるだけでなく、粘り強くやり抜けるかどうかが問われます。その意味でも、乗り越え方に焦点を当てる面接は、長く働ける人材かを見極めるうえで有効です。
挫折経験を通して見えるのは、単なる結果ではなく「そのとき何を考え、どんな行動をとったか」「周囲にどんな働きかけをしたか」「どのように感情をコントロールしたか」など、極めて実務的な“人となり”です。たとえば、売上目標を達成できずチームが落ち込んでいたときに、自分の役割を再定義して行動を起こした、といったエピソードにはリーダーシップや内省力が表れます。
また、挫折を過度に美談化せず、冷静に振り返れているかどうかも評価ポイントです。自分の課題を正しく認識できる人は、今後の成長角度も高い傾向にあります。したがって、面接では「その経験から何を学び、今後にどう活かしたいか?」という問いを重ねることで、応募者の本質に迫ることができます。
ガクチカでテンプレ回答を見抜くための面接の工夫

最近では、学生向けにネット上に「ガクチカの正解例」が溢れており、表面的に整った受け答えをする応募者も増えています。しかし、テンプレート通りの話では、企業の風土に合うか、再現性があるかなど本質的な判断はできません。
テンプレ回答には以下のような特徴があります:
- 過度に“きれいに整えられている”
- 踏み込んだ質問に対して答えが浅くなる
- 具体的な行動や背景の説明が乏しい
- 感情や葛藤の描写が少ない
こうした回答に対しては、応募者の体験を具体化させる質問が有効です。たとえば、
- 「そのとき、具体的に誰にどんな働きかけをしましたか?」
- 「なぜその選択をしたのか、他に選択肢はありましたか?」
- 「周囲からの反応や、自分の感情の変化を教えてください」 といったように、“再現できる行動かどうか”“他者とどう関わったか”という視点で問いかけると、テンプレでは応じきれない部分が浮き彫りになります。
また、応募者がエピソードに対して自ら内省しているか(たとえば、「あのときはもっと〇〇すればよかったと感じています」など)を聞き取ることで、思考の深さや素直さ、成長意欲も判断できます。テンプレ回答を見抜くには、単なるQ&A形式ではなく、対話を通じて本質に迫る姿勢が求められます。
面接で使える!ガクチカを深掘りする質問テンプレート

ここまで解説してきた通り、ガクチカでは行動力や再現性、レジリエンスといった資質を見抜くことが重要です。ただし、それらは表面的なエピソードだけでは判断が難しく、面接での「質問の質」がカギを握ります。応募者が用意してきた答えをなぞるだけでなく、その裏側にある考えや行動、感情の流れを引き出すための問いかけが必要です。
そこで、実際の面接現場で役立つ深掘りの質問例を以下に紹介します。
- 「その取り組みに着手した背景やきっかけは何でしたか?」
- 「最も難しかったことと、その時の対応を教えてください」
- 「自分なりに工夫した点はありますか?」
- 「その経験が今後どう活かせると考えていますか?」
これらの問いかけにより、応募者の価値観や仕事への向き合い方を具体的に確認することができます。
まとめ:ガクチカで応募者の将来性をどう見極めるか
ガクチカは、単なる学生時代の思い出話ではなく、「この人は入社後にどのように行動し、どんな強みを発揮するのか」を予測するための重要な手段です。
特に中小企業やベンチャー企業など、即戦力や自律的に動ける人材を求める職場では、形式的な学歴やスキル以上に、「その人の物事への向き合い方」や「困難を乗り越える力」が問われます。だからこそ、ガクチカに表れる行動特性や思考パターンを深掘りし、再現性・行動力・レジリエンスといった力を見極めることが重要です。
また、採用面接ではテンプレート回答に終始するのではなく、対話の中で応募者の価値観や内省力を引き出すよう意識することで、相互理解が深まり、ミスマッチの少ない採用が実現できます。ガクチカはあくまで“入口”に過ぎませんが、その入口をどう活かすかで、採用の質が大きく変わります。
「どんな人が自社にフィットし、長く活躍できそうか?」を考えるうえで、ガクチカは非常に有効なヒントを与えてくれる問いです。ぜひ、質問の設計と深掘りの工夫を通じて、応募者の“将来性”を見抜いていきましょう。
よくある質問(Q&A)
Q. ガクチカは面接のどのタイミングで聞くべきですか?
A. 一般的には自己紹介や志望動機の後、アイスブレイクを終えたタイミングで聞くのが自然です。深掘りする質問を重ねるため、時間配分も意識しましょう。
Q. 成果が小さいエピソードでも評価の対象になりますか?
A. はい、成果の大小は問題ではありません。大切なのは、そこに至るまでのプロセスや本人の工夫、思考、行動に注目することです。
Q. 挫折経験を聞くときに注意すべきポイントは?
A. 過去の失敗を責めるような聞き方は避けましょう。「その経験から何を学んだか」「どう乗り越えたか」という成長の視点で尋ねることが重要です。ガクチカは、単なる学生時代の思い出話ではなく、「この人は入社後にどのように行動し、どんな強みを発揮するのか」を予測するための重要な手段です。
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